第62回全国大学ラグビーフットボール選手権大会3回戦が12月14日(日)、東京・秩父宮ラグビー場で行われ、早稲田大学は関東学院大学に85-7で勝利した。
前後半あわせて13トライを奪い、準々決勝へと駒を進めた。
早明戦の激闘から1週間。
この日、早稲田陣は個々のコンディションを見極めながら大きくメンバーを入れ替えた。
それでも戦う軸はぶらさない。
ジュニア選手権などで経験を積んだ選手たちが、大学選手権の舞台で力を発揮したこと。後半にスコアを伸ばせたことについても「個人技だけでなく、組織的に取れたトライが多かった」と、総力戦としての勝利だったことを大田尾竜彦監督は強調した。
「1年間を通してチームとしてしっかり底上げができてきた」と、積み上げた時間を評価する。
この日、欠場した野中健吾キャプテンに代わり、ゲームキャプテンを務めた田中勇成バイスキャプテンもまた、この1週間を「4年生が中心になって乗り越えた」と振り返った。
負けたら終わりのトーナメント。相手からのプレッシャーは想定していたが、それ以上に「自分たちからプレッシャーをかけにいく」ことをチームとして徹底したという。

大田尾監督が言及したのは、スキルではなく「メンタル」面だ。
役割を遂行しきれなかった場面、わずかな隙。そうした点を詰めていかなければ、「次の相手には勝てない」と、気を引き締める。
そう、準々決勝の相手は関西王者・天理大学。
しかも試合は、2年前の大学選手権準々決勝で京都産業大学に涙を呑んだ、大阪で行われる。
田中バイスキャプテンは、「全てをかけないと勝てない相手」と言い切った。
大田尾監督も、「非常に厳しい試合になる」と口にする。
2年前の敗戦を教訓に、求めるのは最後までやり切ること、丁寧に戦い続けること。
「全部をかけて戦う試合になる」
その言葉どおり、早稲田陣営は全部員で応援に出向く予定だ。
2年前はコロナ禍のため、会場で応援できたのは当時の4年生のみ。試合に出ていないメンバーは、あの時の会場の空気感を知らない。
運命の大学選手権準々決勝は、12月20日(土)、ヤンマースタジアム長居で14時にキックオフを迎える。

この日が初先発だったのは、ルーキーのSH川端隆馬選手。「自分が何かをするのではなく、まずは10番・服部亮太選手にテンポよくボールを供給すること。新しいことはせず、早稲田のラグビーをそのまま出すこと」に徹した。
「後悔しない」を選び続けた4年生の今季初先発
「後悔したくない、っていう気持ちが一番ですね」
そう語ったPR勝矢紘史選手の言葉は、自分に課し続けてきた戒めのようにも聞こえた。

第62回全国大学ラグビーフットボール選手権大会3回戦。
今季初めて先発を託された4年生プロップにとって、この舞台はチャンスであると同時に「負けたら終わりの重圧も、メンバーの思いを背負うという意味でも緊張感があった」という。
前週に行われた明治大学戦。
勝矢選手はメンバーに名を連ねることができなかった。悔しさがなかったと言えば、嘘になる。
「まだ100点満点の準備はできていない悔しさ」があった。
そこから1週間。
切り替えて、準備をした。良い準備をした。
アカクロのジャージーにふさわしき準備ができたこと。それこそが「成長」だという。

もとはナンバーエイトだった勝矢選手。大学2年時に大田尾監督からプロップへのポジション変更を提案され、それを受け入れた。
「体の強さという意味では、1番が向いているのかなと感じていました」
左プロップ歴3年目で迎える、最終学年の12月。
いま、胸に宿るは「後悔したくない」という真っ直ぐな想いだ。
たとえば、きついから自主練習をやめてしまうこと。
たとえば、目の前の事象を見逃し、チーム作りに影響を与えてしまうかもしれないこと。
それらは必ず、後悔として自分に返ってくる。
「その日で終わってもいいぐらいに、毎日を積み重ねていこうという気合いでやっています」
200%でチームにコミットする。
その背中を、後輩たちに見てもらえるような存在でありたい。
それこそが4年生としての自分の役割だとも、信じている。

いよいよ迎える、勝負の天理大学戦。17番でメンバー入りを果たした。
「この一戦に全てを懸ける想いをブラさずに、自分の役割をもっと詰めていきます」
決して大阪で、チームを終わらせない。
もう一回
「正直、ラグビーが嫌になった時期もありました」
1年半ぶりに先発へ戻ってきたナンバーエイト松沼寛治選手(3年生)は、静かに言った。

「昨年は、ラグビーをしていないです」
ケガに泣かされた。
脳震とうの影響でしばらくグラウンドを離れ、復帰は昨夏を予定していた。だがそのタイミングで、今度は膝を負傷。
気持ちも削られていった。

一度は、チームから距離を置いた。
悩んだ日々は続いた。
それでも、松沼選手の周りには支えてくれる人たちがいた。
声を掛けてくれる、仲間がいた。
「もう一回頑張ろう」
そう思わせてくれる存在がいたから「なんとか、ここまでこれました」と表情をやわらげた。

そして迎えた大学選手権3回戦。
秋・冬シーズンとしては大学1年生の時以来2年ぶりに、スターティングメンバーとして名を連ねた。
アカクロの8番をつけ、戻ってきた秩父宮ラグビー場。
相手は、幼い頃にテレビで見ていた早稲田の好敵手・関東学院大学だった。
「大学ラグビーを代表するライバル。小さい頃に見ていたのは、早稲田と関東学院の2チームが大学ラグビーを引っ張っていく姿でした。そういう伝統あるチームとの試合で、8番としてスタートで出られたことは、本当に嬉しかったです」
シーズンが深まるにつれ、調子を上げてきた松沼選手。この日も後半7分に交替するまで、存在感を十分に発揮した。
強い早稲田には、強いナンバーエイトが欠かせない。
「昨年はケガをしてラグビーをしていない分、今年は自分にフォーカスしようと思っています。3年生にはヨシタカ(FB矢崎由高選手)やケンシン(HO清水健伸選手)などリーダーシップを発揮してチームを引っ張ってくれる人がいるので、自分は今できる最高のパフォーマンスでチームを勢いづけることをモットーにプレーしています」
自らに100%の矢印を向けられるときこそ、松沼選手は強い。

ついに迎える、準々決勝・天理大学戦。この日も8番の背番号をつける予定だ。
2年前、京都産業大学に敗れた時もナンバーエイトとして出場していた松沼選手。
アウェーな環境であることは、十分に知っている。
「毎年、(出身校である)東海大大阪仰星高校が見に来てくれるという伝統があります。僕も高校3年生の時に観に行っていました。なので・・・後輩たちにカッコイイ姿を見せたいですね!」
今できる最高のパフォーマンスで、必ずやチームを勢いづける。