第72回関東高等学校ラグビーフットボール大会 埼玉県予選が5月12日（日）、熊谷ラグビー場で行われ、昌平高校が2年ぶりの優勝を果たした。
また今年の関東大会は埼玉県にて開催されるため、開催権枠1を含む5校（昌平、川越東、熊谷工業、浦和、慶應志木）が出場権を獲得。
東西南北それぞれの地区から代表校が選出されており、埼玉県下でのラグビーの広がりをうかがわせる顔ぶれとなった。
決勝戦
昌平 33-0 川越東
時折小雨が降り注ぐ中行われた決勝戦。
2年連続の決勝カードとなった一戦は、終始昌平が主導権を握った。
前半8分、昌平10番・宮本和弥選手がステップを切りファーストトライを決めると、その11分後にもスクラムからSO宮本選手がトライ。
コンバージョンゴールも宮本選手自身が蹴り上げ、前半の得点者欄には全て、2年生スタンドオフ・宮本選手の名が並んだ。
前半を12-0と昌平リードで折り返す。
後半に入っても、昌平はペースを落とさない。
後半最初のトライは、6分。
またしても昌平がスクラムからのムーブでSO宮本選手がハットトリックを決めれば、リードを広げた。
後半21分には、後半開始から投入された23番・小林利仁選手がトライ。
最後は試合終了間際に15番・山口廉太選手が相手のミスを逃さずボールを拾い上げると、そのままポール真下に飛び込みノーサイド。
昌平が33-0で、今季2冠目を手にした。
昌平
昌平の強さは、今大会の勝ち上がりにあらわれた。
2回戦・城西川越戦、84-0。
準々決勝・正智深谷戦、不戦勝。
準決勝・熊谷工業戦、59-0。
決勝・川越東戦、33-0。
今大会176得点を奪えば、無失点。
この『失点ゼロ』は、リーダー陣が決めた大会目標だったという。
決勝戦の相手は、新人戦で59-0と大勝していた川越東だった。
だがこの日は、最初の10分間で思い描いていたような勢いを掴めない。
準決勝では『ハマった』という戦術に、この日は苦しんだ。
「感覚のズレ、判断材料の選択基準がバラバラになってしまった」と、船戸彰監督は話す。
コミュニケーション不足が影響したこと、また準決勝まではトライを取れていたシチュエーションで苦しんだことに、対戦相手からのリスペクトも感じた。
一方で、トライを取り切ることが関東新人大会、全国選抜大会を通しての課題でもあった昌平。
この日はスクラムから3本、ほぼノーラックでトライを取り切った。
スクラムでは相手から「ミヤモト！」とマークを受けながらも、取り切る強さを見せたのはSO宮本和弥選手。
全国選抜大会まではフルバックだったが、ここ1ヵ月でスタンドオフにコンバートした。
周りの選手たちも徐々に順応し、スクラムからボールを受ける場面では、SH白鳥蓮キャプテンが相手選手を引き付けながらスペースを生み出す。
先輩のお膳立てをしっかりと形にすれば、3トライ4ゴールと躍動した。
また、これまでスタンドオフを務めていた小林利仁選手選手はベンチスタート。
前半、試合の流れを客観視することで、自身のプレーエリアを冷静に考えられるようになった。
意識的に外側にポジションを構え、また時にはダブルスタンドオフのようなシチュエーションも垣間見せながら、その走力を活かし相手ディフェンスの的を絞らせないことに一役買った。
「誰かがラックに入っても、誰かがカバーしてくれる」と、FB山口廉太選手含めたバックス陣の連携に手応えを感じる。
◆
関東大会ではここ2年、勝ち星がない昌平。
「強いチームと、公式戦で戦いたい（白鳥蓮キャプテン）」
開催県王者として、2021年日川戦以来の関東大会勝利を目指す。
川越東
新人戦決勝で59点を取られた相手に、果たしてどこまで自分たちのディフェンスは対抗できるか。
川越東は、ディフェンス勝負に出た。
「流れの中でのディフェンスではプレッシャーを掛けられたので、やり切れたかなと思います。でもどうしても一発で取られてしまったトライが、3つあった」
そこがまだまだかな、と望月雅之監督は振り返った。
新人戦での改善点を修正した春だった。
複数選手のポジションを入れ替え、攻撃力を磨いた。
ウイングだった田中悠貴選手はNo.8へ。
スクラムハーフだった岡部史寛選手はスタンドオフに、代わりにスタンドオフだった松野希見選手はスクラムハーフへとまわった。
攻撃力のある田中選手をスクラムからの持ち出し『エイタン』役に。ディフェンスも光った
ハーフ団の2人は、ともに2年生。
昨年の花園には1年生ながらスクラムハーフとして出場した岡部選手だが、スタンドオフという新たなポジションに緊張感を持つ。
「自分の働きいかんでチームの流れが変わってくる。背負うものが変わるな、と思っています」
先輩たちに頼っていたゲームメイクの中心に、自身が立ったことを実感している。
「キックのエリア取りで負けていた。精度を上げていきたい（岡部選手）」
ゲームメーカーとして、新人戦から26点分の差を詰められたことは「自分たちの気持ちが折れなかった点」と評価した岡部選手。
一方でトライチャンスで取り切れなかったことは、秋への課題だ。
強豪揃う関東大会。
タクトを振るう者として「気持ちの部分で負けないように。全員で刺さるタックルをして、チームで士気を高めて挑みたい」と意気込んだ。
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1年生は24名が入部。この日も既に2名がリザーブ登録されており、うち1名は後半22分からピッチに立った。
望月監督は「1年生も良い選手が入ってきています。登録メンバーは、秋に向けてまだもう少し若返るのでは」と見越す。
ラグビー未経験ながら、187㎝120kgの体格を有する大型新人も入部し、ますますポジション争いが激しくなる川越東。
チームとして、そして個としてチャレンジする初夏を迎える。
