第62回全国大学ラグビーフットボール選手権大会3回戦が12月14日(日)、東京・秩父宮ラグビー場で行われ、帝京大学は東洋大学に29-14で勝利した。
前半を2点のビハインドで折り返したものの、後半終盤に3トライを決め、準々決勝へと駒を進めた。
急に冬が訪れたような寒さだった。
12月14日、秩父宮ラグビー場。スタンドに吹き込む風は冷たく、試合後の会見場にも、どこか張りつめた空気が残っていた。
「天気と同じように、なんだかパッとしないゲームになってしまいました」
帝京大学・相馬朋和監督は、そう切り出した。
勝利のあととは思えぬ、飾り気のない言葉だった。

スクラムからは湯気があがった
それでも、すぐに「反省から入ってしまいました。やり直してもいいですかね」と言葉を継ぎ、表情を改める。トーナメントを戦う者として、改めて前を向いた。
「トーナメントなので、勝って次に進めることを、チームとして喜びたいと思います」
内容への満足感は決して高くない。
だが、この一戦を無駄にしないという意志が言葉の端々から伝わってきた。

試合開始からおよそ60分間、帝京大学は思うように流れをつかめなかった。
チャンスは作るが、仕留め切れない。仕掛けようとしても、決定打を欠く。
足元が定まらないような時間帯が続いた。
「対抗戦で筑波大学とやった時と、天候も含めてよく似ていました」
相馬監督の言葉が、この試合を端的に表す。
簡単には前に出させてもらえない。相手の準備が、随所に見える。
だからこそ、ハーフタイムに伝えたのは特別な戦術ではなかった。
「いつも言っていることを、もう一度。“小さいことを大切にしよう”と」
キックを使い、エリアをとる。
自分たちが“できること”に立ち返り、それを疑わずにやり切る。
後半、帝京大学が見せたのは、派手さよりも「自分たちのできることに立ち返っていく」姿だった。

後半に入ると、外側に立つ選手たちが積極的にボールを持ち、相手ディフェンスに圧をかけ続けた。
敵陣でプレーする時間が増え、心理的な余裕も生まれていく。
「前半と後半で一番違ったのは、そこです」と言ったのはCTB大町佳生キャプテン。
大学選手権4連覇中の帝京大学にとって、3回戦からの登場は第57回大会以来、5年ぶり。現役学生にとっては初めての経験という、負けられないプレッシャーも少なからず影響した。

この日、大町キャプテンは後半14分にベンチへ退いた。
その決断について、相馬監督は慎重に言葉を選ぶ。
「とても責任感の強いキャプテンなので、チームの出来と自分のミスを結びつけてしまう。ケガをすることが一番怖かったですね」
主将をピッチから離す決断は、1人の選手を守るためでもあった。
試合後、ベンチで過ごした時間を振り返った大町キャプテンは「主将として、最初に考えるべきなのはチームのこと。グラウンドに立っている仲間を信じていました」と言葉にした。
対抗戦では全試合フル出場を果たしていた大町キャプテン。
「もう一度、練習から自分のパフォーマンスを見つめ直して、本当に信頼されるキャプテンになりたい」と口にした。

派手な勝利ではなかった。
だがチャンピオンシップとは、勝たなければ次へ進むことはできない。
帝京大学のトーナメントは、まだ続いていく。
準々決勝の相手は筑波大学。対抗戦では14-18で敗れた悔しさも記憶に新しい。
勝負の一戦に向けた相馬監督の言葉は、実にシンプルだった。
「我々がどうやって戦うのか。それを15人、23人、145人、全員が疑いなく信じられるかどうか。そして、そこに対して良い準備ができるかどうかです」
「今、我々に必要なのは、自信を持つことだと思っています」
大町キャプテンもまた、「一度負けた相手に、二度は負けられない」と静かに誓う。
「東洋大学さんが、我々に伝えてくれたもの、教えてくれたものを大切にして、次に進みたいと思います」(相馬監督)
刻んだ想いを胸に、帝京大学は次なる戦いへと向かった。
