徹した「勝つためのラグビー」で松山聖陵が初戦突破。東海大静岡翔洋は『継越』を示した熱くて温かい60分|第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会

試合概要

第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会 1回戦

【対戦カード】
松山聖陵高等学校 36-0 東海大学付属静岡翔洋高等学校

【日時】
2025年12月28日(金)10:45キックオフ

【場所】
花園第1グラウンド

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松山聖陵

地に足をつけたラグビーで初戦を突破したのは、松山聖陵。

「もっと攻めたい気持ちは、選手たちにあったと思います。でも初戦なので。『かたく、我慢していこう』と伝えて、シンプルなラグビーをさせました」と渡辺悠太監督は言った。

「もっと点差を広げたかったり、もっと“かっこいい”ラグビーをしたかったり、いろいろ思うところはあったと思います」と選手たちの胸中を慮りながらも、しかしその判断の背景にあった自身の原体験を語る。

「東海大仰星高校時代、初戦で東海大翔洋と当たったことがあるんです。相手がものすごく魂のこもったラグビーをしてきて、全然うまくいかなかった。花園は、前評判を“魂”でひっくり返せる場所だと思っています」

だからこそ、初戦は“勝つためのラグビー”に徹した。

もう一つの理由は、スーパーエースの不在。

高校日本代表候補のCTB阿塚心選手。そしてFB田畑匠道バイスキャプテン。

「彼らがいるか、いないかで、3倍も4倍も違う」と指揮官が言い切るほどの存在だ。

もちろん、当人たちは1回戦の出場を強く望んだ。だが渡辺監督は2人と直接話し合い、2回戦まで温存する決断を下した。

「そういう意味では、3年生たちはかなりプレッシャーを感じたと思います。でも、それをしっかり乗り越えてくれた。目標に掲げているベスト8に向けて、まず一つ勝てたことにホッとしています」と胸をなでおろした。

次戦の相手は、「めちゃくちゃ仲が良い」と語る宮崎県代表・高鍋。

同校史上2度目となる花園での年越しを懸け、次はフルメンバーで戦いに挑む。

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東海大静岡翔洋

「今年のチームスローガンは『継越』です。代々伝わってきた先輩たちの想いや良き文化を受け継いで、その気持ちと記録を越えるというスローガンでした。今まで支えてくださった、そして一緒に練習してきた仲間。このグラウンドに立てなかったノンメンバーの想いを背負って、最後の1秒までしっかりと、命を削ってプレーしようと思っていました」

そう話したのは、FB小林陽向選手。

止まらぬ涙を必死に拭いながら、60分間に込めた想いを口にした。

スローガンがそのままプレーに表れた。

モールでパイルアップをとった。ノットリリースザボールも誘った。ハイボールもしっかりと確保して、相手のノックフォワードを誘うタックルもみせた。

良きプレーが出れば、仲間が駆け付けハイタッチの連鎖が起きる。

東海大静岡翔洋らしい、熱く温かい60分を見せた。

今年はディフェンスに主軸を置いた1年間だった。守り、数少ないチャンスを生かそうと準備をした。

まさしくその通りの試合展開。

率いる津高宏行監督は言う。

「ディフェンスで体を張り続けてくれました。はっきり言って、体の大きさだけを見たら明らかに松山聖陵さんの方が大きいです。向こうに分があります。それでもひるまずに、思いっきり自分たちの小さい体を使って、ああやって立ち向かっていった彼らが非常にたくましかった。見ているこちらが嬉しかったです」

歴代の先輩たちが作り上げた良いものを受け継ぎ、越えようと必死に努力してきた姿がプレーに表れた。

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それでも遠かった、1トライ。この経験を、歴史として継承したい。

「ボールの転がり方にミス。ちょっとの差でした。今年の3年生は良い生徒が多かったので、彼らの背中を見てきた下級生がどういうものを引き継いで生かしていくかが大事になると思います。そういう意味で本当に今年の3年生は良く頑張ってくれました。良い道しるべになってくれたと思います」

想い、文化、伝統。

「応援されるチームに、応援したいメンバーに」と、これからも凡事徹底を貫く。

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