國學院栃木
コロナによる中断を挟み、3大会連続の決勝カードとなった関東新人大会。
「相手は桐蔭学園。でも『チャレンジャーとしてではなく、横綱相撲で戦え』と選手たちには声を掛けました。準決勝でナイスゲームをしましたが、当然のように決勝に進出し、相手は当然のように桐蔭学園なんだ、と。」
そう話すは吉岡肇監督。
「ハーフタイムには『上手いプレーじゃない、逃げずにがっぷり四つに組むんだ。強い方が勝つんだから、戦わないで交わしてしまったら、どっちが強いか決着がつかないだろう。戦うんだぞ』と伝えました。最後は名場面だね。ノックオン一つしない桐蔭もすごいし、オフサイドもノットロールアウェーもせずに守り切ったコクトチもすごい。あの攻防は激闘だね。」
試合後、選手一人ひとりと握手を交わした吉岡肇監督
ロングリリースにダウンボール。
特に磨いてきたブレイクダウン周りのベーシックスキルが、正確で素早かった。
モールにスクラム、セットピースでも大きなアドバンテージを得た。
前半に1度、後半にもう1度。
勝負の場面のスクラムで、ベンチからは「ビッグスクラム!」の掛け声が掛かる。
「対戦校は一回りも二回り大きい選手が揃っていて、大きいスクラムを組みます。我々は体は小さいですが、一つになってバインディングして、スクラムは負けないんだと。小さいFWでも、スクラムは負けないんだという意思の表れです。」
勝負のスクラムで組み勝つと、FWの面々は長山時盛スクラムコーチが控えるベンチに向かって、高く拳を掲げた。
「一番大きいのは、この試合を見ていたノンメンバー含めた部員全員が、コクトチのジャージーに誇りを持てること。プライドが育ったことは、今後に活きてくると思います。」
優勝せねば、手にはできぬその誇り。
「新チームのスタートが関東チャンピオン。倒した相手は、ソックスを上げ、ジャージーをきちんとしまう、チャンピオンの風格有する桐蔭学園。勉強させてもらいました。」
そして、強度高い試合にもかかわらず、負傷者によってゲームが止まることのなかった両チームを称えた。
「日々の練習は間違ってなかったと証明できた。選抜に向けて、更に磨いていきます。」
1月1日の悔しさ。花開いた嬉しさ
ノーサイドの瞬間、涙が溢れた。
「ディフェンスで守り切れたことがコクトチらしかった。1トライ取られて悔しくはあるのですが、でも嬉しかった。」
前週は左目を負傷。この日は右肩を痛めながらも、ピッチに立ち続けることを選んだのは4番・笹本直希キャプテンだ。
1月1日、中部大春日丘に敗れ新チームがスタートした。
悔しかった。
「あの時の悔しさを胸に、ずっと練習してきました。全国チャンピオンの『対・桐蔭学園』を掲げ取り組んできて。それが花開いて、嬉しかったです。」
悔し涙を乗り越えた今、嬉し涙を流した。
「ディフェンスはまだ完璧ではないですし、次はもっとトライを取れるようにしたい。全国選抜大会に向けて、アタックもディフェンスもさらに磨いていきます。」
試合後、ノンメンバーたちが花道を作って試合メンバーを迎え入れた。
先頭を歩いた笹本キャプテンは、はばかることなく涙を流した。
主将が信じてくれた
後半14分。
相手のペナルティーで次なる手の判断を迫られた時、プレイスキッカーのSO神尾樹凛バイスキャプテンはスクラムを選択しようとしていた。
場所はゴールラインまで5m。角度も、そこまで鋭角ではない。
例えPGを選択したとしても、距離は十分、問題なく届く。だが、新チーム始まってからのプレイスキック成功率が低かったことが、不安材料だった。
しかし笹本キャプテンは、異なる判断を下した。
ショットコールがレフリーに伝えられる。
「やるしかない。」
主将が信じてくれた、その気持ちに応えなければ、と思った。
2つ目の大事なプレイスキックを、落ち着いて沈めた。
もちろん、目指しているのは全国優勝。まだまだ、ここでは満足はしない。
だが全国制覇のためにも、まずは乗り越えなければならなかった壁をシーズンの始めに打ち破ったことは、大きな自信となる。
「優勝したことで、次のステップに進めます。全国選抜での優勝を目指して、頑張ります。」
試合直後は楽しいと嬉しいが混ざった。「試合中も楽しかった。やっぱり勝っているゲームは楽しいです。」
コクトチのプライド
試合を決めるターンオーバーに体を投げ出したのは、1番・牧田玲大バイスキャプテン。
横浜ラグビースクール出身。國學院栃木の、自分たちでラグビーを作る主体性に惹かれ、栃木へとやってきた。
桐蔭学園には見知った顔も多く「勝てて嬉しい」と喜ぶ。
「自分の役目は泥臭く、体を張るプレー。声を出して、みんなを奮い立たせようと思っていた」というとおり、この日何度も試合中に手を叩き、仲間を鼓舞した。
幾度もゴールラインを背負ったディフェンスに耐えた。
試合の最後は、なんと28フェーズ。
「コクトチのプライド。ゴールラインを越えられたら、コクトチではないと思っていました。」
全員が気合いで、ゴールラインを割らせなかった。
一方で、アタックシチュエーションでは取り切れないことも。
「驕らずトレーニングをしていきます。」
次なる優勝旗を、全国選抜大会で狙う。