11月3日。リーグ戦全勝同士がぶつかった、東海大学と東洋大学の一戦。
28-27とわずか1点のリードで迎えた後半ロスタイム、東海大学はイエローカードで1人少ない状況にあった。
左タッチライン際で東洋大学のウイングがボールを持ち、トライライン目前まで迫る。
スタンドに緊張が走る中、グラウンドの内側から全速力で走り込み、タッチラインへと押し出したのは東海大学主将・薄田周希(7番)選手だった。
「相手は攻めてくる。自分たちはプレッシャーを掛け続けよう。1人少ない分、1人が1人分多く走れば大丈夫だから。やり切ろう」
直前、薄田キャプテンはそう仲間に声を掛けていた。
ただ、あの場面についてはどこか照れた様子で振り返る。
「もう1人、ウイングが外におると思っていたんです。でも『そういえば1人おらん』と思って(笑)。本来ウイングがいる場所にいなかったので、頑張って走ったら追いつきました。良かったです」
大きく語らず、笑いながら話す姿に、主将としての自然体がにじんだ。

監督が語る「言葉の力を持っているキャプテン」
木村季由監督に薄田キャプテンについて尋ねると、語り口に迷いはない。
「間違いないですね。ブレないですし、基本的に大人です。大人のキャプテンで、熱もある。我々と同じことを考えています。でも、それは我々の言うことを鵜呑みにしているわけではなく、盲目的に反復しているわけでもない。心の底から思っていることが一致しているんですよね」
さらなる評価が続く。
「やるべきことは何なのか、を冷静に話せる人間。なかなかいないですよ。前川時代を超えるキャプテンです」
隣にいた前川鐘平コーチの方を見やりながら、木村監督は続けた。
「種類は違いますけど、それぐらいのキャプテンです。言葉の力を持っています」
プレー面だけでなく、状況判断や発信力。その総合力を、監督は厚く信頼していた。

自分たちが取り戻す
この監督の言葉を伝え聞いた薄田キャプテンは、少し照れながら言った。
「直接言って欲しいですね」
短いながらも、託された喜びと誇りがにじむ。
そして続けて、東海大学というチームの立ち位置を静かに口にした。
「いま東海大学に集まるメンバーは、高校時代には花園にあまり出ていない人であったり、強豪校にやられ続けたりした人が集まっています。そういう人たちへ僕は『勝つために積み重ねをしよう。早稲田や明治、帝京といったエリートが集まる大学に比べて自分たちは才能がないかもしれないけど、自分たちは努力を積み重ねよう。そうやって歴代の先輩たちは勝ってきた。だからもう一回、それを自分たちが取り戻そう』という声掛けをしています」
薄田キャプテン自身は、東海大大阪仰星高校で全国制覇を経験した選手だ。
高校時代に“勝ち方”を知る人間が、いま東海大学で積み重ねの価値を説いている。その姿勢は、チームの文化を継ぎ、さらに先へ進めようとする意志と重なった。
東海大学は11月30日、リーグ戦最終戦・流通経済大学戦で、2年ぶりの優勝奪還に挑む。


