11月2日、秩父宮ラグビー場。
早稲田大学が昨季の大学選手権王者・帝京大学に挑んだ一戦は、1万5千人を超える観客が見守る中で行われた。
結果は20-25。
わずかに届かなかった悔しさ残る試合となったが、ノーサイド後、前を向く2人の2年生に話を聞いた。
試合を動かした判断
前半27分。会場をざわつかせたシーンがあった。
フィールド中央付近で構えると、迷いなくノーモーションで右足を振り抜いた。
蹴ったのは、10番・服部亮太選手。
およそ50mの弾道は、しっかりとゴールポストの間を抜けた。
「前半は風下だったので、エリアを意識していました。試合をぶつ切りにすることも考えていましたし、展開としてもタイトなゲームだったので、3点の価値は大きいと判断しました」

キック力が強みの服部選手。だが、今季はプレーメイクの部分でも大きな成長を見せている。
「映像をたくさん分析しましたし、どこで仕掛けるか、どこでキックを使うかについて、大田尾さん(竜彦監督)やチームと多く話しました。そこが今季、一番伸びた部分だと思います」
大学ラグビー特有のスピード感にも順応し、判断の質は上がった。
だからこそ、敗戦後の口調には悔しさが滲む。
「“勝ち切る”ことを全員で意識した試合でした。でも勝てなかった。勝たせられなかった。そこは自分の責任です。だからこそ、この負けをプラスに変えたい。チーム全員が成長する材料にします」
スタンドオフとして、言葉に覚悟を宿した。

2年目の自信
もうひとり、試合の中で存在感を示したのが、3番・前田麟太朗選手だ。
1年生の頃から強みとしていたセットプレーに、今季さらに磨きをかけた。

昨年はBチームの1人として、対戦相手のスクラムをコピーし、Aチームと対峙することが多かった。
他大学の組み方や、自分の組み方。練習で様々なスタイルで組み込んだこと、そして先輩たちからフィードバックをもらえたことが「財産になった」という。
その努力が実り、今季はこれまで対抗戦3試合で先発出場。
試合中にも、スクラムの微調整と成長を続けている。
「(昨年、様々な大学のスクラムの組み方をコピーしたことで)選択肢は増えました。でも、自分の芯となる組み方は変わりません。そこはブレずに、これからも続けたいです」
真っ直ぐ組み合うこと。FW8人でまとまって、後ろの押しをしっかりと伝えること。
その“芯”があるからこそ、試合中の修正も迷わない。

この日も帝京を相手に、何度かスクラムでペナルティを奪った。
「帝京には負けたくない気持ちもありました。小さい頃から見てきた帝京のスクラム。自分が押せたことは、自信になりました」とポジティブに捉える。
だが押せたスクラムにも反省はある。
前半31分、相手陣深くでのスクラムでコラプシングを誘い、ペナルティを得た一押し後でのこと。
12番・野中健吾キャプテンはペナルティゴールを選択し、キックを蹴り込むため準備するその後ろで、前田選手はHO清水健伸選手と言葉を交わした。
「自分たちがいまどういう形で、どういう押し方ができているのか。そこをケンシンくんがコントロールしてくれているので、逐一試合中にもコミュニケーションを取るようにしています」
組み勝ってなお、改善。スクラムとは、奥深い。
