【準々決勝】生まれ変わっても、ラグビーがしたい。|第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会埼玉県予選

8月31日に幕を開けた第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会 埼玉県予選。

記念大会となる今年は、埼玉県から2校が全国大会へと出場するため、トーナメントは2つの山に分かれて進行している。

9月28日(日)、熊谷ラグビー場のCグラウンドと西グラウンドでは準々決勝8試合が行われ、準決勝へ進む8チームが出そろった。

準決勝は11月8日(日)に熊谷ラグビー場Bで行われる。

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昌平 80-0 春日部

昌平:緑ジャージー、春日部:エンジジャージー

大会2連覇、そして今季県内4冠を目指す昌平が、初戦を完封勝利で船出した。

その先頭に立ったのは、この日ゲームキャプテンを任されたSH近松哲仁選手だ。

「花園連続出場がかかっているので、これまで貢献してくれた先輩たちの気持ちも背負ってピッチに立ちました。今季4冠に向けて、チーム一丸となる気持ちで挑みました」

言葉には、3年目の責任感がにじむ。

準々決勝の舞台に立ったのは、スターティングメンバー入りを目指す選手たち。

近松選手自身もまた、Aチームに食い込もうと必死だ。

「今日はスタメンで出るチャンスをもらったので、期待に応えられるよう、もっと練習でアピールしてAチームに定着したい」と声を強めた。

昌平は今夏の合宿では「ミスをなくすこと、盛り上げること」をテーマに掲げトレーニングに励んだ。

この日も細かなミスは出たが、それでも全員で立て直し、最後まで声を掛け合い続けた。結果は0点に抑える完封勝利。

「みんなでリカバリーできたことが収穫。夏の成果が形になった」と振り返り、表情には手応えが浮かんだ。

迎える、最上級生として最後の花園予選。兄も妹もラグビーに打ち込む『ラグビー一家』で育った近松選手は、決意を口にする。

「応援してくれるみんなのためにも、最後までやりきりたい」

瞳の奥に、仲間と共に駆け抜ける覚悟を宿した。

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深谷 52-7 早大本庄

深谷:青ジャージー、早大本庄:アカクロジャージー

試合序盤に深谷が先制し、続くキックオフ。

早大本庄が攻撃権を得て敵陣22m内に入り込むものの、仕留め切ることに苦戦した。フェーズを重ねるが、なかなかラインブレイクできない。

するとトライラインを背負った守備でスティールを決めたのは深谷だった。

ディフェンスで勢いを得れば、一気に敵陣へと入り込み、ラインアウトからモールトライ。難しい角度からのコンバージョンも成功させ、スコアを広げた。

その後も、深谷の深谷のプライドを感じさせるプレーが続いた。

スクラムハーフはラックサイドを突いて前進し、サポートも素早く駆けつけ好機を逃さない。

バックス陣はスペースを突くだけでなく、自ら仕掛けて果敢に突破を試みた。

昨年は9月に代替わりを迎え、悔しさを味わった深谷。その思いをグラウンドいっぱいにぶつけた結果、スコアは52-7。

ノーシードの深谷が、Bシードの早大本庄を撃破し、準決勝への切符を手にした。

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熊谷 55-0 立教新座

熊谷:黒ジャージー、立教新座:白ジャージー

熊谷

「全員が落ち着いてプレーできたことが大きかった。夏を越えて成長した部分を出せたし、勝ち切れたことが一番の収穫です」

準々決勝を振り返ると、熊谷高校No.8鯨井蒼キャプテンはチームの成長を口にした。

1週間前に行われた2回戦では、試合終盤に1トライを許した。しかしこの日は最後まで相手をノートライに抑え切り、その手応えを語る。

「相手が『最後の試合』という覚悟を持って挑んでくるのは、先週の経験で分かっていました。だからこそ先に対応して、落ち着いて戦えたことが勝因だと思います」

横田典之監督も「全員が堅実にプレーし、無失点で終えられたのは大きな成長。夏を越えて歯車がかみ合い始めた証拠」とチームの進化を認めた。

準決勝の相手は本庄第一。関東大会予選ではわずか5点届かず涙をのんだ因縁の相手であり、リベンジへの思いは強い。

「次の準決勝・本庄第一戦が勝負。この1ヵ月間で成長できる計画はあるので、予定通りやり切って最後の仕上げをしたい」と横田監督。

鯨井キャプテンも「ここから1ヵ月でどのチームよりも成長したい。相手も決まったので、全員で照準を合わせて取り組みたい」と力強く語った。

下級生の台頭やオール埼玉での代表活動を経て、力をつけた選手たちの存在が、戦力の厚みとなって表れている熊谷。

3年生にとっては、高校生活最後の秋。熊谷の挑戦は、11月へと向かう。

立教新座

HO木村陽器キャプテンは試合後、その表情に3年間の歩みをにじませた。

「2回戦・伊奈学園戦を僅差で勝ち上がってからの1週間は、細かい部分を徹底的に磨き直しました。主にはハンドリングやブレイクダウンです。難しいことはせず、これまで積み重ねてきたことをやり続ける練習をしました。トライを取り切ることはできませんでしたが、ベースとなるディフェンスやハンドリングを遂行できたことは成果だと思います」

チームの成長を称える言葉だった。

木村キャプテンがラグビーを始めたのは、小学2年生の頃。練馬ラグビースクールで楕円球を握った。

兄は桐蔭学園高校から東京学芸大学へと進んだが、自身は立教新座を選ぶ。

「立教大学でラグビーをしたかった」

立教新座のOBが対抗戦Aグループという舞台で活躍する姿を見て、自分もここで挑みたいと確信したのだという。

しかしそう甘くなかった高校生活。勝てない試合も多く、悔しい思いをすることだって少なくなかった。

それでも「同期や元気な後輩たちに支えられて乗り切れた3年間。ラグビーは人と人を繋げる素晴らしいスポーツだと強く感じました」と振り返る。

その最たる思い出は、2回戦・伊奈学園戦を終えた後のチームの雰囲気に表れた。

それまでは仲間と意見が割れることもあったというが、ひとつの勝利を手にした瞬間「細かいことはどうでもよくなって、みんなで仲良く元気になれた」と笑う。

勝利が生み出す力を、仲間と分かち合うこと。それが立教新座で手にした、唯一無二の経験だった。

今年のスローガンは『With a Will』。主将・副将で議論を重ね、決めた言葉が、今年の選手たちを支えた。

「立教新座が勝てない理由は、自主性と自立の精神が足りないことだと下級生の時に感じていました。だからこそ、一人ひとりがチームに貢献する意識を持ってほしいと考え、『With a Will』の下で今年は活動してきた。みんなある程度は自主自立の精神を持てるようになったと思います。

だからこれからは『勝ちに貪欲』であってほしい。もちろん敗戦も大事な経験ですが、これからは細かいミスにも厳しく向き合い、勝つことにこだわって、より強いチームを築いていってほしいと思います」

後輩たちに、進化を託した。

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合同D 0-97 本庄第一

合同D:緑ジャージー、本庄第一:青ジャージー
守っては零封、攻めては3桁に迫る勢いと、力強さをスコアで表した本庄第一。
初のAシードで迎える今大会、亀田優斗キャプテンは胸の内を明かした。

「3年生にとっては最後の花園予選。最初の試合から勢いをつけることが大事だと(新井昭夫)監督からも言われていたので、全員で最後まで出し切りました」

新しいアタックパターンを導入したことが功を奏し、テンポを握る場面も増えてきた。

それでも「ここからの1ヵ月でさらに磨きをかけたい。やるからには上を目指して、花園に出場したい」と言葉に力を込める。

チームの意識も一つにまとまりつつあることは好材料。

「大きな目標は常に花園ですが、目の前の1戦を大切に戦う意識は全員に共有されています」と強調する。

「僕らは盛り上がりすぎて、オーバーヒートすることもあるチーム。でも今日はバランスが良かった。良いファーストゲームになったと思います」

初の決勝を目指し、準決勝は熊谷と対戦する。

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