100回目の慶明戦で輝いた未来。慶應のルーキーたちが示した可能性

11月2日(日)、秩父宮ラグビー場では関東大学ラグビー 対抗戦Aグループ、慶應義塾大学と明治大学の一戦が行われた。

100回目の節目となる慶明戦は、22-24で明治大学が接戦を制す。

一方で、敗れた慶應義塾大学には、今後につながる収穫があった。今年入学したばかりの1年生たちが、存在感を示したのだ。

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走り続けてつかんだ、自分の場所。FL申驥世の現在地

前半8分までに3回のタックルを成功させた選手がいた。

フランカーの申驥世選手。

トライラインを背負ったディフェンスでも、必要な場所へ、必要な瞬間に、最適な姿勢で体をねじ込む。

判断力と勇気。その両方を兼ね備えた選手である。

桐蔭学園高校時代はキャプテンとして花園を制覇。高校日本代表でも主将を務め、U19イングランド代表相手に接戦を演じた。

その経歴から、「慶應でもすぐ主軸になる」と期待されたことだろう。しかし現実は、簡単ではない。

「春シーズンも夏合宿も、まだまだレベルが足りない感覚がありました。体の強度も足りなくて・・・。チームに順応できていなかったと思います」

悔しさと向き合った、大学1回目の春と夏があった。

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迎えた、初めての秋。

対抗戦5試合を終えた今、先発フル出場を続けている。

「対抗戦を通じて、良い感触を掴めています。コンタクトでも、アタックでもディフェンスでもチームに貢献できている実感があります。ようやく“絡めている”という感覚になってきました」

感覚と理想、そして実際のプレーが噛み合いだした。

特に手応えを得ているのが、運動量だ。

GPSデータでは、走行距離、HIR(ハイ・インテンシティ・ラン、高強度走行)の両項目でFWトップを記録し続けている。

「練習でも試合でも1位をキープできていることが自信になっています。走れることで、自然とボールに絡めるし、ディフェンスでも良いポジションに立てているんだと思います」

この日は、ひとつのトライも刻んだ。

ラインアウトからのムーブ。ショートサイドへ走り込み、その勢いのままトライラインを割った。

「あのサイン、高校2年の花園準決勝で大阪桐蔭相手に使ったものなんです。あの時はパイルアップを取られて・・・(笑)。でも今回、2年越しにトライできて本当に嬉しかったです」

泥臭く走り続け、体を投げ出し、誰よりも早く次の局面へと飛び込む。

その姿勢こそが、申選手の武器。

慶應義塾大学1年、FL申驥世。

強度と走力を併せ持つ新たな戦力が、黒黄の未来を切り拓く。

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基礎を磨き、武器を研ぎ澄ます。覚醒の10番、小林祐貴

「ベーシックスキルは確実に上達したと思います。キャッチもパスも、今はほとんどストレスなくできています。ボールを受ける位置や、どうすれば次の選手が良い形でプレーできるか考えながら動けるようになった。そこが大きいです」

そう語るのはスタンドオフ、小林祐貴選手。今春、慶應義塾高校から慶應義塾大学へと進んだ。

高校時代の持ち味は、自ら仕掛け前へと走り込むプレー。本人も「あの頃はイケイケでやっていました」と笑う。

しかし大学入学直後の春シーズンをけがの治療に充て、夏に復帰したとき、すぐに壁を痛感する。

「大学はレベルが全然違います。特に10番周りはスペースがない。高校までは自分で仕掛けるのが強みだと思っていたけど、大学ではそれだけじゃ通用しないことを知りました」

そこで、視点を変えた。

「コーチから“パスに入るまでの速さ”や“相手を引きつけて次につなぐこと”が自分の強みだと教えてもらいました。そう言われて、“じゃあそこを伸ばそう”って思えたんです」

基礎を磨き、武器を研ぎ澄ます。

その変化を前向きに受け入れられることこそ、小林選手の強さだ。

「慶應といえばディフェンス。それが根底にある文化です。でも今年のチームは良い意味で“慶應らしくないアタック”にも挑戦しています。シーズンが進むにつれて、形になってきている手応えはあります」

鍛え直した技術と新たな視点を携え、10番としてチームを操る。

今、改めてその役割と向き合い、階段を駆け上がる。

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