伊奈学園高校 90 – 0 松山高校
ゴール前で押し切り、先制するは伊奈学園。
その後は倒れないバックス陣が細かくパスを繋ぎながら陣地を進めると、トライを量産した。
前半49-0、後半41-0。
最後まで手を緩めることのなかった伊奈学園が、2回戦へと勝ち進んだ。
最恐のチャレンジャー
「シード権が取れなかったので、チャレンジャーとしてこの大会挑んでいます。だからスローガンは『最恐のチャレンジャー』。どのチームからも対戦を嫌がられるようなチームを目指して準備してきました」と話すは、伊奈学園高校のフルバック・北川佳斗(きたがわ けいと)キャプテンだ。
この日は60分の試合時間を3分割し、20分ごとにテーマを設けた。
最初の20分間は、強いプレーをすること。
次の20分間は、次戦・深谷高校戦を見据え、難しいサインプレーにもチャレンジすること。
そして最後の20分間は、来年の新チームを見据えたバトンタッチの時間に。
「それがちゃんとできた」と、北川キャプテンは総評した。
2回戦で挑むは、Bシードの深谷高校。高校日本代表候補を擁する強豪校だ。
「相手の分析することはもちろんですが、まずは自分たちに自信を持たないと勝てません。次が本番、という気持ちで2週間準備していきたい」と眼光鋭く発した。
そして誓うは、感謝の気持ち。
「保護者の方々、グラウンドを準備してくれた進修館高校の方々、そして対戦相手の松山高校に、エールを送ってくれた松山高校應援團。いろんな人に支えてもらってはじめて、自分たちはラグビーをできています。感謝の気持ちをもって、次の試合に挑みます」
始まる者から、終わる者へのエール
50点以上の差がついた、後半中盤。
リードしている伊奈学園の選手が、仰向けに倒れた。
試合は中断され、グラウンド上で応急処置が行われる。
会場が少し静かになったその時、大きな声は響いた。
「がんばれがんばれ、イナガク!」
声の主は、松山高校應援團。
対戦相手への応援コールを、大きな声で届けた。
令和7年度の應援團長を務める三好琥太郎(みよし こたろう)さんは、その理由を語る。
「相手へのリスペクトです。自分たち應援團も、そしてラグビー部も相手のことをリスペクトしているので、その気持ちを表すために『頑張れイナガク』を行いました」
誰に言われたわけでもない。
自分たち自身で考え、相手チームに向けたコールを行う決断をした。
「自分たちは応援をさせてもらっている立場です。相手がいるから試合はできるし、応援もできます」
実は松山高校應援團は、その前の週に代替わりをしたばかり。この日が新生・應援團にとっての初舞台だった。
初陣が、戦況に合わせたコールを選ぶことの難しいラグビー応援。
苦労する姿も垣間見えたが、それでも試合後には、これが引退試合となった3年生選手たちから「ありがとう」と手を伸ばされ、表情をいくぶん緩めた。
「デビュー戦で、3年生の勇姿をこの目で見ることができて、本当に良かったです」
終わりと始まりが、交差する1日となった。