東京都 36-21 茨城県
前半7分、12番・田代幸大選手(茗溪学園3年)のトライ&コンバージョンゴールで7点を先制した茨城県。
しかし東京都はその後、3番・岩崎壮志選手(早稲田実業3年)や4番・吉澤輝選手(國學院久我山3年)ら、昨年の国スポ準優勝メンバーがトライを重ねると、スコアで上回る。
東京都が5トライ、茨城県も3トライと粘ったが再逆転ならず、36-21で東京都が決勝戦へと駒を進めた。
受け継いだ東京魂
ペナルティを獲得すれば、ポジションも学校も関係なく、みながそれぞれに手を合わせた。
誰かに言われたわけではない。
さも当たり前のように、笑顔で、あたたかな表情で手を伸ばした。
今年のオール東京のスローガンは『魂』。
昨年、国スポで準優勝を果たした時にも『ウルトラソウル』と笑顔で口にしていた、その精神を受け継いだ。
「昨年、オール東京としてすごく良いチームを作れた。それをしっかり継続していきたいという思いで、昨年からの繋がりを意識した言葉をスローガンにしました」
そう話したのは、今年から同チームのヘッドコーチを務める倉上俊氏(目黒学院)だ。
目黒学院、國學院久我山、早稲田実業、明大中野、東京に成城学園。
6校の精鋭たちからなる今年のオール東京をまとめるは、國學院久我山の宮下隼選手。1年時からセレクションに参加し、2年時には本大会出場。そしてこの夏、3年生となりキャプテンの重責を担った。
「今までのオール東京が大切にしてきたことを、受け継ぎたい。『前に出る楽しいディフェンス』を、今年らしく表現したいです」
オール東京のセレクションは、69人から始まった。
50人、35人と絞られ、最終登録23人が発表されたのは、大会前日8月20日のこと。
その選考から漏れた選手たちも、最後まで戦友だった。
「『俺たちならやれる』って、みんな言ってくれました」
宮下キャプテンの背には、チームメイトだけでなく、東京の高校ラグビーを背負う覚悟が宿る。
「だからこそ結果を出して、もう一度全員で、東京で集まりたい。いま僕たちは、東京の高校生の想いを代表してラグビーをしています」
ワンチーム。
言葉にすれば単純だ。けれど、それを実現するには努力と信頼が欠かせない。
「このメンバーでやるラグビーの一瞬一瞬が楽しいです。限られた時間しか、このメンバーでラグビーはできないので。だからこそ、楽しむことを一番大事にしています」
東京を代表して闘う、そのプライドと覚悟を胸に。
決勝戦。魂のディフェンスで、関東ブロック代表の座を掴み獲る。
成長の夏
19点のビハインドで迎えた、後半11分。
15番・奥田創選手(茗溪学園2年)のトライで12点差に詰めると、茨城県のハドルから「畳みかけようぜ!」と声が飛んだ。
続くモールディフェンスで、その気持ちを示す。相手のモールを止め、パイルアップを誘った。
決して諦めない姿勢。
その気持ちが養われたのは、今年の夏のことだった。
23人中21人が茗溪学園の選手で構成された、今年のオール茨城。大半を占めた茗溪学園の選手たちは、自チームが行った菅平合宿初日の東福岡戦で勝利し、大きな自信を手にした。
「絶対100%で」と挑んだAチームが勝利したことで、AチームからCチームまでの選手それぞれに「俺らでもできるんだ」という気持ちが芽生えたという。
「全カテゴリーで、大きく成長できた夏になりました」
茗溪学園で、そしてオール茨城でもキャプテンを務める2番・山田朔太選手は、嬉しそうに言った。
その成果が表れた、今大会。
東洋大牛久、清真学園からそれぞれ1名ずつがFWに加わったコンバインドチームだったため、ディフェンスシステムに難しさもあったというが、それでも「タックル、セットピースは2人ともすごく頑張ってくれた。茨城県として試合ができた」と誇りを持つ。
勝利が成長に繋がり、チャレンジが肥やしとなったこの夏。
巡る季節は、これから秋へと向かう。
「残り5か月でやるべきことは明確になってきました。マインドもプレーも成長したし、上に上がっていく気持ちもみんなに培われた。これからまた、みんなで切磋琢磨していきます」
得点力を磨く秋に挑む。
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