ナンバーエイトで、エースで、キャプテン。|常翔学園

さかのぼること、2023年11月12日。

第103回全国高等学校ラグビーフットボール大会 大阪府予選決勝で東海大大阪仰星に敗れた常翔学園は、本大会への出場を逃した。

当時2年生ながら主力選手として出場していた井本章介選手は、試合後、止まらぬ涙を流し続けながら当時の3年生たちに誓った。

「絶対、花園に戻るから」

その後、新チームのキャプテンに就任した井本選手は宣言どおり、花園の舞台に戻った。そして常翔学園を全国ベスト4へと導く。

2年ぶりの花園出場にして準決勝進出を果たすと、昨年苦杯を喫し花園出場権を譲った相手・東海大大阪仰星と対戦した。

組み合わせが決まれば、昨年の3年生たちから連絡が入る。

「絶対リベンジしてくれよ」

気合いが入った。

だが、届かなかった3点。試合最終盤には連続トライで猛追したが、リベンジを果たすことはできなかった。

「ナンバーエイトで、エースで、キャプテン。だけど準決勝では1本もトライを取れなかった。チームを勝たせられなかったこと、ほんまに申し訳ないです」

試合後の挨拶を終えると、ひとり後ろを向き、悔しさと対峙した。

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1年時、花園初戦敗退。

2年時、花園出場ならず。

3年時、花園3勝。そしてベスト4。

井本キャプテンは「常翔学園としての成長を、今大会でめちゃくちゃ感じた」と口にする。

「部員103人全員の応援があったからこそ叶った3勝。103人のまとまり方は、過去2年間に比べてしっかりと成長できたと思います。優勝することは叶わなかったけど、どうやったら花園で勝てるのかということは後輩たちにもこれで伝わったと思う。あとはベスト4の壁を、後輩たちには超えて優勝して欲しいと思います。僕も、後輩に託します。今いる1・2年生が、絶対にリベンジしてくれると思う」

大阪府枚方市出身。

どれだけ苦しい場面でも、笑顔を絶やすことのなかった井本キャプテン。

近くて遠かった花園ラグビー場を常翔学園に取り戻した、強きキャプテン。

「チームメイトにはずっと『楽しめ』という言葉を掛けていました。『楽しめ』と言っている自分が楽しんでいなかったら、誰も楽しめないと思う。自分が一番楽しんでラグビーをしよう、と思っていました」

先輩たちから託されたように、この楽しさと悔しさは、後輩たちへと引き継ぐつもりだ。

「花園とは、自分たちが一番のびのびとラグビーできる場所。最高の場所でした」

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