夏の合同練習
夏、東福岡高校と合同練習を行ったのは山形中央高校。
全国7人制大会時に、東福岡の選手たち数名が山形中央の宿舎に泊まった縁から、菅平での合同練習が実現した。
「高い強度の中、良い雰囲気で一緒に練習をさせてもらいました」と話したのは、山形中央のナンバーエイト・菊池駿キャプテン。
東福岡の監督・コーチ陣も一切手を抜かず、自チームの選手に接するように指導したのだという。
いくつかのスキル練習に取り組んだが、中でも一番勉強になったのはブレイクダウンだった。
「単純なナインシェイプでジャッカルされたり越えられたり、というブレイクダウンの弱さが自分たちの課題でした。でもブレイクダウンのスキル練習を一緒にやらせてもらったおかげで、サポートの寄りも早くなったしどの位置でどのようにオーバーにつけば剥がされにくいのか、テンポが上がるのかということを学ぶことができた。何よりも練習間に行われる一つひとつのトークで、ポイントを絞った話し合いができるようになりました。短い共有、からのスキル練習。学校に戻った後も、それまでとは空気が変わって練習できるようになりました」
選手たち自身で練習メニューを組む山形中央にとって、多くの学びと気付きを得た時間。
「メニューを組む際にも、本当に参考になりました。自分たちのモノにできたと思います」
山形中央は1回戦で東海大学付属静岡翔洋と戦い、シーソーゲームを演じたが、一歩及ばず17-21で涙をのんだ。
初めての決勝戦
埼玉県立熊谷工業高等学校。
埼玉県で唯一、全国高校ラグビー大会を制した歴史をもつ学校だ。
だが近年ではベスト4止まりが続く。
今季こそは、と誓い1年をスタートさせると、橋本大介監督体制になって初めて、決勝戦へと勝ち進んだ。
「俺らは今日のためだけに、ずーっと昌平戦だけを目指して準備してきました。準決勝から決勝までの1週間で大きく成長することはできないですが、1人ひとりの気持ちを追求してきました」
そう話したのは、小澤勇斗キャプテン。
今季埼玉県内無敗の昌平をなんとか仕留めよう、と気を吐いた。
しかしキックオフ早々、4つのトライを許す。
奮起したのは前半24分。ラインアウトから押し込みファーストトライを奪うと、後半8分にもバックスが追加トライを挙げた。
だが反撃叶わず、ノーサイド。
12-45で涙を呑んだ。
昌平は新人戦準々決勝以降、埼玉県内で奪われたトライはなかった。
だから熊谷工業が昌平から奪った2トライこそが、このチームが成長した証。
「意地の2トライでした。『このままじゃ、本当に終われない。こんなに情けない試合していいのか』と、声を掛けていて。そうしたら周りも気持ちが入ってきて、奪えた2トライだったと思います」
敗れはした。だが、誇りを得た。

初めて見た決勝戦の景色は、格別だった。
学校をあげての全校応援が呼びかけられ、多くの熊谷工業応援団が駆け付けた。
「OBの先輩たちも、ふだん学校で見る同級生の顔も、たくさんスタンドに見えました。心強かったです。熊谷工業を応援してくれている全員で戦っている気持ちになれました」
決勝戦にたどり着いたからこそ見ることのできた光景に、感謝した。
「つらい時には、周りを見たら一緒に辛い想いをしてくれる仲間がいました。楽しい雰囲気は、みんながそれぞれに作ってくれました。最後、仲間を勝たせてあげたかった。勝たせてあげられなかった。でも3年間、充実した日々でした」
This is 高校ラグビー
準決勝、桐蔭学園 対 國學院栃木戦の後だった。
「素晴らしい試合をした両チームに拍手を」のアナウンスが会場に流れると、ゴール裏でボールパーソンを務めていた地元の男子高校生は手を取り出し、あたたかな拍手を送った。
1月7日、決勝戦後のこと。
表彰式を終え、両校互いに思い思いの時間を過ごしていると、準優勝・東海大大阪仰星のバックスタンド応援席から突如歌声が響く。
♪俺たちが~ ついてるさ仰星~ 伝えたい この想い 愛してる仰星~♪
『愛してる仰星』の応援歌を、ジャージーを着て戦ってくれた仲間に届けた。
ジャージーをまとう者たちは、涙ながらに手を伸ばし、スタンドの仲間と手を合わせた。
桐蔭学園スタンドもまた、後を追うように『We Are TOIN』を優勝メンバーへ届けた。
この曲は、第103回大会優勝時に、ノンメンバーたちが作った新曲。
そう、高校ラグビーとは継承の積み重ね。
今年もまた、新たな継承の1年が始まる。