石見智翠館、ラスト2分の決勝弾。國學院栃木を下し12年ぶり2度目の決勝へ「感動を与えるラグビーを」|第25回全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会 準決勝

石見智翠館

「新チームになってからずっとやってきた『ぶつかって、立ち上がって、走って』を体現してくれた60分間でした。國學院栃木さんもプレーに隙がなく、素晴らしいチームで。僕は試合中、勝ち負け関係なしに『素晴らしいな』と60分間見入っていました。」

そう話したのは、出村知也監督。

石見智翠館で指導を始め8年。監督になって丸1年。

12年ぶりに決勝まで導いた60分間を、感慨深く見守った。

同点に追いつかれた試合最終盤の選手たちの走力も、賞賛に値した。

「苦しい時間帯に走れるチームになった。今まで僕が石見智翠館を見てきた中では、なかったので。僕たちも新たな気付きをもらいましたし、彼らの底力を見た気がします。」

一つ壁を乗り越えた準決勝だった。

毎夏、菅平で練習試合を行う両校。

だがここ3年間は、ずっと國學院栃木が勝利を収めてきた。

現役選手たちにとっては、一度も勝ったことのない相手から収めた勝利。

意味ある一勝を手にした。

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ノーコールのキックパス

2トライ目をキックパスでお膳立てしたのは、15番・新井竜之介選手。

ディフェンスが強みの國學院栃木に対し、正面勝負ではなく、ハイボールやキックを交えながらトライを狙う心構えを準備していた。

あの瞬間、外側の選手からキックコールがかかったわけではない。

新井選手自身も、蹴ると合図をしたわけでもない。

練習から同じようなシチュエーションで訓練を積んできたからこそ、言葉なくともチーム全員が同じ絵姿を描いたトライだった。

期待以上の男

大きな体で、大きなプレーをして、大きな声でチームのど真ん中に立ち、先陣を切るNo.8祝原久温キャプテン。

だが本人曰く「小心者」。試合前は緊張していたという。

そんな祝原キャプテンに向かって、出村監督が伝えたことがある。

「おまえは期待以上の男になる人間だ。思い切ってやれ。ボールを持ったら前に出る、相手が来たらボールを取りに行く。それだけやればいい。おまえが先陣切ってゲインを切って、前に出るんだ。」

背中を押された祝原キャプテンは、先制トライに決勝トライ。

「持ってますね」と出村監督は笑った。

「1年生の頃から、そういう所があった。勝負所でトライを取るのが(祝原)久温。でも彼がトライを取ってくれるから、他の選手たちが別の所で体を張ってくれるし、ボールを前に運んでくれる。良い雰囲気がグラウンドに表れていたので、嬉しかったです。」

祝原キャプテンは言う。

接戦になることは分かっていた。だが、今のチームでは負ける気がしなかった。

「慢心、ということではありません。3戦を勝ち抜く中で怪我人も出ましたが、今一緒にプレーしているメンバーはみんな、凄い。絶対勝てる、と思っていました。」

互いへの信頼が、石見智翠館を強くした。

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初優勝へ

あと一つ。

ここまできたらやるしかない、が本音だ。

「全力をぶつけて、どこまでやれるか。(祝原キャプテン)」

いつも通り、感動を与えるラグビーをどれだけできるか。

出村監督は「大阪桐蔭さんはこの場(決勝戦)を知り尽くしているチーム。僕らに失うものはありません。思い切って前に出て、今日のようにバチバチ体を当てて、1人でも多くの方に石見智翠館のラグビーで感動してもらえたら」と笑顔を見せた。

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