8日に初陣へ。U20日本代表候補、バックスも加わり本格始動。問われる「プレッシャーに立ち向かう力」

Pick Up Players

大川虎拓郎「もっと学びたい」

リーグワンの重さに技術を目の当たりにした、FW特訓の1ヵ月間。

「もっと学んで、もっと筋肉をつけなければいけない」と顔を上げたのは、FL/No.8の大川虎拓郎選手(明治大学1年)だ。

「一番体を当てて前に出ないといけないのがFW。FWで勝たないと試合に勝てない、とは明治大学でも感じています。FW合宿にはものすごく意味があります。」

FW合宿中には、初めてスクラムでNo.8のポジションに入った。

ボールの扱い方や押し方も分からなかったため、リーグワンの選手たちに教えを乞うた。

高校時代は、東福岡高校でも、オール福岡でも、そして高校日本代表でもキャプテンを務めた生粋のザ・キャプテン。

「(同年代のチームでは)キャプテンしかやったことがない。外からキャプテンを見る、という景色を僕はまだ知りません。外から見ることで新たな発見があるとも思うので、キャプテンでない立場で学んでみたい、という思いもあります。」

これまで見てきた視点ではなく、違う視座にも立ってみたい。

学びたい、が正直な今の想いだ。


練習中にもよく発言していた大川選手。気付いたら自然と声を出し、自然とリーダーシップを取っていたという

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高校日本代表時にはアイルランドと対戦し、1勝1敗。スピードとパワーがウィークポイントだと分かった。

どれだけチームで戦おうとも、結局は1対1の戦いが試合結果に繋がる、ということも理解した。

「スピードは、筋力がないと上がりません。今年1年間で9kg体重が増えて、いま104kg。パワー面では成長したと思いますが、でもまだめちゃくちゃ弱い。鍛え直したいです。」

今年度の対抗戦には出場叶わなかったが、サポートプレイヤーとしてチームに帯同することも多かった明治大学での1年目。

「準優勝のチームとずっと体を当ててこられたことに感謝しています。」


増量期間中、食べても食べてもお腹が空く時期がやってきた。「夕食時にはお米だけで1㎏。その後の22時の食事でも300g」をたいらげたという。身長も1.5cm伸び188cmに

U20トロフィーでの対戦カードも決まった。いよいよ、ターゲットが明確になった。

「来年のためにも、しっかりU20トロフィーで優勝して良い形で来年に受け継ぎたい。いまはU20とフル代表も連携しているので、日本のラグビーが発展していくように。個人のスキルアップにも努めたいと思います。」

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山口匠「リーグワンのスクラムは繊細」

リーグワンに所属する5つのチームをめぐり、武者修行を積んだU20日本代表候補のFW陣。

「新しいことだらけで楽しい」と話したのは、右プロップの山口匠選手(明治大学1年)だ。

1ヵ月の間、色んな人から色んなアドバイスを受けた。様々な角度からのコメントもあった。

特にスクラムでは「組み方が根本から変わった」と充実の表情を見せる。

「実は自分が想像していたスクラムが、大学とリーグワンで逆でした。リーグワンは繊細だな、って。大学では『前に前に』と泥臭く当たっていきますが、リーグワンはミリ単位で調整されていて。『こっちなんだ』と思いました。驚きでした。」

アングルのつけ方や首でのヘッドファイトの仕方を、埼玉パナソニックワイルドナイツの選手たちに教えてもらった。東芝ブレイブルーパス東京の選手たちにも、流儀を伝授してもらう。

そのどちらが、果たして自分には合うのか。試しに両方のやり方で組んだ後、「自分流にアレンジしたスタイルで組んでみたら押すことができました」と笑顔を見せた。

学び多き、濃い時間。

「まずは全部吸収して、そこから自分に合うものをピックアップしようかな、って。素材は多ければ多いほど良い、と思っています。」

まだ10代。もっと言えば、早生まれにつき、18歳。

だが既に、大人でも難しい取捨選択の感覚を身に着けている。

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昨夏のこと。怪我をし、手術を受けた。数か月、グラウンドから離れた。

生粋の負けず嫌い。自分が出ていない試合は、目にしたくないほどである。

だからラグビーができなかった数か月間、これまで自分が出場した試合のビデオを全て見返した。大学のみならず、高校生3年間の全てのゲームにまで及んだ。

そして、気付く。

「スクラムでは、明らかに自分の所でのペナルティが多かったんです。」

思えば、高校日本代表としてU19アイルランド代表と対戦した2戦目。後半のラストスクラムで会心の一組みを見せるも、反則を取られ逆転負けを喫したこともあった。

だからグラウンドに復帰した後は『自律心』そして『規律を守る』を肝にスクラムを強化した。レフリングに対応していくこと、そしてぐうの音も出ないほどに押し込むことも意識する。

「スクラムでボールを奪い返すことができたら、チームにも貢献できるはずです。」

苦い経験を糧に、成長を続ける覚悟だ。

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伊藤龍之介「取り切らなきゃいけない責任」

高校日本代表以来、1年ぶりの年代別代表活動となったのはSO伊藤龍之介選手(明治大学1年)。

高校日本代表は1ヵ月でチームを作り上げたが、U20日本代表は半年もの時間をかける。よりフル代表に近いチーム作り、を経験している。

「みんなスキルが高い。もちろんスキル面でもアピールは必要ですが、自分の持ち味であるリーダーシップで存在感を示したいな、とイメージを持っています。」

大学に入り、体のサイズとともにスピードが増した。この1年、オーガナイズする意識を持ち、プレー中の声を出すよう努めてもきた。


写真左が伊藤選手

FWが1ヵ月間の特訓を積んだ上で合流したバックス陣。

サイズアップし、戦える体を作ったFWを見て「バックスは取り切らなきゃいけない」と感じた。

「チャンスの場面でボールが回ってきたら、取り切らなきゃいけない責任がある。そのための準備をバックスとして整えておきたいし、FWが良い状態で力を出せるゲームコントロール力がスタンドオフには求められるかな、と思っています。」

8日(金)に控える、U20日本代表候補としての初陣。

「どれだけ試合に出場する時間があるか分かりませんが、与えられた時間の中でチームに貢献できるように。チームに貢献しながら、しっかりと自分の持ち味も出して、良いアピールをしたいです。」

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永井大成「もっと考え、もっと発言を」

高校日本代表入りを逃した1年前。

「実力が伴っていなかった」と納得した。

だから大学に入学し、体づくりから励む。5㎏増量し、U20日本代表候補入りを果たしたのはSO/CTBの永井大成選手(専修大学1年)だ。


家を行き来するほど仲が良いという東福岡高校の同級生・中川一星選手(関西大学)からは「がんばって」と連絡をもらった。「一緒にU20日本代表入りを目指していた相棒の分まで頑張りたい!」写真右が永井選手

カテゴリーが2部に属する大学から選ばれた、唯一のバックス選手。

「高校ジャパンだった選手や1部で出ている選手たちは、体の強さ、そしてスピードが何段も上だと痛感しています。」

だからこそ胸に刻むは「やってやるぞ」の決意だ。

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ポジションは、スタンドオフとセンターの両刀。馴染み深いのはセンターだが、ディフェンスに定評があるため、東福岡高校時代から時折スタンドオフにポジションを移すことがあった。

「自分のプレーを活かせるのはセンター。ですがプレーの幅を広げるために、と大学でも秋以降はスタンドオフの練習を重ねていました。関東大学リーグ戦1部入替戦にはスタンドオフで出場しています。スタッツ上、誰よりもタックル回数が多かったです。」

U20日本代表候補では、現在12番のポジションを務める。

「13番は12番のダミーとして動くことも多いですが、12番は自分がボールを動かすこともできる。楽しいですね。」

スタンドオフを経験したことが、より12番としてのプレーに活かされている。

6日の練習には、男子15人制日本代表のヘッドコーチであるエディー・ジョーンズ氏が視察に訪れた。

「2015年のワールドカップで日本が南アフリカに勝利した時、僕は小学生でした。テレビで見ていた人が目の前にいることに『自分もここまで来たんだな』と思って。一方で、周りを見渡したら自分はまだまだ。この場に呼んで頂いていることを有難く感じますし、このレベルの選手たちと一緒にプレーできていること自体が貴重な財産。もっと頑張らなきゃいけない」と気持ちを新たにした。

またジョーンズHCは朝のミーティングにも参加し、印象的な言葉をのこしたという。

「今の日本代表に足りないものはなにか、と問われ、2人1組で話し合う時間が設けられたんです。僕たちなりに一生懸命、もちろん真剣に話し合っていたのですが『まだ足りない』と言われて。『日本代表は、もっと会場に響き渡るぐらいの声量で話し合っている。黙る隙もないぐらいずっと話している』とのことでした。もっと考えて、もっと発言しなきゃいけない。もっともっとコミュニケーションを取らなきゃいけない。」

もっと考えること。考えを、もっと伝えること。

代表活動3日目にして、大きな学びを得た。

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