「秋にゴセを倒して、花園で日本一になる」
迷いのない言葉だった。
今年、天理高校が胸に刻む目標はただひとつ。
そう、『日本一』だ。
100周年の誓い
日本一。
その言葉には、今年の天理だからこその意味がある。
今年は創部100年。今年が、100代目のチームなのだ。
その節目に挑むリーダーは、東京都出身の城内佳春キャプテン。
城内キャプテンが天理高校を選んだのは、単に強さと伝統を求めたからではない。
「父が天理高校ラグビー部のOBで、今年が創部100年。100代目の節目の年に、日本一を獲りたいと思いました」
天理という名が持つ意味、そして父から受け継いだ血。
100年の歴史の“線の上”に自らも立つという覚悟が、城内キャプテンの原点だ。

今年の夏、天理は合言葉に『ファイト is オールメンバー』を掲げた。
「天理にはAチームからFチームまであります。自分が出る試合だけでなく、Aチームの試合でもFチームの試合でも、部員111人が一丸となって戦う」という覚悟をこの言葉に込めた。
5人のマネージャーを含め、今季の総部員数は116人。
過去最多人数となる大所帯だからこそ、全員が同じ方向を向くこと が強さにつながると信じる。
信じる武器
天理とは、誰か1人の力で勝つチームではない。
屋台骨となる「タックル」と「諦めない熱量」が、いつの時代も激闘を支えている。
体を当て続け、白い壁となること。
100年間、天理が磨き続けてきたタックルへのこだわりは、今年も変わらない。

もちろん、創部100年と聞けばその響きは重い。
しかし率いる松隈孝照監督は、その歴史をこう捉える。
「ファンの方やOBの方々のサポートがあって、僕たちはラグビーができています。その想いを背負ってラグビーをすること。これが天理やと思います」
城内キャプテンも、その精神を理解している。
「みなさんの想いを背負ってラグビーをします」
100年を「記念」とするのではない。『受け継ぐべき線の上に続く1年』として向き合う姿勢こそが、今年の天理の強さだ。

変化と継承
100年間で、変わったものと変わらぬものがある。
変わらないのは、純白ジャージーのコアに宿る精神。
「しんどくなった時に“諦めへんかどうか”。それが天理のラグビー。ここは100年経っても変わらん」と語るは松隈監督。
一方で、取り組みは時代に合わせて変化させてきた。
大きな転換点は2022年。花園出場を逃す年が3年ほど続き、選手主導型へと舵を切ることにした。
いまでは、練習メニューを選手が中心となって組み立てる。選手への信頼と、何よりコーチ陣の忍耐力がなければ成り立たない。
「子どもたちは一生懸命やるし、コーチも支える。言いたくなるけど、言わへん。生活面のことはしっかり言いますけどね」
指導ではなく、“信じて待つ”。そのスタイルが、選手の主体性と“熱”を育てる。

“熱”がある者は必ず伸びる
松隈監督が最も大切にしているキーワードがある。
「熱を持っているかどうか」
熱があれば、食事が変わる。体づくりが変わり、時間の使い方が変わる。
だからこそ、「必ず3年間のどこかでスイッチが入る」と監督は断言する。
先にスイッチが入った先輩たちの背中を見て、後輩は“自分の道”を描く。そのスイッチの押し方も、押すタイミングも正解が一つではない天理の文化は、100年の歴史の中で育まれてきたものだ。
「どんなメンバーでも、どんな状況でも絶対に諦めない。それが天理の原点やと思っています」

いざ、決戦へ
城内キャプテンが100年の節目に誓った『日本一』。
そのためには、まず奈良県大会を勝ち上がらねばスタートラインに立つことも許されない。
11月16日(日)に行われる決勝戦の相手はもちろん、御所実業。
100年目の秋。いま、日本一へ。
第105回 全国高等学校ラグビーフットボール大会奈良県大会・決勝戦は14時、橿原公苑陸上競技場でキックオフを迎える。

奈良県大会ではジャージー授与式は行わない。花園でのみ行われる儀式だという