「最後は、絶対に取り切る」倉敷が中四国対決に勝利。22人で挑んだ土佐塾は初戦敗退も光った2年生バックス|第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会

試合概要

第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会 1回戦

【対戦カード】
倉敷高等学校 31-0 土佐塾高等学校

【日時】
2025年12月28日(金)9:30キックオフ

【場所】
花園第3グラウンド

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試合結果

倉敷が序盤から攻め立てる。相手陣深くでの攻撃を続けるが、土佐塾のディフェンスを前に取り切ることができない。

均衡を破ったのは前半19分。11番・川又海聖選手がファーストトライを奪うと、27分には8番コンウェイ・リード主将がペナルティから押し込み、連続トライを決めた。

対する土佐塾も、前半ロスタイムに反撃。15番・栁隼十選手が緩急をつけた切り返しで一気に敵陣へ侵入し、5mラインアウトの好機を得た。

しかし、FWの平均体重が1人あたり10kg以上上回る倉敷に、ラインアウトモールを押し返される。

12-0。倉敷のリードで前半を折り返した。

後半に入っても、倉敷はFWを軸としたフェーズアタックで試合を支配。着実にトライを重ね、31-0でノーサイド。

倉敷が2回戦へと駒を進めた。

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倉敷

「練習でやってきたことを、全力で出し切れました。ディフェンスでは絶対に負けないという意識で毎日取り組んできたので、今日はしっかり圧力をかけられたと思います」

そう振り返ったのは、ナンバーエイトのコンウェイ・リード主将だ。

低い姿勢を意識したタックル。相手の低さに負けないよう積み重ねてきた鍛錬が、試合でも随所に表れた。

自身は初戦で2トライ。

「バックスがエリアを取ってくれて、フォワードも前にボールを運んでくれたおかげです」と、仲間への感謝を口にする。

「最後は、絶対に取り切る」。その意識で楕円球を受け取り、力強く押し込んだ。

2回戦では、今季の全国選抜大会準優勝校・京都成章が待ち受ける。

年越しをかけた勝負の一戦は、12月30日(火)12時に第3グラウンドでキックオフを迎える。

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土佐塾

「がんばれ、がんばれ、がんばれ土佐塾!」

スタンドから、力強い声援が飛ぶ。その背後には、『競力・協力・共力』と3つの『キョウリョク』を掲げた横断幕が揺れていた。

チーム内でレギュラーを競う力。力を合わせる力。そして、ともに戦う力。

30年以上にわたり、大切に受け継がれてきた部訓だ。

その言葉の由来について、西村保久監督はこう語る。

「サッカー部が『競走・競争・共走』という3つの『キョウソウ』を掲げていたんです。でも、ラグビー部は“力を合わせる”ほうがいいなと思って。みんなで競い、みんなで協力すれば、共に戦う力になる」

そうして、ラグビー部の指針として3つの『キョウリョク』が制定された。

同校を率いて36年。西村監督へ指導方針について問うと、笑って答える。

「結構ガチガチに指導します。でも、その分、生徒たちも意見してくる。だからぶつかるんです」

平成から令和へと時代は移り変わった。それでも、指導者と選手が力を合わせ、協力し合う関係性は変わらない。そこに、土佐塾の魅力がある。


今年の部員数は25人。うち2人はマネージャー、さらに1人は県予選で負傷し、この日のメンバー表には3つの空欄が並んだ

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土佐塾は例年バックスが主体のチームだというが、今年はとりわけ、そのバックスに磨きがかかっていた。

ひときわ存在感を放っていたのは、2年生の15番・栁隼十選手。前半終盤に見せたボールキャリーは、独特のリズムでチャンスを演出した。


夏にはU17中国ブロック代表にも選ばれた栁選手。「コンバインドチームでは、コミュニケーションの大切さを学びました。自チームに戻ってからも、弱いところを話し合って、カバーし合うことを意識しています」

また対戦校が最も警戒していたのは、スクラムハーフの2年生・大﨑悠誠選手。

「フォワード以上に体を張って前に出るし、スペースを見つけキックも蹴れる。キックはチームで一番上手いと思います」

栁選手は、同級生をそう評する。

この試合を通して浮かび上がったのは、フォワードとバックス、15人全員が役割を果たすことの重要性だった。

「バックスを生かすためには、フォワードをうまく使わないと展開できない。倉敷さんのプレッシャーに負けてしまったので、来年はフォワードを強化したいです」(栁選手)

フォワードを動かし生かすためには、ハーフ団の役割も、より重要になる。

来季は、栁選手がスタンドオフへの挑戦を視野に入れているという。

「10番をやりたい気持ちがあります。今日感じたのは、フィジカルが他県と比べて足りないということ。1年間しっかり鍛えて、指示力やコミュニケーション力、バックスに必要なスキルを磨いていきたいです」

敗戦の中で掴んだ課題。それは、最終学年への手土産となった。

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