昌平・本庄第一・深谷・川越東。埼玉ベスト4出揃う。|令和4年度 埼玉県高等学校ラグビーフットボール新人大会・準々決勝

第3試合:浦和×深谷

浦和 17 – 29 深谷

浦和:紺ジャージ、深谷:青水色ジャージ
昨季の花園予選で激闘を繰り広げた両校の再戦。試合は、浦和の先制トライでスタートした。
だが深谷もすぐにトライを奪い返す。バックスが自在に走り回って、前半のうちに3連続トライ。主導権を握った。
後半終盤には浦和がFW戦で2本続けてトライを取ったが、万事休す。深谷が準決勝進出を決めた。
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浦和

プラン通りの先制トライだった。

思い描いていたのは、3本2本。3本のトライを取って、得意のディフェンスで相手を2本以内に抑えるゲームプランだった。

だが、予想以上に深谷のバックス陣に翻弄される。

「組み合わせが決まった時から、深谷さんが外に回してきた時の対策をしてきました。それでもバックスにやられてしまった。『こんなはずじゃなかった』という気持ちが、どこかに生まれたように思います。」

そう話すは浦和の新キャプテン、スクラムハーフの原田嗣海(つぐみ)選手。前半、逆に3つのトライを与えてしまう。

「アタックのキーマンである12番・飯塚選手さえ止めれば、思った通りのディフェンスができると思っていたんですけど。そこを上回られた、マークが甘かったんだと思います。」

山本義明監督も言った。「取られ過ぎです。」

浦和のディフェンスができれば、例え何枚余られようが、詰め切れば止まるはず。それだけディフェンスに自信を積み重ねていた。だが「怯んでしまったのか、詰め切れなかった」と悔やしさを隠さない。


5歳の時にラグビーを始めた原田キャプテン。浦和ラグビースクール出身

次第に選手たちにも疲労の色が浮かぶと、次々と交代のカードを切った。

足を攣る選手も多かった。

「前半、思っていたよりもスコアをされてしまった。途中で気持ちが切れかけてしまったのかもしれない」と、原田キャプテンは総力戦になった要因を説く。

今季掲げたスローガンは『執念』。

「昨年のように、能力のある選手が集まっているわけではありません。細かいボールへの反応、一つひとつのプレーにこだわることを目指して『執念』としました。」

その執念が実ったのは、後半も深い時間帯。FW戦で2つのトライを押し込んだ。

「執念を見せられたと思います。」

次に繋がるトライで締め括ったこと。執念で勝ち取った収穫だった。

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深谷

試合開始早々、先制パンチをくらった。

ともすれば崩れてもおかしくない展開を救ったのは、エースだった。

12番・飯塚祐真選手のランからゴール前でペナルティを獲得すると、FW戦から3番・橋本皓輝選手が押し込みまずは逆転。

キックパスに追いついた15番・須永天万選手が左サイドを駆け抜ければ2本目のトライを奪い、そのままの勢いで細かくボールを繋ぎきった最後は13番・原田壮真選手のラインブレイクから大外の14番・明戸誠和選手とのコンビネーションで、最後は13番・原田選手が走り切った。

慌てることなく、深谷らしいボールの動くラグビーを遂行することに成功した。

「最少失点で切り替えられたことは良かったかなと思います。」

そう話すは、今季のキャプテンを務める馬場健太選手。No.8としてチームを前に押し上げる役目を担った。

今年の深谷高校はとにかく明るい。

良く笑い、良く拳をかかげ、楽しそうな雰囲気を全員が醸し出す。

「3番のハシコウ(橋本皓輝選手、1年生)が試合中もめっちゃ声を出してくれるし、今年は本当に上下関係がないんです。キャプテンの自分も1年生からいじられます(笑)そういう意味で、一体感があるのかなと思います。(馬場キャプテン)」

明るく、楽しく、元気よく。ラグビーが好きなことを、体いっぱいで表現する。

「FWがキーワードとしている『モーメンタム(勢い)』を、チーム全体でも出せている」と話す。


同点のトライを決めた直後、右手でガッツポーズをする3番・橋本選手。例えバックスの独走トライであっても、必ずインゴールまで走って駆け寄った

不安材料と言えば、部員数が少ないこと。

2年生は僅か9人。新1年生が入学するまでは、昨今の少子化の影響を受けてか否か、深谷高校でもメンバー表25人揃うか揃わないかという状況が続く。

そこで頼りになるのが、既に引退した3年生たちだ。後輩に胸を貸しに、毎日のようにやってきてくれるのだ。

「ADの日(実戦形式の練習の日)は本当に助かります。今日は10人行けます、今日は9人です、と毎回連絡をくれて。後輩のために、嫌な顔せず手を差し伸べてくれる。たまに『今日は5人です』と言われると、おい少ないじゃないか!もっと来させろ、って言ってしまうんですけどね(笑)」と山田久郎監督は笑うが、曰く「プレッシャーなく、伸び伸びとプレーできるようになるから3年生たちはめちゃくちゃ上手い」のだそう。

深谷高校に根付く、『後輩のために』という文化。

山田監督は言う。

「(前キャプテンの野口)彰太が、引退するときに『僕たちは後輩たちに何も残せなかった』って言ったんです。でも、彼らの1年間がなかったらこの新人戦で北部地区でのシードを手にすることはできなかった。彼らが遺してくれた、後輩たちへの何よりもの財産です。」

スローガンは例年通り『Keep Changing』。加えて今年は、アタックでのテーマを『Look Forward』と掲げた。

前を向き続けること。それは決して試合中に前を見ることだけでなく、1試合1試合を楽しむ、という意味合いも込められている。

1年次から試合に出続けているエース・飯塚祐真選手は、今季バイスキャプテンとなった。対戦相手から執拗なマークを受けるが、それも「自分のことを見てくれれば、その分他の仲間が活きる」とポジティブに捉える。

「これからどんどん成長して、目標である『花園ベスト32』を達成できるように日々の練習を一つ一つ大事にしていきたい」と最上級生としての覚悟をのぞかせる。

馬場キャプテンもまた、自らに矢印を向けた。「自分の課題はエナジー。試合毎に目標とするキャプテン像に近付けているとは思うのですが、まだ成長の余地はあります。」

自分が成長すれば、このチームは一気に成長する。だからまずは、自分が成長したい。

深谷高校のキャプテンとして、誓いを立てる。

次戦の相手は、川越東。昨年出場権を獲得しながらも大会がなくなってしまった関東新人大会へ、今年こそ出場するために。負けられない一戦を迎える。

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