素晴らしい勝利だった。
まぐれでも、ミラクルでもなく、実力でU19アイルランド代表に勝ち切った。
1,456日の時を越え辿り着いたダブリンの地。
コロナ禍の影響を真正面から受けた高校日本代表活動は、ようやく、4年ぶりに海外遠征を叶えた。
今年が48期。奇しくも今期の団長を務める久木元孝行氏は、第1期の高校日本代表メンバーだったという。
試合は、序盤からディフェンスが光った。
合宿から何度も練習を繰り返した、一歩目の出足とその速度。『バクハツ』を体現するスピードは身につき、アイルランドのハンドリングエラーを誘うまでに成熟していた。
見れば見るほどに連携のとれたディフェンスで、タックルにジャッカルにと入るシーンが短時間で繰り返される。
このチームの特徴は、リーダーがたくさんいることだろう。
少しエキサイトした選手を見つけると、声を掛け、レフリーとのバランス役を買って出たのは國學院久我山高校で主将を務めた清水健伸選手。
相手のゴールラインドロップアウトがダイレクトタッチになると、すかさず5mラインを指さしたのは長崎北陽台高校でキャプテンだった白丸智乃祐選手であった。
ラグビーIQの高さ、そして冷静な立ち振る舞いを、各々の役割として当たり前に遂行する。
最大の驚きは、ハーフタイムのワンシーン。
選手・スタッフ全員の表情が、優しく穏やかだったことだ。
落ち着き払った表情で体をほぐす選手たちの姿は、見る者に35分後の勝利を確信させた。
グラウンドに戻る直前には、このチームの定番となったエナジーコールでもう一度気持ちを高める。
リードするは青栁潤之介選手。彼ほどのスキルフルな選手がこれほどまでに明るいことも、スペシャルな才能であろう。
試合にフル出場した選手。
スタートを任された選手。
最後のフィニッシュを託された選手。
ベンチから声を出し続けた選手。
それぞれの役割が嚙み合った時、ダブリンの地で一つ目の美しい桜の花を咲かせた。