早稲田実業
プレイスキック2本、そしてゴール前で得たペナルティでのタッチキック1本。
ボールを蹴り上げた山口滉太郎キャプテンの表情は冴えなかった。
「万全な状態で今日を迎えたのですが、自分の努力不足です」
いずれも、狙った軌道を描くことができず。
試合後、両陣の監督・キャプテンが揃った場面で、國學院久我山の土屋監督は「なんで今日に限ってミスするんだよ」と慮った。
自信を持っていたキック力。
加えて大きな舞台であればあるほど、実力以上のものがこれまでは発揮できていたという山口キャプテン。
しかしこの日は『いつもだったら』が通用せず。
自身への不甲斐なさに、言葉は何度も詰まった。
「大学のステージに上がって、この悔しさを絶対晴らしてやろう、と思うことができました」
早稲田大学ラグビー蹴球部の一員として。再び秩父宮ラグビー場に戻る覚悟をもった。
この日のゲームプランはシンプルだった。
最初の15分で仕掛けよう。
かたく入るのではなく、自分たちからチャレンジをしよう。
そして最初の15分でスコアを離したあとに、最後のダメ押し。
だが、思ったように進まないのが、またラグビー。
プランに沿った展開を生み出せなかった。
試合前、山口キャプテンが仲間に伝えた言葉がある。
「絶対、俺らはここで終わらないぞ。俺がチームを引っ張るから」
秩父宮ラグビー場で、アカクロジャージーを着る者として。
見せなければならぬ背中があった。
福岡県出身の山口キャプテン。
アカクロに憧れ、高校からワセダへ進む道を選んだ。
「憧れていたアカクロのジャージーを着てプレーすることができて、本当に嬉しいです。福岡の高校に進学するよりも、早実に来てプレーすることの方が絶対に良かった、判断は間違ってなかったと、この3年間で確信することができました」
限られた一部の選手しか着ることができない、アカクロジャージーをまとった3年間。
「早稲田実業でしか、こんなに成長できなかったんじゃないかな」
とめどなく溢れる悔しさは、これからの原動力。
あと4年、ワセダの道を歩む。