東福岡がハーフタイムに組んだ円陣。「今日は気合いを入れないと勝てない相手だった」。後半一時逆転も、一歩及ばず東福岡5度目の準V|サニックスワールドラグビーユース交流大会2023

キックオフの笛が鳴ると、最初にスコアボードを動かしたのは東福岡。

前半5分、敵陣ゴール正面でのブレイクダウンでペナルティを得ると、10番・井上晴生選手がPGを蹴り上げまずは3点を先制する。

しかし、そこから巧さを見せたのはハミルトンだった。

風上を活かしたエリア取りとポゼッションで圧倒的に上回り、怒涛の3連続トライ。

1本目は前半11分。ゴール前でのペナルティで2度スクラムを選択すると、FWが体を当てながら押し込む。

1番ラハルヒ・パーマー(Raharuhi Palmer)選手がトライを決めた。

2トライ目もFW。ゴール前に攻め込まれても粘る東福岡だったが、タッチに出たボールをクイックで投入するはハミルトン。そのまま逆サイドを駆け上がった。

最後はFWがポイントを作りながら前進し、またしても1番・パーマー選手がインゴールへ。

圧巻は前半27分。

リスタートキックオフで蹴り込まれたボールを50:22で蹴り返したのは、ハミルトンの15番ランギワイ・ルンジェヴィッチ(Rangiwai Lunjevich)選手。

ハミルトンベンチ前でのラインアウトからモールを作ると、一度は逆サイドに振り切るが、すぐさま左サイドへボールを戻す。手にしたのは6番リアム・ストーム(Liam Sturm)選手。縦に走り抜き、トライを決めた。

21-3、ハミルトンが畳み掛ける。

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このまま前半が終了するか、と思われた。

しかし、ここは福岡。スタンドには、登録メンバーに入っていない仲間が揃って応援に駆けつけていた。

戦っているのは、ピッチにいる15人だけではない。ともに戦い、背中を押す。

披露したのは、伝統の応援歌『博多の男なら』。コロナ禍で長らく封印されていた応援が、会場中にこだました。


現在の高校生にとっては、15人制で初めての声出し応援。ハーフタイムには東福岡で受け継がれる『エビバディダンス』を披露し、会場の盛り上げにも一役買った

すると早速、東福岡は敵陣22m付近でマイボールラインアウトを獲得する。

なかなか敵陣深くへ入り込めなかった前半、ようやくチャンスを得た。

ラインアウトを確実に確保すると、モールは組まずすぐさま中央付近にボールを運ぶ。そこで出来たファーストラックで逆目に戻すと、縦に抜けたのは12番・神拓実選手。

「ハミルトンのディフェンスは順目に回るので、エッジが空くという分析結果が出ていました。だから前日のミーティングでは、みんなでそこを狙おうと確認していて。そしたらちょうど自分の前が空いていたので、そのまま持ち込んだらトライに繋げることができました。(神選手)」

この試合、チーム初トライを決める。

予選トーナメントではパスミスやシンビンなどが重なり、自身では納得のいくプレーができていなかった神選手。「どこか心の中に不安があったように思います」と正直に話す。

昨年夏から、長いことグリーンの10番を背負ったエース。勢いをもたらしたこのトライで「チームに貢献できたかな」と安堵の表情を見せた。

東福岡が5点を追加し、21-8で前半を折り返す。


トライ後にめずらしく雄叫びをあげた神選手

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ハーフタイム。

東福岡陣営では、風上に立つ後半をどう戦おうかと話を進めていた。

圧倒的に押されて終わった前半。だけど敵陣に入ったら、自分たちでもトライが取れる。だから、どうやってそこまでたどり着こうか。

いつも通りフォワードとバックスに分かれ話をし、全体で話をし。

そして最後、選手たちは誰からともなく、肩を組み合った。

ベンチメンバーにウォーター。みんなが一つとなった大きな円陣を作り、最後は6番・高比良恭介キャプテンの掛け声に合わせ、大きな声を揃って出した。

これまでの東福岡では、見たことがない光景。高比良キャプテンも「初めてでした」という。

その時の状況を詳しく説明したのは、バイスキャプテン・隅田誠太郎選手。

「ラグビーは紳士のスポーツ。だから僕たちも紳士であろう、といつもはしているのですが、もう今日は気合いを入れないと勝てない相手だった。だから気合いを入れ直そう、と自然発生的にみんなが肩を組み始めました。僕たちなりの気持ちの表し方だったかな、と思います。」

全員で、気持ちを作った。

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