寒さ厳しき12月に、桜満開の3月末。
川越東は、山梨学院と2度の練習試合を行っていた。
12月は7点差での敗戦、3月は後半途中まで食らいついたが最後に引き離される。
これまでの戦績は、2戦2敗。
そして、蒸し暑さ増す6月中旬。
埼玉県第1代表として出場した第71回関東高等学校ラグビーフットボール大会の1回戦で、初めて山梨学院と公式戦を戦った。
三度目の正直。今度こそ勝ち切りたい川越東は、最初のスコアを奪った。
敵陣10m付近でペナルティを得ると、ペナルティゴールを選択。
10番・五十嵐舜悟選手が落ち着いて沈めると、前半2分、3点を先制した。
その後山梨学院に2トライを取られたが、前半終了間際にモールサイドを走ったNo.8髙橋新大選手が押し込む。
8-14、6点のビハインドで前半を折り返した。
後半最初のトライを決めたのも川越東。
敵陣深くで攻撃を重ねると、一度はボールを明け渡したがすぐさま1番・寺山公太選手がボールを奪い返し、左片手のオーバーハンドパスで大外へ繋ぐ。
内に返した所、すかさずグラバーキックを蹴り込んだSO五十嵐選手。押さえたのは、またしてもNo.8髙橋選手だった。
13-14、1点差に詰め寄った。
しかしそこから、山梨学院に4つのトライを取られてしまう。
川越東も1つのPGと1つのトライを追加したが、及ばず。
21-42。
3度目の対戦は、ダブルスコアがついた。
この日、川越東の決めごとは一つだった。
強いプレイヤーを止めないことには始まらない。だから、外国人選手に対してのタックラーを3枚にしよう。
だが実際には、3人でいけていなかったり、3人入ったとしてもタックルミスでゲインされてしまったり。
やろうとしていたことが出来なかった、それが一番の敗因だった。
「ゲームプランも何もかも、一から崩れてしまいました。」
そう話したのは、今季川越東のキャプテンを務める高尾将太選手(フランカー)。
キャプテンに就任して半年。冷静に、的確にチームの現状を俯瞰した。
一方、望月雅之監督は「バックスであと2、3トライを取りきれるようにならなければ」と次を見据える。
FWを強化して数年。
関東大会の場で、モールトライを取れるようになったことは大きな前進だ。
だが、いやだからこそ、FWに頼りすぎてしまう側面があったことも否めない。
バックスでのトライシーンを生み出せなければ、花園1回戦での勝利は遠い。
トライを取り切る。
そのためには、コンタクトの強さが必要だ。タックル、ヒットの強さを磨きたい。
チームの戦術理解を深めることもマスト条件である。
ディフェンス面では、ボールを見すぎたことによる弊害もあった。
「この試合で、やることが明確になりました」と、高尾キャプテンはどこか吹っ切れたように振り返った。
もう一人の共同主将である寺山公太選手(プロップ)は「自分1人で今日の敗因を背負えるようなプレイヤーではない」と前置きをした上で、しかしそれでもキャプテンとして、ひたすらに自らのプレーだけに矢印を向けた。
「明らかに自分が弱すぎるな、って。」
昨年参加した、U17の関東ブロックセレクション。
そこで感じた、トップレベルとの差。
そして今年は最上級生。以前から見てきた超高校級選手たちのプレー動画を頭に思い浮かべれば、自らのプレーとの差に苦しむ。
「画面の中の選手と同い年になった今、余計感じます。足りないな、って。悔しいですね。」
目指す頂を高く設定するからこその苦悩。悔しくて悔しくて、涙が零れ落ちた。
ボールに絡み、奪い返すこと複数回。自己評価こそ低かったものの、この日球際で最も印象を残したのは寺山キャプテンだった
今年、埼玉県内では負けなしの川越東。
だからこそ、心のどこかで満足してしまっていた部分があるのではないだろうか、と寺山キャプテンは自問自答する。
埼玉を出た次、関東や全国の舞台では、負けたら終わりのノックアウトステージで一度も勝ち星を手にできていない現状に危機感を覚えた。
「今日の負けを、必ず忘れないように。残り数か月、今日のこの負けの悔しさを思い出しながら、チームとして強くなっていきます。」
自らの成長と、チームの成長。
悩むだけ悩んで、できるだけやって。
「花園では、もうこんな思いをしたくないです、絶対。」
そう、最後に力強く宣言した。
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