國學院栃木の初優勝で幕を閉じた第12回全国高等学校7人制ラグビーフットボール大会。
印象的だったチームは多くある。
優勝経験校・東海大大阪仰星をあと一歩まで追い詰めた初出場の立命館慶祥に、11大会連続のカップトーナメント進出を果たした報徳学園。
仙台育英と同点で試合を終えるも、抽選の結果次戦へと駒を進め、続くカップトーナメント5位決定戦では京都工学院から逆転勝ちを収めた天理。
多くの戦いの中から、印象に残った選手の姿を記録に残したい。
家登正宜(國學院栃木)
國學院栃木初優勝の裏に、欠かせなかった選手がいる。
家登正宜選手、3年生。
準決勝・桐蔭学園戦では、先制トライ。
決勝戦でも4ゴールを沈め、スコアでリードをを保ち続けることに一役買った。
どこか決定的なワンシーンがあったわけではない。
だがずっと安定して、高い水準でラグビーをし続けた。
ピンチの時には顔を出し、ディフェンスに全力。アタックでも好機を逃すことはなかった。
安定感の高い選手。
この言葉が、今大会で最も似合う選手だった。
写真左が家登選手。右は手塚慈英選手。ともに関東大会から活躍し続けている
栁隼十(土佐塾)
最も記憶に残った選手を1人挙げるならば、土佐塾の栁隼十選手を選出したい。
168㎝、62㎏と小柄な2年生だ。
土佐塾は高知県にある中高一貫の進学校。高校から入学する生徒もいるというが、多くは中学から土佐塾に通う。
現在の部員数は23名で、今大会にはセブンズのメンバー入りしているか否かに関わらず「全員連れてきました」と西村保久監督は言った。
栁選手もまた、中学から土佐塾に通う。
しなやかな身のこなしで、全国の猛者をタッチライン際でするりと交わしながらボールをトライゾーンまで何度も運ぶ姿はいかようにもワクワクした。
ボールを持てば、次はどんなプレーを見せてくれるのだろうかと心躍る。
今大会、最も『ボールを持って欲しい』と願った選手の1人だった。
荒木奨陽(中部大春日丘)
3月。全国高校選抜大会で2回戦敗退。
経験豊富な3年生が主力の中部大春日丘に寄せられた期待は、少なくなかった。
5月。SH荒木奨陽選手は高校生で唯一、U20日本代表に選出された。
NZUからの逆転勝利に貢献し、金星を掴んだ。
7月。全国高校7人制大会では、桐蔭学園、尾道と予選プール同組に。最激戦区を戦い、キャプテンとしてチームを牽引した。
惜しくも6点、桐蔭学園に届かず2位トーナメントへと回ったが、4試合を勝ち切りプレートトーナメント優勝を果たす。
早稲田実業との決勝戦は、22-21となんと1点差。後半7分にトライとコンバージョンゴールを沈め、逆転に成功した。
ノーサイドの笛が吹かれた瞬間、右手を天に掲げた荒木選手。
ひとつ、チームとして殻を破った握り拳だった。