第103回全国高等学校ラグビーフットボール大会のオープニングゲームで笛を吹いてから3か月。
延原梨輝翔さん(京都成章高校3年)は、第25回全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会でもレフリーを務めた。
2試合を任された。
1回戦の桐蔭学園×長崎北陽台に、2回戦・大分東明×石見智翠館。
誰もが注目する、ビッグゲームが続いた。
「乗り越える良い機会を頂きました。感謝しています」
割り当てからも、期待値の高さをうかがい知る。
何を隠そう、兄は埼玉パナソニックワイルドナイツの延原秀飛選手。
自身もかつては、兄と同様ラグビー選手としてプレーした。
だが、楕円球から笛に持ち替えたのは高校1年の夏。
「1人だけ違うジャージーを着ていることが格好良かった」と、レフリー街道を志願。以後は前人未踏の道を進んでいる。
全国選抜大会では、自身のポジショニングに成長を感じた。「花園では自分の立ち位置がはまらないこともありました。でも今回は、一番見易いポジションに立つことができました」
両チームの選手30人と、延原レフリー。
グラウンド上に31人の高校生たちが揃った、60分間。
延原レフリーは言う。
「選手たちが敬語で喋ってくれました。みんな同級生なので、敬語じゃなくていいのにと思ったのですが・・・」
そんな所にもラグビーらしさは表れる。
全国選抜大会から1ヵ月が経った、ゴールデンウイーク。
福岡・宗像の地には、ピンク色のレフリージャージーを着た延原レフリーの姿があった。
国際試合で笛を吹くチャンスが、巡ってくる。
英語はまだまだ勉強中だが、ここ宗像の地で任された大役。大会3日目には、ニュージーランド対アメリカの試合を担当した。
同世代の選手同様、延原レフリーも海外から参加しているレフリーたちに多くのことを学んでいる。
外国人レフリーが危険なハイタックルにはすぐさま笛を吹くその音色はとても強く、見ているこちらも驚きを感じるほどだ。延原レフリーも「びっくりしました」と言った。
「レフリングの基準は変わりません。でもマネジメントが上手い。まとめる力もある」と舌を巻く。「自分の感情を伝えることが上手だな、って思います」
自分を表現することが日本人より上手いのだという。
レフリーとして多忙な日々を送る。
今大会に参加するのは、3日まで。5日以降は、太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2024へと舞台を移す。
高校3年生、スケジュールの詰まった日々はこれからも続いていくが、すべては将来の夢のため。
「ワールドカップの舞台に立ちたい」
だから日々目指すは「試合が終わった時に、レフリーの力ではなく、どちらかのチームの力で勝ったと思ってもらえるようなゲームにすること」
己の信じる道を、まっすぐに力強く、これからも前進し続ける。