石見智翠館
走って、倒れて、ぶつかって。
新チームになってから「そんな練習しかしていない」と出村知也監督は言う。
成果として表れたのが、2回戦の大分東明戦。そしてこの中部大春日丘戦。
「タフな試合でも最後まで走り切るチームになってきた。チームの強みになった」と成長を感じ取る。
第18回大会以来となる準決勝進出を決めた。
対戦相手は、関東新人大会優勝の國學院栃木。
「國學院栃木さんはFWが強いチーム。ですが、ガチンコバトルに絶っ対負けない自信はあります。チャレンジャーとして、先手先手で泥臭く。歴史を変えに行こうと思っています。」
出村監督は「絶対」に力を込め、強く宣言した。
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今季、石見智翠館のバイスキャプテンを務めるのはスタンドオフの原田崇良選手。
「(キャプテンの祝原)久温は熱くなっちゃう所がある。だからこそ僕は一歩引いて、冷静になってみんなを見渡してサポートしています。」
自身は中学時代、キャプテンを務めてきた。だからこそキャプテンに必要なこと、そしてキャプテンではない人がどのようにキャプテンを支えたらよいか、を理解している。
「必要に応じて(チームの雰囲気を)上げたり、上げすぎていたら下げたり。そこをコントロールしています。」
個人的に仲間の話を聞くこともあるそうだ。
福岡県出身。5歳で始めたラグビーは、中学まで北九州市を拠点とする帆柱ヤングラガーズでプレーした。
だが高校は、福岡県外に出ることを選択する。
「東福岡を倒したかった。」
小学生の頃はもちろん、東福岡に憧れを抱いた。だが中学生になった辺りから「強い東福岡を倒したい」という感情が強くなる。
「僕の代で、東福岡を倒したい。」
出村監督の人柄に惹かれ、石見智翠館への進学を決断した。
選抜大会前には、東福岡との『ベアーズカップ』で初めて勝利し、勝者が手にする熊のぬいぐるみ『ベアー』が初めて関門海峡を渡った。
「東福岡を相手にも接点では全然負けていなかった」という自信は、はたして今大会の台風の目となるか。
中部大春日丘
先発15人のうち、2年生はわずか3名。
12人の元気な1年生たちが、チームを盛り上げる。
「正直、ここまで勝ち上がることができるのはなかなか難しいかな、と思っていました」と打ち明けるは宮地真監督。
「1年生主体のメンバーにしては、僕の想像を遥かに超えたようなプレーをしてくれた印象です。」
グラウンド上でも、多くの1年生たちがムードメーカーぶりを発揮した。
186cmのLO三治蒼生選手も1年生。試合中には何度も仲間に笑顔を見せた
今年のスローガンは『2年分の練習』に決まった。
その意味について、1番・川島大虎キャプテンはこう説明する。
「1時間で2時間分の内容の練習ができるように、と心掛けています。ですが今はまだ、1時間ずっとその密度でできているかと考えると、10分ぐらい。その時間を60分までのばせるように。花園までの残りの時間も頑張りたい」と言った。
若いチーム。だけれど練習の密度とクオリティを2倍にしたら、2年分の練習と同義語。
最上級生が主力のチームと、同じ土俵で戦えるはずだ。
「とことん2年分の練習をして、冬を迎えたい」と川島キャプテンが言えば、宮地監督も「『2年分の練習』という横断幕をグラウンドに掲げて練習しています」と覚悟をのぞかせた。
川島キャプテンは言う。
「後輩たちにはリーダーシップを持っている選手が多いので、様々な意見が出てきます。だから優先順位を設け、順番に整理してくことを心掛けています。」
昨季主将・福田大和先輩のリーダーシップの取り方をお手本にしているのだという。
「全然、大和くんのレベルには達していないですが」と笑うが、グラウンド上の落ち着きを呼ぶ声掛けは、川島キャプテンから発せられたものだった。
「1年生が多いことを強みに変えていけるように。昨年の花園ベスト8以上の結果を出せるよう、頑張りたいです。」
見て学んだことを、体現する日々は始まったばかりだ。
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