10月26日(土)、神奈川県・日産スタジアムで行われたリポビタンD チャレンジカップ2024 日本代表 vs オールブラックス(ニュージーランド代表)の一戦。
早稲田大学2年の矢崎由高選手は15番でフル出場を果たし、日本代表5キャップ目を獲得した。
後半27分。
13番ディラン・ライリー選手がラインブレイクすると、右サイドでパスを受けたのは矢崎選手。
タッチライン際をおよそ45m走り、よもや代表初トライか、と思われた。
しかしニュージーランド代表の司令塔、ダミアン・マッケンジー選手に追いつかれ、ゴールライン目前でボールを手放す。
試合後、そのワンシーンを問われた矢崎選手は、言葉を紡いだ。
「自分でも・・・もう一度映像を見て、どうすればよかったかと考えようと思うんですけど。やっぱり世界の壁は高かったというか。あそこで取りきれないのが、今の自分の現状なんだってすごい痛感したので。でも、終わってしまったことは。今からあそこがトライになるわけではないですし。これから前を向いて、もう一度レベルアップするしかないかな、って。次同じ状況が来た時には必ず取り切れるような選手になっていかないと、僕のジャパンで生きる道はないかなと思います」
冒頭の「自分でも」の後に、8秒の間を設けた。
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ふだんは質問主の意図を正しく理解し、間髪入れずに返答する矢崎選手。
この時は珍しく、8秒ほど考え込んだ。
生きる道。
日本代表5戦目にして、世界における自身の立ち位置を正しく認識した。
「スコアボードを見て、世界との差を感じた。自分がチームに与えられた影響が、すごい少なかったことに対する悔しさが巡ってきました」
質問が『この試合で通用したと感じたところ』に及ぶと、わずかに表情を緩め「その質問が来るだろうな、と思った」と答える。
だが再び表情を曇らせ、続けた。
「すごい難しくて。結局、そこでトライを取りきれなかったという部分でスピードが通用したと言い切れるのかどうかも怪しいですし、もちろんフィジカルは足元にも及ばないぐらいまだまだ課題があると思います。現時点で『ここが胸を張って通用した!』って言える部分は・・・ないわけじゃないですけど、少ないです。それが今の自分の現状ですし、これからの自分の伸びしろだと思っています」
所属する早稲田大学では、対抗戦真っ只中。2週間前にもアカクロを着てフル出場。1週間後にも、昨季王者・帝京大学との試合を控える。
だがそれは、決して言い訳にはならない。
日本代表に合流することは、前々から決まっていたこと。
この1戦に向けて、自らのマインドも準備をしていた。
だからこそ悔しさは募った。
エディー・ジョーンズHCは、試合後の記者会見で「ヤザキは今、ロッカールームで絶望しています」と言った。
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ジョーンズHCは言う。
感情のコントロールは教えられない。
経験値は教えられることではなく、積み重ねるものだ、と。
「今はまだアマチュアの選手だが、(次のワールドカップが行われる)2027年にはプロフェッショナルになっている。全く違ったプレイヤーに成長していると思う。もう少しでトライというシーンもあったが、マッケンジー選手もかなり警戒をして、全力で走ってこなければいけなかった。若い才能たちがこういった形でプレーできることは本当に素晴らしいことです。本人のエフォートに関しては、本人も誇りに思わなければならない、と思っています」
ニュージーランド代表がコンバージョンゴールを蹴り上げる時、全力でキックチャージに走り込んだ。
相手フランカーへ果敢にタックルへ入れば、会場も感嘆の声を上げた。
「ラグビーとはアティチュードが全て」(ジョーンズHC)
この後は、日本代表のヨーロッパ遠征には帯同せず、大学へ戻る矢崎選手。
果たしてどんな姿勢を、見せてくれるだろうか。