桐蔭学園
3年生が主力のチームにおいて、出場を続ける2年生たちがいる。
ともに今年のあらゆる全国大会でスタートメンバーに名を連ねてきた、7番・申驥世(しん きせ)選手に、14番・古賀龍人選手。
2年生FLの申選手は、この日も変わらぬ力強いボールキャリーに、献身的ないくつものサポートプレーへと体を張った。
「昨年花園に出られず、それから本当にこの舞台に立ちたかった。神奈川県大会決勝で敗れた翌11月21日からこの日のためにやってきました。本当に花園楽しいです。」
体は痛いですけど、と笑った。
今日のテーマは『チームのために体を張る』。
「ボールキャリーなどまだまだできることはありますが、今日のテーマは遂行できたんじゃないかな、と思います。」
とことん気持ちが強い。
次戦はいよいよ、このチームにとってのラストゲーム。3年生に花を持たせたい。
「58期(今季の3年生の代)が大好きなんで。このチームで優勝できるように、明後日の試合では全力で体を張って、チームを絶対に勝たせます。」
絶対に勝ちたいです、と重ねた。
2年間、バックローとして背中を追い続けてきたのは、キャプテンの城央祐選手。
「誰よりも追い込んで、一番体を張って、有言実行する偉大なキャプテン。大好きです。絶対に日本一にさせたい。」
一番弟子との自覚を持つからこそ、よどむことなく強い言葉を発した。
「負けたら終わり、という意識が一段と強くなった」とチームの雰囲気を感じ取るは、2年生ウインガーの古賀選手。
身長182cm、体重84kg。
スラっとしなやかな体を時には力強く、時には舞うように使いタッチライン際を駆け抜ければ、今大会これまで計8トライ。3回戦ではハットトリック、2回戦では4トライを決めている。
「今まではリスクを考えたプレー選択をしていましたが、負けるぐらいならリスクを背負っていかなければいけない。そういう気持ちのプレー選択が見えてきたように思います。」
試合を重ねるごとに変化するチームの様を、敏感に感じ取る。
この日自身が決めた後半最初のトライは、仲間からのパスをタッチライン際で受けるやいなや、奥深くに蹴り込みインゴールで追いついたスピードプレー。
これもまたリスクを承知の上でのプレーかと思いきや、「(裏のスペースが)空いていることを冷静に判断して蹴り込んだ」という。
これまで決めたトライは、試合最初のトライに、後半最初のトライ。チームの雰囲気を左右する場面で決めきるエース、として在る理由を物語る。
「周りとのコミュニケーションを大切に練習してきました。そこに一度立ち返りたい。」
決勝戦。最後の60分間、決めきるプレーをする。
大阪桐蔭
今年のチームを率いた、13番・林田力キャプテン。
バックスには2年生が多く並ぶ中、その声と存在感でチームを一つにまとめた。
「最後には自分の言葉を信じてくれた。チームのために働いてくれるような姿勢を仲間が見せてくれた。感謝しています。」
右腕に巻く、青いリストバンド。代々大阪桐蔭のキャプテンに受け継がれるものである。
「結構まわってきている(代を受け継いできている)のでヨレヨレなんですけど」というそのリストバンドは、青いテーピングでしっかりと固定されていた。
「これをつけてゲームに出ることが一つの憧れでした。いざ巻いてみると、重いもの。しんどい場面でも支えてくれた、心の拠り所でした。」
キャプテンである自覚を、右腕が教えてくれた。
「この1年間、毎日を120%出し切った、と自信を持って言えます」
後半22分にグラウンドを退いた。
後を託したのは、1年生の手崎颯志選手。
「これから先、を考えた時に下級生に経験を積ませた方が次につながる。そこは自分の中でも割り切って考えていました。自分は100%出し切った。もう悔いはないです。安心して見ていました。」
交替するかもしれない、という話は事前に監督・コーチ陣からもされていた。もちろん、正直に言えば最後までやり切りたい気持ちはあった。だが「そういうもんだな」と、これからの大阪桐蔭を想う。
「悔しい思いもありながら、あとは託したぞという想いでした。」
試合が終わり、ピッチを出たらこみ上げるものがあった。あんなに泣いたことはこれまでになかったです、と言った。
退いた後もずっとベンチから声を出し続け、交替でピッチインする選手には必ずグータッチをした
青いリストバンドとともに、チームを次の代へと引き継ぐ。
「優勝して欲しい、という気持ちを込めて、このリストバンドも次の代に託します。」
今年の2年生は、常にラグビーのことを考えているような子たち。来年も活気のあるチームを引き継いでくれると思う。だから「成長して、花園に帰ってきてくれると思います」と笑顔を見せた。
後を託された2年生。
世代屈指のスクラムハーフ、川端隆馬選手は「春、敗れた桐蔭学園さんを倒そうと今年練習してきた。今日ベストなプレーが出せなかったことは、桐蔭学園さんが上回っていたのかな」と涙した。
2年生ではあるが、自分からゲームを引っ張っていくイメージを持ってプレーしていた。だが上手くいかなかった今年。
「この負けを忘れず、絶対来年、桐蔭学園を倒したいと思います。」
1年と2日後の優勝に向け、歩み出す。
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