全国高校ラグビー、通称”花園”で7度の全国優勝を誇る東福岡高校。
3月末に行われた第25回全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会では、第3回大会以来となる1回戦敗退を喫した。
東福岡、1回戦敗退。
衝撃的なその報は瞬く間に駆け巡り、3会場同時に行われていたそれぞれのグラウンドから、多くの記者が駆け付けた。
翌日行われたコンソレーション戦(1回戦で敗れたチーム同士が戦う試合)にも、敗者戦とは思えない異例の記者数が並ぶ。
試合後、各媒体の担当記者を前に、東福岡の藤田雄一郎監督は「ここがスタートラインです」と言葉を切り出した。
前回花園で全国優勝を果たしたのは、今年の3年生が1年生だった時。その決勝戦の舞台に立った15人全員が、当時の3年生だった。
2年次には準優勝。だが決勝戦のスターティングメンバーには、またしても当時の3年生が14人並んだ。
だから藤田監督は「2年間、選手たちには何もしてあげることができなかった」と話す。
「今年は僕の成績表」との言葉を繰り返した。
1回戦後に行われたミーティングでは、選手たちから「リスタートしたいと、もがいている姿」を感じ取った。
だから、伝える。
「良い過去になればいいね。過去は変えられるよ」
1回戦で敗れた直後の1枚
とはいえ一朝一夕に変わるものではない。
大会2日目にも、ラストパスが繋がらなかったりボールをこぼしたりと、簡単なミスが続いた。
「ベーシックスキルが足りていないです。やり続けないと」と藤田監督は言う。
「自分たちがやるか、やらないか。変わるか変わらないか。自分たちが、どう受け止めるか」
昨年の準優勝チームが繰り返し話した「ミスをしないことが一番の戦術」との言葉が、何倍もの意味を持った。
今季の主将は、No.8古田学央選手が務める。
わずか2日間で終わった初陣に「あっという間の選抜大会でした」と振り返った。
東京都出身の古田キャプテン。江東ラグビースクールから、東福岡へと進学した。
「東福岡でラグビーしたい、というのが昔からの憧れでした。他の高校の体験会にも参加しましたが、やっぱり東福岡が良かった」
キャプテンの任命理由について、藤田監督は「中学生を招いた体験会時に、東福岡の良い所と悪い所を的確に答えられていたから」だと説明した。
開会式では見事な選手宣誓を務め上げ、コンソレーションでは2トライを決めた
古田キャプテンは言う。
「東福岡で在り続けたい」
自身が憧れ入学した、東福岡を守り受け継ぎたい。
そのためには、フィジカルを強化しなければならない。
大前提として、ミスを減らすことも重要。
ベーシックスキルを磨く必要だってある。
モスグリーンのジャージーを着るならば「グリーンウォール」に東福岡らしさを求めたい。
同じく悔しさを滲ませたのは、今季センターからフランカーにコンバートした梁瀬拓斗選手。
「未来のフェニックスジュニアたちに、格好良い姿を見せられなかった」
格好良い先輩たちの姿に憧れて東福岡の門をくぐったのに、自身はその姿を体現することができなかったと唇を噛んだ。
それでも「まだあと、9カ月ある。マイナス30からのスタートが、ようやくゼロになった(藤田監督)」
挽回するチャンスは、いくらだって残されている。
東福岡高校はこれまで、花園通算94勝を誇る。
花園でシードを獲得できなければ1回戦から登場することになり、決勝戦含めると最大6試合を戦う算段だ。
「シードを期待せずに、6試合戦うつもりでいます。これまで94勝しているので、1回戦から決勝戦まで全て勝ったら、花園通算100勝になるんです。だから『おまえたちの代で100勝を取れ』と選手たちには伝えました(藤田監督)」
屈辱からはじまった1年。
憧れの東福岡を取り戻す『100勝目イヤー』が、スタートした。