9月13日に開幕した関東大学ラグビー リーグ戦1部。
15日には熊谷スポーツ文化公園ラグビー場で関東学院大学と大東文化大学の一戦が行われ、関東学院大学が55-35で開幕節勝利を手にした。



関東学院大学
「今年のチームでは、負ける気持ちが全くなかった。むしろ試合が待ち遠しくて、みんな試合に飢えていました」
前年度最下位からの挑戦。前年度優勝校を打ち破った直後、安藤悠樹・共同キャプテンが最初に口にしたのは『自信』だった。
試合は、FWが接点で押し込み、BKがエリアを広げる。序盤から主導権を握った関東学院が、ひとつにまとまった力で相手を押し切った。
「今日はみんながバラバラじゃなく、一つの方向を向いていた。絶対に勝とう、という思いで繋がっていました。負けるとか、ネガティブな発言は誰からも出なかった。本当にキャプテンとして誇らしい一日になりました」
その結束力の背景には、日々の鍛錬がある。
今年はBチームの実力が高く、「なんなら部内戦でAチームがBに負けることも結構ある」というほど。1年で最も多く対戦する相手が、Aチームと同等以上の力を持つという環境は、選手たちにとって何よりのモチベーションだった。
「今日のスコア力は、そういうことの積み重ねです」
グラウンドに立つ15人だけではない。控えの選手、スタンドから声を張る仲間、そのすべてが「カントーのラグビー」を形作った。
1年時から公式戦の舞台を踏んできた安藤キャプテン。歩みを重ねてきたチームへの想いは強い。
「毎年、先輩たちが残してくれたものがあって、そこに積み上げを加えてきた。今日の試合では、1年生の頃から積み上げてきたものが出せたと感じます」
だからこそ、この一勝には特別な意味があった。
「絶対に勝てる、という気持ちは、結果に表れるなと思いました。今日はみんなが一つの方向を向いて、『絶対勝てる』『今日勝ったら、カントーがもう一回変わるから』と燃えていた。それが勝利に繋がったと思います」
偶然ではなく、必然だったアップセット。安藤キャプテンは「間違いなく何かが変わった一勝になった」と声を弾ませた。
次戦は好守ともにバランスのとれた東洋大学との対戦が待っている。だが、キャプテンとして動じない。
「新しいことをするのではなく、積み重ねてきたものの質を高めたい」。その眼差しは、すでに次の戦いへと向かっていた。
2人でずっと
下級生の頃から「強いカントーを取り戻したい」と公言し続けてきたのは、もう1人の共同キャプテン、ラリー・ティポアイールーテル選手。
この日の勝利を、その「第一歩」と喜んだ。
ファーストトライを奪うと、雄叫びを挙げたティポアイールーテル主将。しかし時間が進むにつれ、声高に叫ぶ姿はなくなった。
それどころか、トライを取ったとしても両手で「落ち着け」と仲間に合図を送る姿まで見られるように。
その理由について、こう語る。
「ファーストパンチを決めよう、と試合前みんなすごい緊張していて。だから最初は、チームを盛り上げました。だけどみんなが盛り上がってきたら、逆に落ち着いて、我慢してプレーした方がいいと思って」
チームの雰囲気を、キャプテンとしてコントロールしたのだ。
それでも、ノーサイドの笛を迎えると安藤共同キャプテンと長く、何度も抱き合った。
「1年生の頃からずっと一緒に試合をしてきた。関東学院を復活させるなら今年、という気持ちがあるし、ラストイヤーで後悔したくない。 今年は寮でも、2人でずっと話しています」
2人の熱きキャプテンが率いる関東学院。飛躍を遂げるか。
初挑戦
この日司令塔を託されたのは、星遥大選手。
もともとは15番を務めていたが、「リーグワンを目指す自分にとって、15番だけでなく10番としてのスキルも必要だと思った」とポジション変更にチャレンジした。
本格的な挑戦は、今春から。パスにキック、ゲームコントロール。すべてが一からの学びであり、試行錯誤の連続。「最初は本当に何もわからなくて。全部が、何一つダメでした」と苦笑する。
手応えを掴んだのは、本格的な夏が訪れる少し前。自身のプレーがチームに機能する感覚を得られたという。
「そこから少しずつ自信がついてきました。でも同時に新しい課題も見えて・・・夏を通して、また成長できたと思います」
一歩進めば、次の壁が現れる。そんな繰り返しが、成長を促した。
迎えた開幕戦。自身初となるプレイヤー・オブ・ザ・マッチを獲得する活躍で、勝利に大きく貢献した。
それでも自らのキックミスがピンチにつながったことは課題だと、伸びしろを口にする。
「全然まだまだだな、って。帰ってからまたキックの練習をしないと、と強く思いました」
勝利に貢献できた充実感。同時に、グラウンドに立つ責任を再確認する試合となった。

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