スタンドオフ
SO 伊藤利江人
「やっと出られます。素直に嬉しいです」
穏やかな顔で、U20日本代表としての最終戦先発を喜んだ。
U20スコットランド代表戦は、控えにFWを6枚揃えたためメンバー外。
ウォーターとして、ピッチサイドから戦況をみつめた。
U20日本代表では、メンバー外の選手のことを『Sunnies(サニーズ)』と呼ぶ。
「試合に出るメンバーを輝かせるし、裏方として自分も輝く。練習では相手のプレーを分析してコピーします」
太陽のように『照らす存在』としての務めを果たすと、自身の成長にもつながった。
「違うラグビーをする相手チームのプレーをコピーすることで、自分に足りないことが見つかりました」
サニーズになったからこそ、見えた景色があった。
ハドルでは、インカムで入った指示を選手に伝える役目を担った
それでも、今遠征を通して考えることも多かったという伊藤選手。
「スコットランド戦のメンバーに入れなかった、ということは足りない所もあるということ。でもウォーターとして、仲間の近くで見て聞けた。成長できました」
だから、10番をつけるブロンズマッチ。
「最後の試合、全てを出したいです」と、自らを輝かせる覚悟を語った。
今大会のテーマ
『自分のできることにフォーカスする』
メンバーに入れないこともあるだろう、ということは、これまでの遠征からも心構えていた。
だからこそ「自分のできることにフォーカスしようと思っていました」
求めたのは、スピードの強化。そして「裏のスペースがよく見えている(伊藤)龍之介のように周りを見ること」だという。
「僕と(伊藤)龍との一番の差は、コミュニケーション。どれだけ早く、計画して周りに伝えられるかどうかを考えながらプレーしました」
未来への誓い
『絶対に日本代表に入る』
絶対に日本代表に入りたい、とためらいなく、間髪入れずに答えた。
そのためにも大学1年次は、相手との間合いが深い所でのパス回しにフォーカスする。
それはできるようになった。だがスコットランドにやってきて、相手との距離が短い所でどう抜きにいくか、が必要だと学んだ。
「自分なりに考えがクリアになってきました」
SO 伊藤龍之介
10-46というスコアを前に、思う。
「たくさんトライを取られすぎたな。もっとこっちも点を取りたかったな」
ターゲットとしていたU20スコットランド代表戦。願っていた結果は訪れなかった。
試合の入りでバックスがミスをすると、ふだんであればやらないような選択やプレーが、増えてしまった。
ディフェンスで粘れていたからこそ、アタックで取り切れなかったことが、ゲームの流れを掴めないことに影響した。
「トライを一本でも取り切れていれば、きっと全然違ったかな、と思います」
大きく、重い経験をした。
相手がどのレベルであろうと、自分が練習してきたことを出せる遂行力。相手が強いからといってブレるようなスキルではなく、常に安定したプレーを出せるようになること、その練習が大事なのだと痛感する。
「いかに練習をリアルに、試合と同じ状況で取り組めるか。メンタルも含めて、大事なんだと感じています」
試合後、涙は流さなかった。
口を結び、誰よりも先にロッカールームへと戻った。
「悔しかったです。でもこれが僕にとっての終わりではない」
桜を背負うコンダクターとして。
次の仕事へと向かった。
今大会のテーマ
『試合ごとの成長』
チームも、そして自分自身も。
何か少しでも成長できる毎日を過ごしたかった。
「成長できていると思います」
未来への誓い
『持っている力を常に出し切れるプレイヤーに』
どんなプレッシャー下であっても、常に自分が持っているスキルを出せるプレイヤーになること。
そのためにも練習に対する取り組む姿勢、試合を想定した練習を大切にしたい。