「同様にしっかり準備します」川越東、2年ぶりの決勝へ。浦和は涙の敗退「まだまだ練習したかった」|第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会埼玉県予選

8月31日に幕を開けた第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会 埼玉県予選。

記念大会となる今年は、埼玉県から2校が全国大会へと出場するため、トーナメントは2つの山に分かれて進行している。

11月8日(土)には熊谷ラグビー場Bグラウンドで浦和高校(Bシード)対川越東高校(Aシード)の準決勝が行われ、川越東高校が決勝戦へと駒を進めた。

決勝は11月15日(土)、熊谷ラグビー場Aグラウンドで行われる。

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浦和 14-28 川越東

浦和ボールでキックオフを迎えると、先制は前半7分。浦和6番・鎌田千里選手がトライを決め、15番・千嶋一徳選手がコンバージョンゴールを沈めれば7点を先取した。

しかしそのわずか5分後、川越東の反撃が始まった。

6番・森中斗司伸選手が2トライを挙げ、11番・吉田弘明選手も続く。10番・岡部史寛選手が3本すべてのコンバージョンを成功させ、スコアは7-21。

川越東がリードを奪い、前半を折り返した。

後半も先に得点したのは川越東だった。

13番・谷川史人選手がゴールラインを越え、7-28。後半11分、点差は21点に広がる。

それでも浦和は大応援団の声援を背に、最後まで諦めなかった。

後半31分、トライライン前の激しい攻防から16番・宇根岡大和選手が押し込み、意地のトライ。

その後もノーサイドの笛が鳴るまで懸命に攻め続けた浦和陣だったが、追撃は及ばず試合終了。

スコアは14-28。

川越東が2年ぶりに決勝の舞台へと駒を進めた。

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浦和

準決勝敗退が決まると、山本義明監督の目には大粒の涙が浮かんだ。

「いつも最後に伸びるチームなんですけど、今年はちょっと・・・。私の調整不足でケガ人も連続で出てしまって。”最後に伸びる浦高”を、うまく調整してあげられなかったな、っていうのが・・・」

言葉を詰まらせながら「選手は本当に良くやってくれました」と絞り出した。

キャプテンはウイングの宇野大樹選手。他校も含め、バックスリーに複数の主将が並んだ珍しい代でもあった。

山本監督は、1年を振り返りながら涙を拭う。

「新人戦で伊奈学園に負け、どうなることかと思いました。でも城西川越に快勝したり、熊谷工業にもあと一歩という試合があったり。波に乗る時と落ちる時のアップダウンはあったけれど、楽しいチームでした。キャプテンの宇野、鎌田(千里)、田中(友裕)と、最後に3年生たちがぐんぐん伸びてくれた。もっと一緒に、まだまだ練習したかった」

悔しさと誇りが混ざりあった。

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この日のゲームプランは、いつもどおり「キックとモール」。

前半の反則数は0と規律高いプレーを見せたものの、キック処理が後手に回り、自陣で戦う時間が増えてしまった。

「集中力だったら、絶対に自分たちが県トップ。全部準備してきたんだから、自信を持って倒しに行こう」

そう仲間に声を掛け、準決勝へと向かった宇野キャプテン。

「僕たちが1年生の時、目の前で3年生が泣く姿を見てきました。去年の先輩たちも同じです。だからこそ『自分たちが先輩を花園に連れて行くんだ』と思っていました」

良いプレーが生まれれば、全員で駆け寄り、場の空気を一気に引き上げる。その一体感こそが、このチームの強さでもあった。


写真中央は15番・千嶋選手。ノーサイドの笛が鳴ると真っ先に川越東の選手たちのもとへ歩を進め、手を差し出した

また先発の半数は2年生。スクラムハーフにスタンドオフ、センター、ラインアウトスロワーまで、要のポジションを2年生が担った。

「本当に頼もしかった。引っ張ってくれる選手ばかりです。来年は自分たちの強みを生かしながら、やりたいラグビーをみんなで模索していってほしい」

後輩への信頼がにじんだ。

最後に、ゴール裏に広がった大応援団に向けてのメッセージを問うた。宇野キャプテンの目には、次第に涙が溢れる。

「今年は花園に2チーム出場できますが、実質はベスト8。新人戦も関東大会も花園予選も、すべてベスト8で終わってしまった。今日は土曜授業なのにも関わらず、クラスメイトたちがわざわざ応援に来てくれました。あの人たちを大阪に連れて行きたかった・・・。申し訳ない気持ちでいっぱいです」

「ごめん・・・」

慟哭し、なかなか立ち上がれない選手もいた。

泣き崩れるほどに、ラグビーに打ち込めたこと。その涙は、高校3年間がラグビーとともにあった証。

浦和高校ラグビー部の挑戦が、静かに幕を閉じた。

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