國學院栃木
試合後、名将・吉岡肇監督が発した第一声は「実力伯仲」だった。
そして「終わってみたら、『あ、やっぱり8番にやられたんだ』と。良い所に現れる、良い選手ですね。ここぞ、という場面で現れる。」
称えたのは、相手主将のNo.8祝原久温選手。
「うちは、みんなでラグビーするチーム。彼のような大砲がいなかった。全ての局面でプレッシャーを掛けられるチーム」と石見智翠館を称えた。
キック戦では良いエリア取りもあった。
だが、何度かあったプレゼントキック。
要所で勢いを掴み切ることができなかった。
関東新人大会で4試合、そして全国選抜大会で4試合を戦い、明らかになったことがある。
それは「ロースコア」で勝ち切るチームだということ。
これまでの試合では相手を2トライ以内に抑えており、接戦を勝ち取ってきた。
だが今日与えたトライは4本。
「3本、4本取られるとちょっと厳しいのかな、と。(吉岡監督)」
もう一度、執念のタックルを取り戻す。
悔しくて、悔しくて
同点トライを決めた、14番・井戸川ラトレル選手。
だが一度はトライではない、という判定を受ける。
悔しくて悔しくて、感情を抑えることができなかった。
何度も地面を叩いた井戸川選手
関東1位という代名詞は「プレッシャーよりも自信。桐蔭学園に勝った、という自信になった」と話す。
だがここ熊谷ラグビー場Aグラウンドでの試合になると、強みのハイパントキャッチでミスは起こる。
「準々決勝が全然ダメダメで。今日こそはと思っていたのに、自陣でノックオンをしてしまいました。」
勝ちたかった。悔しかった。
「この選抜大会に懸けて、僕たちは練習してきました。でも勝てなかった。次の大会に向けて、練習に取り組んでいきます。」
途中、涙で何度も声をつまらせながら、言葉を絞り出した。
関東王者の自信と
関東王者として迎えた今大会。
「プレッシャーでもあり、自信でもあった」と言ったのは4番・笹本直希キャプテン。
「関東王者としての誇りをもって、もっとタックルに刺さればよかった」と涙を流した。
連戦の疲れもある。決勝を懸けた大一番、という緊張もある。
だが「そんなのは言い訳にならない。疲れなんか関係ない。個々の気持ちの問題です。一人ひとりがもっとタックルに刺さる意識を持っていれば、このような結果にならなかった気がします。」
各校にスーパースターが並ぶ黄金世代。キャプテンを務める重圧も、口にする。
「キャプテンの自分が、他のチームのキャプテンに比べたら劣っている部分があります。自分は、このチームのスペシャルではないので。プレーで引っ張れるように。低く刺さって、ジャッカルしていきたい」と涙ながらに覚悟を見せた。
試合前、コクトチ応援団に向かって挨拶をする選手たち
勝たないとラグビーは楽しくない
「ごめん、きりん」と言ったのはWTB井戸川選手。
「ラトはなんも悪くない」と返したのは、SO神尾樹凛選手。
自責の念にかられる選手たち。互いに「ごめん」と言い合った。
ワイドワイドに振って抜き合いをすれば勝てる、と意識をしていた1トライ目。
この試合で國學院栃木が奪った2トライからは、日頃の鍛錬が感じられた。
「今回の負けは、自分のせいです。自分がチームを動かせなかった。」
スタンドオフとして、この日は納得のいくキックが蹴れず。「もうちょっと良いキックができれば、勝てていた」と目線を落とした。
「負けは負け。勝たないとラグビーは楽しくない。点数が取れないと勝てない、ということが分かったので、これから先、花園まで点を取れるチームになりたいと思います。」