【夏物語】この夏、僕たちは強くなる ~努力で勝つ|慶應義塾

「努力で勝つしかないと思っています」

慶應義塾高等学校體育會蹴球部・前田浩太キャプテンは言った。

才能よりも、積み重ね。華やかさよりも、泥臭さ。

『慶應義塾』という名が持つ伝統の中で、いまこのチームが貫こうとしているのは、ひたむきな努力だ。

ディフェンスで守りきる

今季の船出は、苦しかった。

新チームが始まって最初の大会、1月に行われた神奈川県高等学校ラグビーフットボール新人大会では、準々決勝で関東学院六浦に20-23で敗退。その4か月後、5月の関東大会予選でも再び関東学院六浦に12-24で敗れ、関東大会への出場を逃した。

敗戦を糧にすべく、チームが夏に掲げたテーマはただ一つ。

「春に負けてから、『ディフェンスフォーカス』ということでやってきました。秋までにディフェンスを仕上げる。そこに徹底的に取り組んでいます」(前田キャプテン)

『慶應らしさ』の象徴ともいえる、規律あるプレー。どんなに攻撃が華やかでも、守りきれなければ勝ちはない。

だからこの夏、慶應義塾は徹底してディフェンスを磨いた。

3度の合宿で積み上げた確かな成長

慶應義塾は今夏、計3度の合宿を実施した。

山中湖にはじまり、菅平高原、そして再び山中湖へ。大学生との合同練習も行い、課題を一つひとつ克服していった。

8月中旬、昨季の花園ベスト8・石見智翠館との練習試合では、互いに1トライずつを奪い合う接戦を演じるまでに成長する。

「ディフェンスが少しずつはまって、後半にはキックもよくなった。エリアの取り方にも成長を感じます」(前田キャプテン)

前に出て、相手を止めること。規律の中に強度と勢いを共存させること。守ることで試合を支配すること。

慶應義塾のラグビーが、形を成した。

「バックスはキックとエリアマネジメント。フォワードはモールなどのセットプレーで取り切ること。そういう細かい部分を、一つひとつ突き詰めています」

判断に規律、連携。それぞれの精度を極限まで高めるための日々は続いた。

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新監督が示すビジョン

チームを率いるのは、2025年7月9日に就任したばかりの稲葉潤監督。

就任間もないながら、その方向性は明確だ。

「ディフェンスをやらなきゃいけない。だから、まず『ディフェンスのチーム』を作っていこうと思っています」

また稲葉監督が最も評価するのは、このチームの真面目さにある。

「うちの選手たちは本当に真面目。だからこそ、その努力を磨いていきたいです」

華やかな個よりも、真面目に積み上げる力。

「努力で勝つしかない」という前田キャプテンの言葉は、監督の方針とまっすぐに重なる。

伝統と絆

夏合宿のグラウンドには、数多くのOBの姿があった。稲葉監督も、その光景に目を細める。

「例年以上に来てくれていると思います」

リーグワンでプレーしたOBも、慶應義塾大学で主将を務めたOBも。

その顔ぶれは、さながら『慶應アベンジャーズ』であった。

人が支える、慶應ラグビー。

華やかさよりも、泥臭さを。タレントよりも、連帯を。

稲葉監督は最後にこう語った。

「とにかく、神奈川チャンピオンを目指して頑張ります」

『努力で勝つ』と誓ったその言葉を、秋風の中で結実させるために。

慶應義塾は11月8日(土)、第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会神奈川県予選・準決勝で東海大相模と対戦する。

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