9月13日に幕を開けた、関東大学ラグビー リーグ戦1部。
11月30日(日)には、秩父宮ラグビー場で流通経済大学と東海大学のリーグ最終節が行われ、31対46で東海大学が勝利。
7戦全勝優勝を果たした東海大学が、2年ぶりのリーグ戦王座を奪還した。
試合序盤は、東海のミスが続いた。
その隙を突くように、流通経済がペナルティゴールで3点を奪い、口火を切る。
さらに敵陣深くで攻撃を継続し、前半21分には4番・福田拓人キャプテンが押し込んで先制トライ。10番・紺井大士選手のキックも決まり、差を10点に広げた。

しかし、王座復帰を狙う東海がここから反撃に転じる。直後に2本のトライと2つのゴールを決め、一気に10-14と試合をひっくり返した。
その後は双方が取り合う展開に。
流通経済が1トライ1ゴールで追走すれば、東海も2トライ1ゴールで応じ、前半は17-26と東海が9点を上回って折り返した。

後半は、東海がスコアを重ねるところからスタートする。
17-33とリードを広げるが、背水の陣で臨む流通経済も簡単には引かない。モールを軸に連続トライを挙げ、31-33と2点差まで追いすがった。
流れが傾くかに見えたが、最後に勝負強さを示したのは東海だった。右サイドを突破し、21番・吉田永遠選手がインゴールへ。以降も着実に得点を重ね、最終スコアは31-46。
東海大学が全7戦を勝ち抜き、2年ぶり14回目のリーグ戦制覇を成し遂げた。

Pick Up Player
東海大学で今季バイスキャプテンを担う、スクラムハーフの川久保瑛斗選手。
忘れられない出来事がある。
2年前の6月。
U20日本代表候補として社会人チームとの練習試合に臨んだ際、大ケガを負った。
左膝の前十字靭帯・後十字靭帯・内側側副靭帯の断裂に加え、脱臼。
「気付いた時には、つま先が頭の横にありました。怪我した瞬間は、もうラグビーを辞めないといけないのかな、選手生命が絶たれたんじゃないかな、元に戻れないんじゃないかな、って思いました」
あの瞬間は、今でも時折蘇る。夢に見ることさえあるという。
人生最大の痛みと向き合いながら、手を伸ばせば届くはずだった舞台が遠のいていく。その現実の苦しさに、何度も心は折れかけた。
◇
それでも前へ進めたのは、多くの支えがあったからだ。
手術後は実家のある長崎県でリハビリに打ち込み、母の温かさに励まされながら、長崎北陽台高校時代のトレーナーらと共に心身を立て直した。
そして3年生の秋、ついに復帰を果たす。
実に1年半ぶりのカムバックだった。
◇
最終学年となった今季はリーグ戦6試合で先発に名を連ねた。その安定したプレーが評価され、初のベストフィフティーンも受賞する。
リーグ戦無敗での優勝、そして個人賞の獲得。
荒天のあとに咲く大輪の花のように、長いリハビリの日々が実を結んだ。
「めちゃめちゃ嬉しいです」
歩んできた道を思い返しながら、川久保選手は柔らかな笑顔を見せた。

一方で視線はすでに次の舞台へと向いている。
いよいよ始まる、大学選手権。初戦は12月20日(日)、会場は大阪・ヤンマースタジアム長居。関西大学Aリーグ2位の京都産業大学と、関東大学対抗戦A5位の勝者が相手となる。
「まだ戦いは続きます。目標は大学選手権での日本一。しっかり準備します」
ベストフィフティーンの発表時、自身の名が呼ばれた瞬間、川久保選手は左拳を天に突き上げた。
それは、あの日立ち上がることを諦めなかった自分への、静かな讃歌のようでもあった。


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