11月16日に行われた、第104回全国高等学校ラグビーフットボール大会 埼玉県予選決勝。
昌平高校は熊谷工業高校に45-12で勝利し、2年ぶり5回目の優勝を果たした。
これで同校史上初となる埼玉4冠を達成した昌平。
いま、それぞれが抱く想いとは。
昌平史上最強、とも称されるチームが、埼玉4冠を達成した。
今大会を無失点で勝ち上がることを目標に挑んだ、決勝戦。昌平は60分間で7つのトライを奪った。
1つ目は、キックオフボールを蹴り返そうとした熊谷工業のキッカーに対し、チャージに走り込んだことで掴んだチャンス。
敵陣5mでの左サイドスクラムからオープンサイドに開けば、15番・小林利仁選手が縦にボールを持ち込んだ。
ファーストアタックでファーストトライ。
幸先の良いスタートを切った。
2本目は、敵陣右サイドで13番・山口廉太選手がルーズボールを手にし、左のタッチラインまで届くような大きな弧を描き走り切る。
船戸彰監督曰く「セブンズのようなプレー」というランコースは、今夏、初めて全国大会でベスト8入りを果たした経験に裏付けされたものだった。
「仕掛ける場面やパススキルにランスキルが、(セブンズを経て)1段階2段階上がりました。この時は起点がラインアウトだったので、外側にいた選手がFWでミスマッチだった。ここは取り切りたい、という場面だったので、自分の強みを生かしたプレーができた」(山口選手)と喜ぶ。
前半9分にはラインアウトから6番・足立青龍選手が抜け出せば、3トライ目。
4つ目のトライは、スクラムでペナルティを獲得し掴んだ、敵陣深くでのラインアウトが起点。
フッカーの塙光陽選手が投げ入れたボールが10番・宮本和弥選手から15番・小林利仁選手へと渡り、自ら仕掛けるかと見せかけたところでクロスに入り込んできたのが、ここでもやはり13番・山口選手。
流れるような美しいグラウンドワークで、トライを奪った。
しかしBKのボール回しはいずれもサインプレーではなかったと、起点となったSO宮本選手は言う。
これまで培ってきた連携とコミュニケーション力が阿吽の呼吸となり、今大会随一の美しいトライを生み出した。
前半24分には、新人戦準々決勝以来となる被トライを浴びた。
それでもFW・BKそれぞれに分かれて言葉を交わし、落ち着きを取り戻すと、前半終了間際にはスタンドオフのポジションに入っていた15番・小林選手が蹴り上げたキックパスから、またしてもCTB山口選手がインゴールで押さえた。
最初の30分を山口選手のハットトリックで締めれば、33-7。
26点のリードで前半を折り返した。
後半も順調な滑り出しを見せた昌平陣。
5分、7番・井手昌孝選手が飛び込めば、40-7。さらにリードを広げた。
流れを掴んだかと思われた。
しかし後半8分、ルーズボールから失点すると、熊谷工業の時間帯はやってくる。
ペナルティやミスがかさみ、陣地を押し進められない。
この苦しい時間帯を振り返り、SO宮本選手は言った。
「前半で点差が開き、個々人がトライを取りに行こうと気が早まってしまって、アタックが機能しなくなった」
少しずつ歯車を狂わせたのは『トライを取りたい』という気持ちだった。
自分が前に、という意識からボールは外まで回らなくなり、アタックラインは浅くなる。
ディフェンス局面においても、早くボールを奪い返して落ち着きたいという意識から「ジャッカルに行きがち」になってしまったという。
だがジャッカルは成功せず、ディフェンダーが密集に寄ってしまったことでラインブレイクを許す場面もあったと反省の弁。
捨てるラックの判断を養うことが、花園までに求められそうだ。
それでも、試合終了間際には10番・宮本選手がトライで締めくくれば、45-12。
2年ぶり5回目の、埼玉チャンピオンに輝いた。
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花園予選に入り、「一つひとつの練習を大切に」をキーワードとして掲げた昌平。
ここからは、己との勝負。
全国大会が開幕する12月27日までの残された練習時間を、余すことなく成長へとつなげなければ、年越しの景色は見らぬまい。
「1ヵ月半、丁寧に練習をしたいと思います。怪我だけはしないように、またリハビリ中のメンバーが帰ってきた後の底上げも、丁寧にやっていきたいと思います」(山口選手)
目指すは、夏と同じベスト8以上。
昌平が、ファイナルチャレンジへと踏み出した。
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