10月上旬。
東福岡高校のラグビー部室が立ち並ぶ一室に、152名の部員のうちの4分の1ほどが集められると、長いミーティングが行われた。
藤田雄一郎監督は、スクリーンに今季1年間の予定もとい『実績』が埋まったスケジュールを映し出す。
キックオフミーティングが行われたのは、1月15日。
古田学央・新キャプテンを筆頭に、目標を『日本一奪還』と定めたところから始まった。
1年間を4分割したそれぞれのブロックを、ステージと呼ぶ。
1-3月期は、ファーストステージ。苦しい幕開けだった。
全国選抜大会で目黒学院に敗れ、1回戦敗退。
のちにチームでは、この日のことを『3.23(サンテンニーサン)』と呼ぶようになる。もちろん、3月23日に起きたことに由来する。
全国選抜大会後は、体の強化期間に充てた。
午前中の3部練。いっぱいウエイトして、いっぱい当たって、いっぱい走って。
食事も摂り、まずは土台作りに励んだ。
セカンドステージでは「あと1本取ったら勝ってた」「あと1本取られなかったら勝ってた」が続く。
時折好ゲームもできるようになるが、しかしサニックスワールドユースでは御所実業に完敗を喫した。
そして5月末に行われた、全九州大会 福岡県予選準決勝。
今年が創部50周年と心技体揃う筑紫を相手に、前半をリードされ折り返す。
後半に巻き返し薄氷の勝利を収めたものの、藤田監督は「俺はこの時、負けろと思った」と語気を強めた。
6月には全九州大会で大分東明に完敗。
完敗、が重くのしかかる第2期を過ごした。
サードステージ。
夏の全国7人制大会。
ここでも、勝てなかった。
初めて予選リーグで全敗し、ボウルトーナメントへと回った。
8月の菅平合宿は、2勝3敗。うちラスト2戦は、大阪のチームを相手に完敗した。
だが、兆しが見えたのは9月終盤に行われた定期戦。
苦しい展開の中で勝ち切ったこと、それが伝統ある定期戦であったことに、意味があった。
そして、10月から始まったファイナルステージ。
皮切りを前に、藤田監督は改めて選手たちに問いかけた。
果たして、これで『日本一奪還』なぞ目指せるのか?
「まず目先を見よう。筑紫、甘くないって。小倉も甘くないって」
まず目の前をマネジメントしていく。目の前の相手に対して全力を注いでいく。
ついては花園予選の福岡県大会に100%で挑む覚悟を示した。
昨年までは、花園に出場することのできない3年生たちを県大会で起用することもあった東福岡。
だが今年は「そんなの全く関係ない」
思い出作りなんかしたくない。そんな余裕はない。
それぐらいの危機感をもってやって欲しい。
指揮官は、例年とは異なるパスウェイを示した。
そう、これは負けたら終わりのノックアウトステージなのだ。
「もがいて、花園の出場権を勝ち獲る。もがいてもがいて、まずは福岡県大会4戦をベストメンバーで戦って、花園の出場権を勝ち獲る。花園のことは考えなくていい。シードどうこうじゃない。まずはこの4戦を、ベストで戦う」
そして、最後に言った。
「ニセモノはグリーンジャージーを着なくていい」
東福岡で在るために、グラウンド外でも完璧を求めなければ足をすくわれると説いた。
それでも、培った東福岡のカルチャーがある。
東福岡の2024年を支えた、たどった道はしっかりと踏み固められている。
「あとはノックアウトステージで何試合できるか、や。『俺がいないと東福岡は勝てない』という選手は誰だ。今日から楽しみにしている。ここからはもう、振り返りができない。ここからは失敗もできない。ここから先は、負けたら即解散。1・2年生には来年がある。俺たちにも来年はある。3年生、なんのために東福岡に来たの。どれだけその気になるか。誰がファーストペンギンになるのか。そのためにも、ファイナルステージの良いスタートを切りましょう」
最後は3年生力。
3年生の底力がどこまで引っ張ってくれるか、と言い添えた。
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