報徳学園
「ホートク、大丈夫!」
2トライを先行された前半11分、ベンチから大きな声を届けたのは、泉光太郎ヘッドコーチ。
ハドルを組み、全員で呼吸を合わせ、落ち着きを取り戻す。
報徳が報徳であるための60分は、14点のビハインドになってからが強かった。
何度も繰り返した長いフェーズ。慌てることなくFWを当て、機を見て展開する。築き上げた今年の報徳スタイルが、いかんなく発揮された。
反撃の狼煙をあげたのは、前半17分。スクラムからFWを当て、10番・伊藤利江人選手が縦に切り込み、最後は8番・石橋チューカ選手が押し込んだ。
手を挙げ喜ぶ2番・山下秦選手。石橋選手は体を起こすと、喜びを表すことなく東海大大阪仰星15番・増山将選手が落としたヘッドキャップを拾い上げ、手渡した。
いくつも作った、会場がどよめく瞬間。
一つはスクラム。
マイボール、相手ボールともに最大値である1.5mを何度も押し切った。
巧みなスキルも光る。
8番・石橋選手の体の使い方に、SO伊藤選手のパスを放るタイミングと角度。
自陣深くまで攻め込まれても、3番・木谷光選手と11番・海老澤琥珀選手のバイスキャプテンコンビで仕留めた。
15番・竹之下仁吾選手の安定したハイボールキャッチは、ゲームの組み立てに一役買う。
9番・村田大和選手のキャプテンシーも、チームを同じ方向に向かせた。
前半ロスタイムに同点となるトライを取り切ると、流れに乗った。
後半7分、13分にもトライを重ね、迎えた後半26分。
自陣5mでの相手ボールスクラムから飛び出してきたエイタンを仕留めたSH村田選手のタックルを起点に、11番・海老澤選手がインターセプト。
およそ95mの独走トライで、試合は決まった。
何度も体を当て続けた献身的なFWの活躍なければ成しえなかった、ベスト4進出。
「バックスを気持ちよく走らせるのが僕たちFWの役割」と話す7番・植浦慎仁キャプテンは、来たる準決勝・天理戦でも「接点で勝って、バックスを気持ちよく走らせたい」と意気込んだ。
報徳学園史上初めての花園決勝進出を懸けた準決勝は、1月5日 12時45分にキックオフを迎える。