160分間で5人のスクラムハーフが出場した明治大学は『バトル』真っ只中。筑波大学は一つひとつの成長を掲げる|菅平合宿 明治大学×筑波大学

明治大学

明治大学が掲げる8月のテーマは『バトル』。

9月9日に開幕を迎える関東大学対抗戦初戦で、誰が紫紺を着るのか。チーム内でのバトルが繰り広げられている。

菅平合宿初戦となったこの日は、Aチーム・Bチームともに前後半で総入れ替え。

1人当たりの持ち時間は40分という限られた時間の中で、選手たちは最大限のアピールをした。

「どれだけ同じポジションの人とバトルできるか。誰がより良いパフォーマンスをできるか。みんなが意識できていたと思います。すごく良かったです。」

そう話すは、第100代主将・廣瀬雄也キャプテンだ。

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いま最もバトル激しいポジションは、スクラムハーフではなかろうか。

昨年度、スクラムハーフに苦しんだ明治大学。スタンドオフを本職とする池戸将太郎選手をスクラムハーフで起用したこともあり、「9番は層を厚くしたいポジションだった」と神鳥裕之監督は話す。

この日、Aチーム前半のスクラムハーフを務めたのは、3年生の登根大斗選手。

御所実業高校時代にはU17日本代表に選ばれた実力者。だが明治大学入学後の公式戦では、昨季1試合の春季大会出場と、今年の春季大会最終戦でのリザーブからの出場に留まっていた。

だが「ようやく自分の持っている強み、良さが上級生になって出てきたのではないか」とは神鳥監督談。「レベルの高い選手たちと一緒にプレーすることで、良い意味で影響を受けて自分自身のレベルを上げているように感じています」と首脳陣からの信頼を勝ち取っていた。


彼(登根選手)が名乗りを上げてくれることは、チームにとって非常に頼もしいこと。(神鳥監督)

まさしく「昨年の結果は関係ない(神鳥監督)」現状を評価しての試合メンバーに、廣瀬キャプテンは「僕もキャプテンだからといって試合に出られるわけではない」と危機感を持つ。

一方、昨年度の対抗戦で全試合先発を務めていたSH萩原周選手は、この日いわゆる『5番目のスクラムハーフ』としてBチームの後半20分からピッチに姿を現した。

「練習が良くなくて、下のチームでやっていました」とは萩原選手。率直に理由を明かす。

「だけどそこでしっかりと引っ張れて、声でもプレーでも引っ張れて。今日、この場で良いプレーが出来たと思っています。(萩原選手)」

だから、廣瀬キャプテンはこの日のMVPに萩原選手の名を挙げた。

「4本目(Bチーム後半のこと)、しかもラスト20分からの出場でした。自分たちよりも短く、限られた時間しかプレーできない中でも、萩原がチームを引っ張ってくれていた。試合が始まる前も、前半が終わった後も、最後の20分からしか出場がないのにハドルの中で一番話をしていたのが萩原。そういう部分で『萩原も諦めてないな』というか。僕たちからしたら、萩原は必要な選手。同期として、(Aチームに)上がってきてくれたら嬉しい。」

良いバトルが生まれている。


セットプレーでのアグレッシブな姿が印象的だったSH登根選手(写真左)。「チームとして、ハーフで競争ができることは有難い。9番は本当に大事なポジションです。そこが”萩原だけ、登根だけ”になっていないレベルでのバトルを続けてほしいな、と思います。(廣瀬キャプテン)」

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チームとしての充実ぶりは、プレー以外にも表れる。

前半24分、相手に1トライ目を許すと、そのリスタートキックオフを素早く再開した。

レフリーにやり直しの笛を吹かれはしたが、意表を突くスピードだった。

「事前にあのテンポでプレーを再開させようと準備していたわけではありません。だけど相手の隙を見つけて、その場であの判断になった。レフリーに止められはしましたが、相手にプレッシャーを掛けられたことは良かったなと考えています。(廣瀬キャプテン)」

自分たちのトライ後にも、スピードを意識した言葉は響く。

ベンチから「ジョグバック」の声が掛けられれば、プレイスキッカー以外の14人は駆け足で自陣へと戻った。

聞けば、練習時から練習間の移動はジョグが基本だそう。

「みんなで共有しなければならない情報があるんだったら、少しでも早く戻って話をしなければいけないと思っています。」

ラグビーとは、プレー中に選手たち自身で修正しなければならない競技。情報を共有し、修正するための時間を少しでも長くするためのジョグバック、がチームのスタンダードとして根付いている。

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今年は明治大学ラグビー部にとって、創部100周年の記念すべき年。

100代目の主将として過ごす廣瀬キャプテンの夏は緊張に包まれているかと思いきや、想像していたよりもはるかに穏やかな表情と声色であった。

「100周年のプレッシャーはあるか、とよく聞かれます。もしかしたら対抗戦が始まったら少しずつ出てくるのかもしれませんが、周りが助けてくれていますし、4年生たちの中にはリーダーシップを持っている選手が多い。良いカルチャーを作ってくれているので、逆に助けられています。今、苦しいことはありません。キャプテンをやらせてもらって、貴重な経験を楽しめています。」

AチームからDチームまでが同じ言葉を掛け合っていること。チーム全体が同じ方向を向いていること。

キャプテンとしての喜びを募らせる。

「毎日楽しく過ごせています。」

勝負の秋、そして冬に向け、ここ菅平では勝敗以上に「これは明治強いぞ」と思ってもらえるような姿を見せたいという廣瀬キャプテン。

「最後に帝京大学戦があります。ここはみんなしっかりフォーカスしていると思うので、勝ち負けどうこうよりも、どれだけ今の自分たちが昨年度のチャンピオンチームに通用するのか。すごく楽しみにしています。初戦・筑波大学戦は、まずまず。明治のラグビーが少しずつ体現できてきていると感じます。」

新しいことにチャレンジしているわけではない。

春から積み上げてきたものに、どれだけ自信を持つことができるか。

「チーム全体に浸透してきた。良い形でバトル出来ています」と充実感を漂わせる。

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