vs U17近畿ブロック
迎えた事実上の決勝戦。
相手は、U17近畿ブロック。
直前に行われていたU18の試合では、見事関東ブロックが優勝を決めていた。
歓喜に沸くU18の選手たちとベンチを入れ替わる際、U17とU18の選手たちは、互いに手を伸ばしハイタッチを交わす。
U18チームから掛けられた「頑張れ」「行ってこい」の数々。
だから、叫んだ。
「カントー、俺はここまで来たら日本一になりたいよ!」
日本一を目指した40分間へと挑んだ。
涙と笑顔でU18に送り出されたU17の選手たち。「嬉しかった」「めっちゃ、やってやろうと思った」「モチベ上がった」と笑顔を見せた
最初の得点は、U17近畿ブロック。
スクラムでショートサイドを突かれ、相手スタンドオフに先制トライを許した。
しかし直後、一気に取り返すはU17関東ブロック。
起点は、最後尾でボールを持ったフルバック・ 古賀龍人選手(桐蔭学園)のラインブレイクからだった。
「スペースのある所で自分が思うように動けた。久々にフルバックをやってみて、楽しかったです。(古賀選手)」
言葉通り、1人交わした後にも3人に絡まれたが、それすらも解ききり、およそ40mほどのゲインメーターを稼いだ。
敵陣22m付近まで持ち込んだ先でボールを繋いだのは、SH後藤快斗選手(桐蔭学園高校)。そこに走り込むは、LO西野誠一朗選手(桐蔭学園高校)。
最後に1人交わし、ポール真下に飛び込んだ。
フルバックとしてのプレースタイルも去ることながら、賢い受け答えは桐蔭学園の2期先輩、矢崎由高選手とどこか印象が被る古賀選手。
聞けば昨年度、自主練習の時間に自ら教えを請いに出向いていたらしい。
「カウンターや判断の仕方を聞きに行っていました」。学びは大きかった。
その矢崎先輩は、先日まで行われたワールドラグビー U20チャンピオンシップでも世界を相手に戦えることを証明してくれた。
だから。
「僕も、単純にあそこの舞台に立ちたい、と思いました。」
高校2年生。
先へと続くステップの一つひとつが、少しずつはっきりとした輪郭になり出している。
その後1つのペナルティゴールを許し、7-8と1点のビハインドで前半を折り返すと、後半最初の得点はまたしてもU17近畿ブロックに献上した。
インターセプトされたボールを繋がれ、相手スクラムハーフにトライを許す。
コンバージョンゴールも決まって、7-15。
後半4分、8点のビハインドへと変わった。
負けられないU17関東ブロックは、猛攻に出る。
後半12分。敵陣22m付近中央部でペナルティを得ると、申驥世キャプテンを中心に話し合いの時間を設けた。
出した結論は、PGを狙おう。
ここで3点を返せば、5点差。残り8分で、十分1トライにチャレンジする時間は残されていた。
キッカーを務めたのは、SO小林祐貴選手(慶應義塾高校)。
息を整え蹴り込んだが、軌道は僅かに脇へと逸れる。
だから。
残りの時間、人一倍に鋭いステップを見せたSO小林選手。ボールを持ち、ステップで交わし、陣地を押し上げた。
敵陣5mでのラインアウトを獲得すると、またもやFWが束になって押し込む。
だが、強い近畿のパックを前に、それだけでは取り切れない。
最後、ボールを持って勢いよく飛び込んだのは小林選手だった。
悔しさと、自分がどうにかしなければ、との気持ちが伝わる小林選手の一連のプレーに、会場も沸く。
狙い通りの、プラス1トライ。
だが、ボールを押し込んだ際胸に衝撃を受け、小林選手はそのまま退いた。
代わりにスタンドオフを務めたのは、神尾樹凛選手(國學院栃木高校)。ゴールキックも見事成功させ、14-15。
残り時間2分。1点差へと詰め寄った。
「最後はキックを蹴らずに継続して敵陣に入って、ペナルティが取れたらもう一度ショットでペナルティゴールを狙おう、と考えていました。(神尾選手)」
1点でも多くの点数を取る。そのことだけを考えゲームをコントロールしたが、キックオフキャッチでプレッシャーを受けると相手ボールに。
なんとかブレイクダウンで押し返そうと、持てる全ての力を使ったが、そのまま規定の試合時間20分を経過した。
ノーサイド。
僅か1点が届かず、敗れた。
試合後、申キャプテンは「悔しいです」と素直な感情を口にする。
しかし「全部出してこの点差。単純に近畿の方が強かったな、って」と対戦相手を讃えた。
「僕たちのスローガンは、ALL OUTを超える『MAX OUT』。やり切りました。」
近畿ブロックのラックでのテクニック、そして重さに、最後のトライラインを何度も阻まれた。
U20チャンピオンシップを視聴し気付いた、早い世代から海外を意識することの大切さ。「U17というカテゴリーから海外を意識して戦わないと(U20では)勝てないんだ、と思いました。(申キャプテン)」
もちろん、中には悔し涙を流す選手も。そのうちの一人は、スクラムハーフの後藤選手だった。
「みんな仲が良くて、みんなで『日本一を獲ろう』と頑張ってきたのに、自分が怪我して前半で出てしまった。申し訳なく思っています。」
大きく飛躍するための悔しさを、味わった。
申キャプテンは、チームを代表して最後に明るくまとめた。
「関東の素晴らしい選手たちと一緒に戦える経験は、今回が最後。自分より上手いプレイヤーもいて、忘れられない体験になりました!」
主将自らがムードメーカーとして、最後まで振る舞った。
そんなキャプテンを見ながら笑顔を浮かべたのは、國學院栃木の神尾選手。
「國栃として今季桐蔭学園に4連敗しているので、最初はめっちゃ怖かったです(笑)。(キャプテンの申)驥世も近寄り難かったのですが、実際はめっちゃフレンドリー。頼れるキャプテンでした。」
ふだんはライバルとして戦う選手たちと、コンバインドチームとして同じ時間を過ごしたからこその発見は、ひと夏の財産となった。
U17関東ブロックが代々受け継いできたチャレンジがある。
1分間で何回、パスを繋げるか。
歴代最高記録は、2019年。日本一になった佐藤健次キャプテン(現早稲田大学3年)の代で作り上げた、120回強が最多だった。
それを、今年のチームが塗り替える。
130回。U17関東ブロックとしての、過去最高記録を打ち立てた。
「だから実質、僕たちが歴代最強ってことです!」
敗れた悔しさの中にも、明るさを失わない。プライドを持った、2023年度のチームU17関東ブロックだった。