【夏物語】ブラックラムズアカデミー×東京サンゴリアスアカデミー。合同合宿で深めた夢「将来はブラックラムズに入って優勝したい」

8月初旬、夏の菅平高原に賑やかな声が響いた。

東京に拠点を置くリーグワン2チーム、リコーブラックラムズ東京と東京サントリーサンゴリアスが運営するアカデミーが、合同で合宿を行った。

昨年に続き2回目となる取り組みで、両チームの若き選手たちが寝食をともにしながら友好を深めた。

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3日間の日程で行われた今合宿では、武川正敏アカデミーコーチ(ブラックラムズ東京)、平浩二アカデミー部門長(東京サンゴリアス)らの指導のもと、練習に加えてタッチフットや交流戦を実施。

中日に行われた交流試合では、小学5年生チーム、6年生チーム、中学1年生チームに分かれ熱戦を繰り広げた。

特に印象的だったのは、ピッチ外での光景だ。

交替した選手には、それぞれのコーチが所属チーム関係なく「おつかれ」「ナイスプレー」と声を掛ける。

試合が終われば誰からともなく「話し合おう」と仲間に声を掛け合い、テントの下で小さな輪を作った。活発な意見を交わし合う小さなちいさなハドルは、未来の姿を容易に彷彿とさせた。

またケガのため試合に出られない選手の中には、「それでも応援はできる」と強い日差しの中でも声を枯らしたり、自らタッチジャッジを志願したりする人も。

サンゴリアスの選手のタッチジャッジサポートについたのは、ブラックラムズのコーチたち。垣根を越え、若きラグビープレイヤーたちの成長を後押しした。

育成方針

2022年からブラックラムズアカデミーの指導を担っている武川氏は、日川高校・早稲田大学を経てリコー(現・リコーブラックラムズ東京)で2010年までプレー。引退後はワセダクラブやリコーのコーチ、さらに早稲田大学ヘッドコーチとして大学日本一に導いた経歴を持つ。

「今合宿のテーマは『Be the BEST』。自分の行動が本当にチームのためになるのかを考えてほしい」と話し、様々な事柄を自分事として考え主体的に行動するオーナーシップと、チームがどうやったら良くなるかを考えるリーダーシップの重要性を説いた。

また、ラグビーのコアバリューである『品位・情熱・結束・規律・尊重』も、生徒たちとともに考える機会を設けたという。

まだ無邪気さを宿す選手たちは口々に「一番好きなのは尊重です!」「情熱も好き!」と、心に残ったコアバリューを教えてくれた。

部屋割りも工夫した。

小学5年生から中学生までが参加した今合宿においては、中学生を長とする縦割り形式を採用した。

「上級生が下級生の面倒を見ることを学んだ結果、昨年度は小学生の忘れ物がゼロになった」と武川氏。

食事会場へ向かう時も上級生が下級生を引き連れる。そうした姿勢を見て、下級生も自然と振る舞いを学んでいくのだそうだ。

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10年後の夢

小学3年生からブラックラムズアカデミーに通う中学1年生の男子生徒も、この夏を心に刻んだ。

物心ついた頃には楕円球を握っていたという彼にとって、師は、社会人までラグビーを続けていたという父だった。

「近所の公園で、いつもお父さんとラグビーしていました」

従兄弟は現在もリーグワンで活躍中。自然とラグビーにのめり込み、中学の部活動に加え世田谷区ラグビースクールにも通い、1週間丸ごとラグビー漬けの日々を送っている。

ブラックラムズアカデミーではスキル習得を主題とするが、学ぶのはもちろん、技術だけではない。

「太ももをきちんと上げて走ること、キックは振り上げをすること、パスはフォロースルーすること」と基礎スキルを徹底しながらも「声を出し続けてチームを引っ張ることも教わりました」と語る。

声が出れば仲間は盛り上がり、相手からも「連携の取れた強いチーム」と見られる。その積み重ねが、選手たちを成長させている。

「将来はブラックラムズに入って優勝したい」

そう笑顔で語った彼はこの日、創部70周年時のオーセンティックジャージー(2023-24シーズン)をまとい試合に臨んだ。

「ブラックラムズの選手になったみたいで嬉しかったです!」

輝く目の奥に、10年後の景色が広がった。

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