恩返し
笠原優希選手。
2年連続、U18合同チーム東西対抗戦に出場した東軍のナンバーエイトは、手首に『恩返し』としたため試合に挑んだ。
令和5年度各都道府県の新人大会および各ブロック新人大会に、単独校で15人制試合に参加できなかった選手で、夏に開催された「KOBELCO CUP 2024 第20回U18全国高等学校ラグビーフットボール大会」に参加した選手の中から選出される。
群馬県にある渋川工業高校で3年間、ラグビーに打ち込んだ。
ボールを持てば必ず数メール前進してくれる強いボールキャリアー。何人ものディフェンダーを引きずる姿を、2度出場した真夏のKOBELCO CUPでも、否応なしに発揮した。
KOBELCO CUPが教えてくれたことがある。
少ない部員数だから、ラグビーができないということではない。
どんな環境でも見てくれる人はいるんだ。
そう。KOBELCO CUPとは「合同チームでも、夢を見られる大会」(笠原選手)
U18関東ブロックでキャプテンを務め、東西対抗では5番を背負った大塚北翔選手は「単独で戦えないチームでも、大舞台で戦える場所がある。全国どういった学校にとっても希望」と言った。
「感謝をしなきゃいけない人がたくさんいます。たくさんの人のおかげで、この場所に立てている。花園とは恩を返せる場所。恩を返すための目標地点でした」(大塚選手)
1月5日。
花園ラグビー場第1グラウンドに立った笠原選手の手首には『鋼のメンタル』と書かれたテーピングが巻かれていた。同部屋の森海秀選手(鶴来高校)が書いてくれたものだという。
逆の手首には『根性』と『恩返し』の言葉が並んだ。
「シブコーの監督には散々、面倒を見てもらいました。1人遅くまでウエイトトレーニングしていた時には、ご飯を炊いてくれました。とにかく恩返ししたかった」
この日、センタースクラムから奪ったトライは、渋川工業高校の必殺サインから生まれたもの。
「スクラムからのハチキューナナ(8番・9番・7番が順にボールを持つプレー)は、シブコーのサイン。昨日、渋川工業高校のラグビー部で顧問を務める岩崎先生と連絡をとっていたのですが、その時に『おまえはシブコーを背負っているんだ』と言われて。使わない手はないな、と思いました」
2年連続の花園。
強豪校の選手だって、そう簡単に2年連続出場を叶えることはできない場所で、しっかりと恩返しをした。