『浦和工業』ラストゲームに、意地で繋いだ単独出場。「待ち望んだ1勝」と魂の音。埼玉県の花園予選が始まる|第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会埼玉県予選 1回戦

西武文理 10-19 松山

西武文理:青白ジャージー、松山:紫ジャージー

昨年の新人戦の頃から、何度か合同練習を行っていたという西武文理と松山。

しかし4月以降はスケジュールが合わず、手合わせできていなかった。

「戦いたいね」と両監督が話していたところ、なんと今大会、1回戦での対戦が決まったという。

先行したのは西武文理だった。

2トライを奪い、10-7。3点のリードで前半を折り返した。

しかし後半、そのエネルギーを得点に結びつけたのは松山だった。

モールでダメ押しのトライを決めると、喜びを表した松山フィフティーン。

ノーサイドの笛が吹かれた時には、互いに出し切った表情を見せた。

魂の音|西武文理

西武文理は最後まで『魂』をぶつけ続けた。

率いる飯塚淳平監督は言う。

「簡単に勝たせてくれる相手じゃないことは分かっていた。だからこそ、魂のぶつかり合いになると予想していました。魂の音が、60分間ずっとしていました」

試合はまさにその通りの展開となった。

押し込んでも取りきれない。攻め続けても一瞬の綻びから逆転を許す。

それでも選手たちは気持ちを切らさなかった。

「60分を通じて、これがラグビーだという浮き沈みを経験しました。攻めているだけじゃ勝てない。気持ちを切らさない強さが相手にはありました。ラグビーをやっているプライド、というか。僕たちにはまだ足りなかった部分だけど、学ぶものは大きかったと思います」

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チームをまとめたキャプテンは、スクラムハーフの渡邊堅斗選手。

試合後、ひとしきりの涙を流し終えた胸には、仲間への感謝が溢れた。

「自分はラグビー経験者だったので、みんなを引っ張らなきゃという気持ちで厳しく当たってしまったこともありました。でもみんなが文句を言わずについてきてくれて。最後には自分が何も言わなくても動けるようになってくれた。キャプテンとして、本当に嬉しかったです」

4歳でラグビーを始め、西武文理小学校、中学校を経て同高校に進んだ。

仲間とともに歩んだ3年間は、ただの部活動ではなく、人生の大切な一部にもなった。

「このラグビー部が自分の誇りです。だから昨日のジャージープレゼンテーションでは『今までついてきてくれてありがとう』と伝えました。仲間は一生の宝物です」

勝負の世界。否が応でも、白と黒が分かれる世界。

それでも勝者と敗者を分かつまでに培った悔しさや誇り、何より仲間と積み重ねた日々は、年月を経てその学校独自の『文化』として継承されていく。

「後輩たちには、もっと試合を楽しめるような練習をして欲しいです。なによりもまずは楽しんで、そして大切にしている品位を心掛けて、ラグビーをしてほしいなと思います」(渡邊キャプテン)

西武文理の文化は、まだ築き始められたばかりだ。

初めての1勝。待ち望んでいた勝利|松山

「花園予選で1回勝つって、もう言葉にならないです。待ち望んでいた勝利。みんなで出し切ったからこそ勝てたと思います」

松山高校ラグビー部の現役選手たちにとっては、これが花園予選初勝利。

率いる江原颯太キャプテンは、その喜びを口にした。

選手たちのほとんどは、高校からラグビーを始めた。

現在の3年生は1年の冬、2年の冬と合同チームでの活動を経験。

公式戦での勝利から遠ざかる日々も長かったが、それでも仲間と声を掛け合いながら練習を積み重ねてきた。

だからこそ、手にした1勝に喜びは溢れる。

「フォワードで団結して、ゴール前で押し切ったり、モールで押し切ったり。そこで一気にトライを取って、チームに流れを持ってこれたことが大きかったです」

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後半の立ち上がりには相手に押し込まれる場面もあった。

だが全員で声を掛け合い、守り切った。その瞬間から流れは松山に傾いた。敵陣に釘づけにするような時間帯が続き、チームはひとつ、大きな成長を遂げた。

「松高は流れが下がると、どん底まで行ってしまうチームなんです。だからこそ、みんなで盛り上げよう、士気を上げようと声を掛け合いました」

江原キャプテンは、仲間の士気を引き上げ、ムードを変える中心的な存在となった。

長く勝てなかったチームが掴んだ、久しぶりの勝利。

江原キャプテンは、自身初めての『花園予選2試合目』に向け「改善しなきゃいけないところはたくさんある。次の試合に向けてしっかり所沢北高校に挑みたい」と強い眼差しで次戦を見据えた。

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