大東文化大学
スコアボードに残った悔しさ。
昨季7年ぶりにリーグ戦を制した大東文化大学は、今季初戦を白星で飾ることはできなかった。
伊藤和樹キャプテンは、試合の立ち上がりを振り返って「初戦ということもあって硬さが出た。ミスも出た」と口にした。
思うように流れをつかめなかった80分。
それでも「(気持ちが)落ちずにプレーできた。大東としてワンチームになれた」と前を向くには理由がある。
実は今季、大東文化にはこれまで勝ち星がない。
春季大会だけでなく、夏の菅平合宿でも。練習試合を含めても未だ、勝ちゲームを手にできていない。
その『勝利の経験値』の少なさが、開幕戦に点差として表れる。試合終盤、10点差まで迫ったものの逆転ならず。逆にスコアを離され、20点差で終わったことに象徴する。
「5点差までいったらもっと(気持ちやプレーを)上げられたと思うのですが、そこで17点差に離されてしまいました」と話す伊藤キャプテン。
10点差から5点差に、さらには同点、そして逆転へと結びつけた経験の少なさが、開幕戦にマインドとして表れたという。
勝利から遠ざかって久しいチーム。試合を終えた酒井宏之監督は、ポジティブな言葉を探した。
「今日はもっと崩れてもおかしくなかったですが、4年生たちが頑張ってくれた。これまでも春、点差が離れたことがありましたが、切り替えて良い練習を続けてくれていました。できたこと、できなかったことをしっかりと次の練習に繋げてくれています」
下を向かずに歩を進めてきたことに、労いの言葉をかけた。
しかし戦う場はリーグ戦1部。4年生にとっては、大学生活の全てを捧げる舞台。
酒井監督が「リーグ戦は何が起こるか分からない。諦めた時点で終わってしまうので、(この試合を)再来週の日大戦に繋げたい」と粘り強く戦う姿勢を見せれば、伊藤キャプテンもまた「負けることが当たり前、みたいになっているところを自分たち4年生がしっかりと変えて、リーダー陣が中心となって一から作り上げることが大切」と気持ちを込める。
戦いは、まだまだ始まったばかり。痛みを力に変え、前へと進む。
デビュー戦
これがリーグ戦デビューとなったのは、飯塚祐真選手。スタンドオフとして、背番号10を背負った。
「正直、何もできなかった。緊張して、やばかったです」
悔しさと、一方では試合を終えた安堵感が入り混じる表情で振り返った。
埼玉県は深谷高校出身。かねてより立ち続けてきた熊谷ラグビー場Aグラウンドだったが、これまでとは異なる「重み」を感じた1日だった。
リーグ戦1部の、ディフェンディングチャンピオンとして。
「最初はすごくプレッシャーがありました」と言った。
先発を告げられたのは試合の週のことだった。夏にはセンターとして出場する場面もあったが、基本ポジションはスタンドオフ。夏の菅平合宿で何本も50:22を決めたそのエリアマネジメントが評価され、スターティングメンバーの座を任された。
大きな一歩として掴んだリーグ戦デビュー。さらには先発スタンドオフとしてのリーグ戦デビューは、間違いなく大きな一歩目。
だが正直に言えば、ゲームの中では満足のいくプレーばかりではなかった。前半は風下だったためキックも思うように飛ばせず、不完全燃焼であったことは否めない。
それでもディフェンス面では手応えも、明確な課題も感じることができた。
「緊張もあったけれど、これが自分の最初の一歩。ここからです」
結果に満足はしていない。だが、歩みを進めるための扉は、確かに開いた。
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