自分を信じ、仲間を信じた日。四日市メリノール学院、初優勝|第8回全国U18女子セブンズラグビーフットボール大会

秋雨に煙るグラウンドで行われた、第8回全国U18女子セブンズラグビーフットボール大会。

高校生女子の日本一を決める熱く激しい戦いが、10月25日(土)、26日(日)、埼玉県熊谷市・熊谷スポーツ文化公園熊谷ラグビー場で開催された。

全16チームの中から決勝に勝ち上がったのは、四日市メリノール学院高等学校(東海)と関東学院六浦高等学校(関東)。結果は12-7。四日市メリノール学院が悲願の初優勝を飾った。

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三重県四日市市にある四日市メリノール学院高等学校。

創部から「おそらく8年」と語るのは黒須浩二監督だ。

同大会の過去最高成績は3位。昨年は5位。これまで届かなかった決勝戦の舞台に、今年ついにたどり着いた。

「自分たちがプレーを楽しむことにフォーカスしました。決勝戦ができるのは、関東学院六浦さんと我々だけ。『最高の舞台が整ったから、思い切り楽しんでこい』としか言っていないんです」と監督は笑った。

「落ち着く」という選択

圧巻は試合の入りだった。

キックオフから敵陣深くへ攻め込み、連続でペナルティを奪う。前半2分、原田唯衣選手がトライを決め、先制点を奪った。

これまで関東学院六浦に勝つことができていなかった四日市メリノール。

今年4月に行われたサニックスワールドユース交流大会の決勝でも、5-19で敗れている。

何かを変えなければ、ディフェンディングチャンピオンに勝てぬことは、選手たち自身が分かっていた。

だからこそ「焦ればこれまでと同じ展開になってしまう。落ち着いて、冷静にプレーしよう」と仲間に声を掛けたのは河内陽愛キャプテン。

「とにかく勝つだけ。負けても勝っても後がない。やりきろう」と続けた。

「勝ちたい」よりも「落ち着こう」。

地に足をつけ、ボールの軌跡ひとつひとつに集中すること。14分間、彼女たちは「落ち着く」を体現した。

耐え抜いたラスト1分

後半、7-7の同点に追いつかれる。会場に緊張が走るなか、後半4分、赤木陽菜子選手がトライを決めて再びリードを奪った。

残り時間はわずか。1トライ1ゴールで逆転される5点差。

「最後の1分は本当に長く感じました」と振り返った黒須監督。

「『勝ちたい』『日本一』ではなく、『正しいプレーをして欲しい』。それだけを願っていました」とその時の気持ちを明かせば、選手たちは期待に応え、最後のホイッスルまで身体をぶつけ続けた。

12-7。

耐え抜いた先に、初めての栄冠は待っていた。

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「力戦奮闘」の旗のもとに

部員は33名。関西を中心に全国から仲間が集まり、今年は寮も完成した四日市メリノール学院。

「学校のサポート体制には本当に感謝しかないです」と黒須監督は語る。親元を離れて戦う高校生を預かる環境が整い、挑戦の幅は大きく広がった。

今年掲げたスローガンは「力戦奮闘 – Fight on -」。戦い続ける意志を込めた言葉を、決勝の舞台で鮮やかに体現した。

「チームのみんなには感謝しかない。それぞれが自分を信じ、仲間を信じてプレーできたことが、この結果につながったと思います」と河内キャプテンは言う。

黒須監督も「自分は本当に何もしていない。子どもたちを信じただけです」と目尻を下げた。


「笑顔で、楽しんでプレーしよう」と何度も仲間に声をかけた河内キャプテン

最高のゲームでつかんだ初優勝

「まだ実感はないのですが、ホッとしています。子どもたち、本当にすごいなと思います」

初の日本一に笑顔を見せた黒須監督の言葉が、全てを物語る。

決勝戦で見せたのは、間違いなく今年のベストゲーム。

「落ち着く」という選択が導いた初優勝。

四日市メリノール学院の歴史に、新たなページが刻まれた。

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