きっかけはニュージーランド
今回参加した10名の中に、『ニュージーランド』に特別な想いを抱く選手がいた。
2名の経験談と、芽生えた夢を聞いた。
いつか、リーチジャパンの一員に
桐蔭学園高校2年・松田壱哉(まつだ いちや)選手。
ラグビーを愛する両親の下、10歳でラグビーを始めた。
記憶している人も多いのではなかろうか。
ラグビーワールドカップ2019で、初の決勝トーナメント進出を懸けたプール戦最終節・スコットランド戦を前に、当時日本代表主将を務めていたリーチマイケル選手が「個人的にはボコりたい」と発言したことを。
そしてスコットランド戦当日、選手入場時にエスコートキッズを務めた男の子から「ボコってください」との激励を受けたことを。
その「ボコってください」の発言者こそが、松田選手だった。
当時ラグビーを始めて1年半。小学6年生だった松田選手は『ニュージーランドに留学したい。ニュージーランドで成長して、いずれは日本代表になりたい』と熱い気持ちをしたためた応募文をきっかけに、日本人でたった1人のエスコートキッズに選ばれた。
あれから5年。
日本で一番基礎を学べる場所に身を置きたい、と進学したのは桐蔭学園高校。
「いつか、リーチさんが日本代表のヘッドコーチをするときに日本代表選手としてプレーしたい」と夢を見て、日々トレーニングに励んでいる。
現在の松田選手は、桐蔭学園高校ラグビー部で下のグレードに属する。
CチームやDチームを行ったり来たりの日々。だからこそ「自分が変わるチャンス」と、今回のGame on Englishへの参加を希望した。
「ニュージーランドに行く前と後とで、気持ちが変わりました。自分がやりたいことを伝えること、上のチームに上がりたいという気持ちを伝えられるようになった」と表情を明るくする。
手にした新たな価値観を大切に、桐蔭学園のファーストジャージーを目指す戦いは続いていく。
ピッチ上で対峙したハカに「嬉しかった」
「ラグビーを好きになったきっかけがオールブラックス」と話したのは、國學院栃木高校3年・田原壱格(たはら いっかく)選手。
「ラグビーワールドカップ2019の準決勝、ニュージーランド対イングランド戦。オールブラックスが格好良かった。ハカに憧れました」と、ラグビーに興味を抱いた。
だが実際にラグビーを始めたのは、それからしばらく経った中学3年の夏。
なかなか近くでラグビースクールが見つからず、本格的にラグビーを学んだのは國學院栃木高校に入学してからだった。
今夏、初めて訪れた憧れの地・ニュージーランド。歓迎のハカが出迎えてくれた。
ハミルトンボーイズ高校と行った練習試合前には、ピッチ上で相手のハカと対峙もした。観客席からではなく、自らに向かってくるハカを前に「嬉しかった」と表情を緩める。
現地の生徒たちからは、自分たちで時間を作り、ハカの自主練習をしていると聞いた。
自分だけではない。ニュージーランドで生まれ育った人たちも「オールブラックスに憧れてラグビーしているんだな」と感じられたことが、モチベーションの向上に繋がった。
田原選手は将来、建築の勉強をするため、海外の大学への進学を希望している。
そのためにも自身の英語力が現状どれほど通用するのか、またどれだけ上達するかを確認するため、今回参加を決意した。
「最初は英語が伝わらないことも多かったのですが、徐々に伝わるようになった。でも同時に、大学進学に向けて語彙力を増やしたいとも思いました。帰国後は単語の勉強をしています」
ラグビーが繋いだ夢。
憧れの地で、夢の解像度が一層高くなった。
Game On Englishとは
日本政府の掲げる「教育の国際化」とより良い未来のため、スポーツの価値とオリンピック・ムーブメントを広める取り組みである「Sport for Tomorrow」に応えるべく開発されたニュージーランド政府主催の教育事業。2014年7月にニュージーランド・オークランド市で開催された日本・ニュージーランド首脳会談において、両首脳はスポーツ分野における二国間協力の発展を歓迎し、日本開催の2019年ラグビーワールドカップ及び2020年オリンピック・パラリンピックの成功に向けて相互に協力する意思表明が行われたことを機に正式に発足した。
本プログラムでは、日本の青少年に英語の集中学習プログラムと専門的なスポーツ技能訓練の場を提供。ラグビー技能のみならず、環境保全先進国ニュージーランドのサステナビリティーへの取組み、文化・伝統・社会などを知る体験を通して、国際的感覚を持った人格形成を目指すことを目的としている。
フォンテラジャパンは、本プログラムによる高校生ラグビー選手のニュージーランド短期留学を2014年より支援。これまで85名の生徒が参加しており、武井日向氏(國學院栃木高校卒、現・リコーブラックラムズ東京)、原田衛氏(桐蔭学園高校卒、現・東芝ブレイブルーパス東京)ら多くのジャパンラグビーリーグワン所属選手を輩出している。
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送り出した両校ラグビー部の監督・コーチ陣。
國學院栃木・吉岡肇監督「本プログラム参加者から、日本代表もリーグワンのキャプテンも生まれている。人の人生を変える2週間」
桐蔭学園高校・福本剛コーチ「この2週間は、お金で買えない大事な時間」
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