「日本のチームで世界一に挑戦できるのは僕たちだけ」決勝戦は、NZ王者ハミルトンvs東福岡に。前年度の両国王者対決が実現|サニックスワールドラグビーユース交流大会2023

準決勝第2試合 佐賀工業×東福岡

佐賀工業:白紺赤ジャージ、東福岡:モスグリーンジャージ
佐賀工業 14 – 21 東福岡

前回の花園準々決勝で激闘を演じた、佐賀工業 対 東福岡の一戦は、ポイントリーダーが3度入れ替わる熱戦となった。

先制は佐賀工業。

ゴール前で得たペナルティからPGを選択すると、落ち着いて沈めたのは9番・井上達木選手。

前半7分、そしてその10分後の前半17分にもペナルティでPGを選択し、まずは6点のリードを得る。

「キックで少しずつ点差を離していくことが今日のゲームプランでした」と話すは佐賀工業13番・大和哲将キャプテン。

準備どおりを遂行した。

粘り強く守っていた佐賀工業だったが、前半終了間際、東福岡がついに風穴を開ける。

この日2度目となる左サイドで裏へのロングキックを蹴り込むと、インゴールで追いついたのは15番・隅田誠太郎選手。東福岡に待望のトライをもたらした。

難しい位置からのコンバージョンゴールも10番・井上晴生選手が成功させれば、7点を獲得。

6-7、東福岡が1点のリードを得て前半を折り返した。

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後半最初のスコアは、開始僅か2分。

スクラムから左に展開した佐賀工業、左端で11番・北村捷真選手が最初のチャンスをものにした。

チームにとってはこれが最初のトライ。ただしここはコンバージョンゴールが外れ、5点の追加に留まる。11-7、再び佐賀工業がリードを得た。

するとその10分後にも戦略通りPGを沈め、14点目を獲得。14-7と7点差をつけた。

徐々に開くスコア。

しかしそこで焦らないのが、東福岡だった。

自分たちのディフェンスを信じて、まずはボールを奪い返す。

相手ボールラインアウトの時には「グリーンウォール」の声が響き、この試合テーマとしていた『前に出る』を体現した。

チャンスを得たのは後半16分。

敵陣5mでのスクラムから、最後はNo.8高比良恭介キャプテンが押し込む。

この日、試合序盤から力強いボールキャリーをいくつも見せていたキャプテンが仕留めると、東福岡の選手たちは一様に喜びを見せた。

14-14、同点。残り時間、10分。

最後に取り切ったのは、東福岡だった。

一度は佐賀工業がゴール目前まで攻め込んだが、東福岡がターンオーバーするとすぐにバックスへ展開。

一気に敵陣深くへ陣地を広げると、最後はゴール前でのラックからボールを持ちだした9番・利守晴選手がラックサイドを突き、トライを決めた。

14-21。

東福岡が2度の逆転の末、決勝への進出権を獲得した。

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2試合続けての逆転勝ちとなった東福岡。

藤田雄一郎監督は言う。

「力がなければ、リードされた後にズルズルとセーフティリードまで持っていかれてしまう。その流れを断ち切ったことが大きな自信になると思います。」

苦しみながら成長する、その過程を前向きに捉える。

次はいよいよ、最大のターゲットとする決勝の舞台。相手は「めちゃめちゃ強いよ」と話す、NZ王者・ハミルトンだ。

「めちゃめちゃ強い相手だからこそ、60分間やりきりたいと思います。」

楽しみな60分間が始まる。


試合後、ハミルトンのナイジェル・ホサムHCが挨拶に来ると「ようやくハミルトンまでたどり着きました」と握手を交わした藤田監督。決勝の舞台では初対戦となる

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決勝トライをあげたのは、東福岡のスクラムハーフ・利守晴選手。

ゴール前ラックからボールを持ちだし、トライを決めた。

「本当はパスを放ろうと思っていたんです。そしたら相手がタックルに来たので放れなくなってしまい、どうしようと前を見たら空いていたので、飛び込みました。」

狙ったトライではなかったが、オプションBにその場で変更できる判断力と視野の広さは、随一だった。

利守選手にとって初めてのグリーン(東福岡のファーストジャージのこと)は、ここグローバルアリーナだった。昨年のサニックスワールドラグビーユース交流大会で初めて公式戦に出場すると、スクラムからショートサイドに持ち出し初トライをあげる。

「中学生の頃は『自分が自分が』という選手でした。自らトライすることも多かったのですが、東福岡に来てからは捌くことを意識してチャレンジすることはあまりなかった。でもあの時は、空いた!と思って自分で行きました。」

その時背負っていた背番号は、21番。

それが1年後には、9番へと変わっていた。

利守選手がラグビーを始めたのは小学生の頃。草ヶ江ヤングラガーズで楕円球を持つようになると、小学4年生からハーフ職に。時折スタンドオフも担うが、基本はスクラムハーフ一筋である。

目標とする選手は、2代上の楢本幹志朗選手(現・筑波大学2年)。

近所に住む楢本選手とは幼馴染であり、ラグビーを始めたきっかけも楢本選手が誘ってくれたから、なのだという。

「勉強にもラグビーにも通じているのが楢本兄弟。僕はどちらかというと1つのことに集中したいタイプなので、尊敬しています。」

小さい頃は近くの公園で毎日一緒にラグビーをしていたという、楢本選手と利守選手。試合中の落ち着いた立ち振る舞いと、視野の広いコミュニケーションは、2人の共通点でもある。


試合前も試合中も、輪の中心で声を発する利守選手。緊張している選手が多いため、それぞれの選手に「お前のここが一番強いぞ」と強みを伝え、自信を与える

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今大会中、よく目にする光景がある。

まだ小学生ぐらいの男の子たちと談笑する、東福岡の選手たちの姿だ。

利守選手は言う。

「僕も小学生の頃は毎年、毎日ここに通っていました。箸本龍雅くんや丸山凛太朗くんの代が一番好きで、毎日ここに来てヒガシの選手たちに遊んでもらって、大きくなってきたんです。」

この日、東福岡ベンチの後ろには小さい子どもたちが陣取り、目を輝かせながら試合を見守っていた。「彼らが将来は東福岡に来てくれたら」と、かつての自分と重ね合わせる。

「だから次は僕たちが強いヒガシを見せて、世界一になって、憧れられる存在になりたいと思います。」

強いヒガシを見せるために、残す試合はファイナルあと一つ。

「いま、日本のチームで世界一に挑戦できるのは僕たちだけです。ワールドユースは地元・福岡で開催される唯一の大会ですし、第1回大会から参加しているのが東福岡。だから世界一を最初に取る日本のチームは東福岡でなければならない、と思っています。」

チームを優勝に導くために、東福岡の9番として。

「最後まで声を出し続けます。そして日本チームの代表として、世界一を獲りに行きます。」

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東福岡 藤田雄一郎監督 コメント

今日は勝ち切ること、それだけでした。この大会で東福岡が決勝に上がることが、福岡の方々に対しての責任だと思っています。

佐賀工業に勝利したことよりも、決勝に行ける、ということに対して一安心しています。

東福岡 高比良恭介キャプテン コメント

まずは勝てて本当に良かったです。

明日は試合に向けたミーティングに準備とやることはたくさんありますが、その中でも体をしっかりと休めて、自分たちのために時間を使っていきたいなと思います。

ここまで来たら、あとは世界一を獲るだけ。決勝戦では全員で一致団結して、戦っていきます。

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佐賀工業 大和哲将キャプテン

「勝つために対策を立ててきたので、めちゃくちゃ悔しいです」と言葉を紡いだ大和キャプテン。

日頃の練習は、1日4時間。フルでみっちりグラウンド練習を行うがゆえ、他校の選手たちよりもひと際黒く焼けた肌が目立った。

「6月には全九州高校大会があるので、それまでに東福岡と一度戦えたことが糧になります。この一戦を踏み台として、6月にはしっかりと勝ちたいです。」

試合後には、涙を流しながら会場を後にする選手もいた。

日頃は練習に勤しむ佐賀工業も、ここは交流大会。海外勢との初めての交流を楽しんでいる。

キャプテンが明かす ”コミュ力おばけ” は「2番の柴田流良くんと8番の中川内優太くん」。英語は話せないが、ジェスチャーで乗り切る明るさを兼ね備えた選手たちだ。

また休養日だった2日午後には、全チームが体育館に集まり交流会を実施。各チーム3分程度の出し物を用意し、親交を深めた。

佐賀工業が披露したPPAPも「結構盛り上がりました」と笑顔を見せた。


会場が一番盛り上がったのは、韓国のソウル ナショナル ユニヴァーシティ ハイスクールがパフォーマンスした『カンナム・スタイル』だそう

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