東福岡がハーフタイムに組んだ円陣。「今日は気合いを入れないと勝てない相手だった」。後半一時逆転も、一歩及ばず東福岡5度目の準V|サニックスワールドラグビーユース交流大会2023

風上に立った後半。「走り勝とう」の声とともに、気合いの30分間は始まる。

まずはどう敵陣に入っていくか。

ベンチから「エッジ」と声が掛かれば、ボールを大外に運ぶ。外で勝負しよう、という意志だった。

するとウイングがボールを蹴り込み、エリアを進める。

チャンスを得たのは後半12分。敵陣ゴール前でペナルティを得ると、スクラムを選択した。

ボールを投入したのは、6番・高比良キャプテン。そのままスクラムサイドを駆け上がり、最後は16番・沢田海盛選手が押し込んだ。

コンバージョンゴールも成功し、15点目。21-15、東福岡が6点差まで迫る。

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1トライ1ゴールで逆転可能な、6点差。

しかしボールを持たせたら、ハミルトンはどこからでも攻め入るスキルを持っている。だからこそ東福岡は、まずは自分たちのディフェンスを信じた。

14番・松尾佳大選手は右端でハミルトンのフルバック、ルンジェヴィッチ選手へタックルに入る。15番・隅田選手がボールに絡むと、13番・村上有志選手、神選手らセンター陣が一気に加わり、ラックを思いっきりめくった。

ターンオーバー。盛り上がる、会場。

しかしレフリーの手はハミルトン側に上がった。驚きの声も聞こえたが、小競り合いが起きると、東福岡側に手が上げ直される。

そこで得たペナルティで、またしても東福岡はスクラムを選択する。

16番・沢田海盛選手は笑顔で手を叩き、勝負を挑んだ。スタンドの部員も、大きな声で『鬼のスクラム』コールを繰り返す。後半は一層、スタンドの仲間から届く声が大きく聞こえた。

「力強いし心強い。僕たちは15人で戦うスポーツですが、15人以上のパワーがあったと思います。」

高比良キャプテンは目を細め、そして感謝を伝えた。

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その高比良キャプテンがスクラムにボールを投入すると、キャプテン自身が持ち出した。ポイントを作れば、ゴール前でFW戦へ。

粘り強く当たる。バックスからも大きなコミュニケーションの声が届いてはいたが、最後は17番・髙矢晨之介選手が一瞬のチャンスで押し込んだ。

後半21分。「ゾーンに入ってましたね」とは、東福岡・藤田雄一郎監督。

ついに、21-22と逆転に成功する。


藤田監督は今大会最も成長した選手に、髙矢選手の名を挙げた。「後半ラスト15分で与えてくれるセカンドインパクト。疲れている選手たちに元気を与えてくれる存在です。」

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残り9分を守り切れば、東福岡が初めてチャンピオンカップを手にする。

だがもちろん、簡単にはいかない。

グラウンド中央でボールを持ったのは、今大会落ち着いたゲームメイクと自らでの勝負力が目立ったハミルトンのスタンドオフ、ウィンダム・パトゥアワ (Wyndham Patuawa)選手。

目の前に立つは、東福岡のフロントロー。ミスマッチを突かれた。

そのままビッグゲインを許すと、最後は11番デュプレ・マーシャル(Dupre Marshall)選手が逆転のトライ。

28-22。ポイントリーダーは後半27分、再びハミルトンへと渡った。

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残り時間僅か。

東福岡はラストチャンスを信じて、再び勝負のエッジに託した。11番・西浦岳優選手がボールを持って駆け上がる。

このまま抜ければ、というシーンまではたどり着いたが、裏を狙って蹴り上げたボールは惜しくもデッドボールラインを割る。

そうして吹かれた長い笛は、ノーサイドを伝えた。

ハミルトンが東福岡を6点上回り、9年ぶり4度目の優勝を手にした。

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その場にしゃがみ込んだのは、9番・利守晴選手。

世界一になる景色を、これからのヒガシを目指す子どもたちに届けたい、と走り抜いた60分間。

僅かに届かなかった差に、表情を崩した。

2番・田中京也選手も、はばかることなく涙を流す。熊本県出身。親元を離れ寮生活を送るが、応援に駆けつけてくれた家族の姿が目に入ったのだという。

「よく頑張った、と声を掛けてもらったら、涙が出てきました。」

全国選抜で芽が出た今年のチーム。

ここワールドユースでは「根が張りました」と、藤田監督は選手たちの成長を見つめた。

「根が広がったので、フィジカルをつけ、ゲーム理解度を高めたら、太い幹が生えてくると思う。いろんなエッセンスを取り入れる準備ができました。」

まだまだ伸びしろしかない、と目を細めたが、しかしどこか悔しさも滲ませる。

準備してきたことを出せれば、勝てる。戦える。そう選手の誰もが感じた60分間だった。

「だからあとは精度を高め、いかに理想形に近づけるか。ペナルティをせず、ミスもせず。(高比良キャプテン)」

これまでは大会が続き、一貫した強化ができなかった。

だからこれから先しばらくは、腰を据え、栄養分を吸収する日々が続いていく。


優勝トロフィーを前に、準優勝の賞状を受け取る高比良キャプテン

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ハミルトン オリー・マティス キャプテン

東福岡のみなさんと試合をすることになれば、タフなゲームになると思っていました。想像通りタフな時間でしたが、優勝できたことを嬉しく思います。

特に最終盤、逆転されてからも我慢強く、最後の最後に取り切ってくれました。チームのみんなを誇りに思いますし、これから迎えるシーズンへ良い弾みがついたと思います。

僕自身は近い将来スーパーラグビーでプレーして、いつか国を代表する選手になりたいと考えています。

東福岡 隅田誠太郎 バイスキャプテン

目的・目標は世界一。昨日の分析からずっと勝つことだけを考えてきたので、最後6点差という結果がとても悔しいです。僕のミスでトライを取られてしまった時もあったので、本当に申し訳ない気持ちでいます。

ですがこの経験は、僕たちしかできていません。必ず冬につなげて、花園では絶対に優勝カップを持ちたいと思います。


試合終了後、必ずベンチに控えるメンバーを迎え入れてから整列する隅田バイスキャプテン

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