試合概要
第103回全国高等学校ラグビーフットボール大会埼玉県予選 準々決勝
【対戦カード】
浦和高校×昌平高校
【日時】
2023年11月4日(土)14:30キックオフ
【場所】
熊谷ラグビー場Aグラウンド
試合内容
浦和高校 21 – 28 昌平高校
大応援団の声援を背に、勢いを掴んだのは浦和だった。
伝統のモールからサイドアタックを仕掛ければ、8番・関口楓選手が連続トライ。
14-0と浦和がリードを得る。
21-14と浦和の7点リードで前半を終えると、しかし後半はディフェンディングチャンピオンの昌平がモールを対策。
前半よりも、浦和はモールを押せなくなる。
すると、戦術を変更。バックスでモールサイドアタックを仕掛け、エリアを押し上げるプランBにチャレンジした。
しかしモールからボールが出てしまえば、昌平は寄りの早さを発揮。ブレイクダウンでプレッシャーを掛け、ボールを奪い返せば、そのまま一気に走り切る。
昌平7番・増田翼選手のトライに、10番・小林利仁選手のコンバージョンゴールで21-21の同点に追いついたのは、後半13分。
その4分後、攻撃を畳みかけ逆転のトライを奪ったのは、昌平13番・横山健人キャプテンだった。
この日、昌平のスターティングメンバーに並んだ3年生の名は3人。しかし最後は3年生たちがしっかりと決めきり、昌平が4強入りを果たした。
最後のノーサイド ~浦和
浦和高校ラグビー部の伝統はいくつもある。
モール。
菅平での終わらないランパス。
そして、下馬評が最もあてにならないチームだということ。
とにかくモールを組む。グラウンド中盤でもリモールを狙う。
しかしそれは試合に限ったことではない。
ふだんの練習でも、FWはひたすらに何往復もモールを組み続ける。
菅平では通常、練習メインの1次合宿と試合がメインの2次合宿を行う。
1次練習では、OBもやってきて練習に参加する。
メインイベントは、全体練習後の終わらないランパス。監督もしくはOBから終わりのコールがかかるまで、永遠と続く。選手たちはどれほど続いたのか覚えていないほど、時間の感覚を手放し楕円球と向き合う。
途中に挟まれるのは、花園出場が叶わなかったOBたちの、熱き想い。
最後にはみな涙を流しながら、ボールを繋ぐ。
「あれがあったからチームが一つになった」と話す選手も数多い。
浦和高校は今年、第7シードで花園予選を迎えた。
国体予選で第8シードの熊谷工業と同点で終わり、抽選の結果手にした第7シードだった。
まだ、浦和としての戦い方が確立していなかった春。
それが夏を経て、秋も深まると、突如として『浦和らしいラグビー』が出現する。
10月上旬に行われた3回戦を見てもなお、ディフェンディングチャンピオンを相手に後半16分まで同点で試合をする展開は想像できなかった。
山本義明監督は言う。「浦和高校の強さはどういうラグビーなんだろう、と3年生を中心にみんなでずっと話し合っていました。」
自らで考え、突き詰め、納得し、やり切る。
その結果が表れるのが、浦和高校の秋・冬なのだ。
「一つ二つ勝てれば、もっともっと成長できたと思います。私の力不足で勝たせることができなくて。生徒たちはよくやってくれました。」
山本監督も、涙を流した。
ノーサイドの笛が鳴り、その場に崩れ落ちた2番・沼澤玄大バイスキャプテン。
その姿を見て、駆け寄った昌平・横山キャプテンは伝えた。
「必ず、花園に行くから。」
体をぶつけた者同士だからこそ伝わる、その熱い気持ち。
いや、見る者にすら伝わる熱量だからこそ、浦和高校には多くの応援集まるのだ。
SIDE STORY ~試合を終えて