3点がもたらした焦り|女子
1トライ。いや、たった3点が、あまりにも遠かった。
決勝の相手は九州ブロック。関東ブロックは前半から敵陣に張り付き、何度もトライライン目前まで攻め込んだ。
しかし、最後の一歩が届かない。ペナルティゴールの3点のみを許し、自らは無得点。最終スコアは0-3。互いにノートライで終えた、静かで激しいファイナルだった。
「経験の差が出たな、と思います」
そう語ったのは梅原洸監督。
関東の選手たちはセブンズを主軸に活動する学校が多く、一方で九州勢は15人制を主戦場とするチームの集まり。その違いは、接点での強度に現れた。
「接点のところで前に出られないシーンが続いていました」
“慣れ”や“経験”の部分で、九州の方が一枚上手だった一戦を振り返った。
それでも、短期間のうちにここまで仕上げられたことは「財産」だとも言う。
本気で日本一を目指し、本気で取り組み、だけれども届かなかった3点。
「合同チームなのに、負けて泣けるっていいじゃないですか」
敵陣22mで迎えた、ノーサイドの笛。
選手は次々と膝をつき、目を覆い、抱き合った。
印象的なワンシーンを切り取るとすれば、ラストチャンスを呼び寄せた後半10分過ぎのディフェンスだろう。
自陣でスティールを成功させた、キャプテンの伊藤ちひろ選手(関東学院六浦3年)。「キタ、と思いました」と笑顔で、だが泣き腫らした目で振り返った。
梅原監督も頷く。
「そういう時に、(伊藤キャプテンは)ちゃんと責任を果たすんです。彼女は圧倒的にディフェンスが安定しているので、外せません。世代で一番のディフェンスをします」と全幅の信頼を寄せた。
そこから始まったファイナルアタック。ボールを繋ぎ、敵陣深くまで攻め込んだ。だが、トライラインには届かなかった。
「ずっと敵陣でプレーしていたのに、自陣に入られた瞬間のペナルティでペナルティゴールの3点を取られました。でもこの3点、すごい大きいなと思います。相手はきっと、この3点で落ち着いてプレーしてきたし、私たちはこの3点で焦ってプレーしてしまいました。このちょっとした差でどんどん時間が削れていって、0-3という結果で終わってしまいました」
「絶対に日本一になりたい」
大会前も、大会中も、なんどもその気持ちを口にしていた伊藤キャプテン。
だが届かなかった3点が、スコアボードの0点が、きっと伊藤キャプテンを更なる成長へと導く。
高校生で、10番で、キャプテン。
戦い進める道には、必ず側に、ともに戦う仲間がいることも知った。
「(セブンズでは)ずっと勝ち続けてきました。でもコベルコカップでは、ずっと負け続けてきました。この負けた経験は、すごく大きいと思っています。負けたからこそ、もう一回追いかける側になれるし、追いかけられる側よりも追う側の方がパワーはあると思っています。15人制のこの悔しさをセブンズに置き換えて、セブンズでも追う側としてもう一回、全国で戦っていきます」
大会の2日後には、セブンズの大会が始まる。
通常15人制と7人制の切り替えには3週間を要すると言われるが、女子カテゴリーの選手たちは難なく、一つの文句も言わずに次の目標へと突き進む。
そんな強さが、彼女たちの美しさだ。
