部員数16人。山形中央の”名を途絶えさせぬ”意志。光泉カトリックは106得点で2回戦・大阪桐蔭戦へ|第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会

試合概要

第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会 1回戦

【対戦カード】
光泉カトリック高等学校 106-3 山形県立山形中央高等学校

【日時】
2025年12月28日(金)12:00キックオフ

【場所】
花園第3グラウンド

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光泉カトリック

試合後、薬師寺利弥監督の第一声はこうだった。

「点数はあまり気にしていません。まずは、勝てたことが良かったです」

結果は、いわゆる“100点ゲーム”。

16トライを奪い、106得点。数字だけを見れば、上々の初戦突破だった。

一方、3番・中島真海偉選手は言う。

「最初から『イケるぞ』という気持ちで試合に入れました」

勢いに乗り、掴んだ大勝。それでも中島選手は、謙虚に言葉を重ねた。

「これまで支えてくださったチームの方々や、サポーターのおかげで、僕たちはここに立てています。まずは、サポートしてくださった皆さんに感謝したいです」

次戦の相手は、大阪桐蔭。優勝候補に名を連ねる強敵だ。

「大阪桐蔭に勝って、1月1日も勝って、ベスト8に絶対に行きます!」

2回戦は12月30日(火)14時30分、第1グラウンドでキックオフを迎える。

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山形中央

1試合あたり25番まで登録することが可能な高校ラグビーにおいて、この日、山形中央の登録選手数は16人だった。

16人の選手と、1人のマネージャーで、全国大会を戦った。

小巻孝至監督は、埼玉県・熊谷工業高校の出身。

立正大学監督の堀越正己氏の1学年先輩にあたり、熊谷高校の横田典之監督とは同級生。そうした縁もあり、今年は2泊3日で熊谷での花園直前キャンプを実施した。

初日は立正大学の人工芝で練習。2日目には熊谷工業高校、熊谷高校との三巴で実戦を行った。

部員数が15人ぎりぎりのため、普段は15対15のアタック・ディフェンス練習ができない。人脈を頼りに、この花園前にようやく実戦経験を積むことができた。

そんな小巻監督の日課は、校内を回ること。

入学式直後から、部活動の選択期限を過ぎた夏頃まで。そして新人戦が行われる冬の時期にも、再び。

毎朝、各クラスを回り、ラグビー部への勧誘を続けている。

「ラグビーというスポーツを知らない子が多いんです。だから、まずは『こういうスポーツなんだよ』という説明から行っています」

競技の魅力を伝えると同時に、部員不足という切実な事情も正直に話す。

楕円球を手に取ってくれる生徒を、ひたすら待ち続けている。

「だから、わたし、学校中の“超有名人”なんです」

そう言って、小巻監督は笑った。

1年生の5番・芦野琉心選手は、高校からラグビーを始めた。

「部活動体験のとき、チームの雰囲気がとても良かったんです。自分もここに入って、絆を深めていきたいと思いました」

入部理由を、そう語る。

小巻監督は隣で「センス抜群ですよ」と評価した。

競技歴わずか9カ月で立った、全国の舞台。スコアは厳しいものだったが、手応えがなかったわけではない。

「体格差があって、最初は正直ビビった自分もいました。でも、『相手に気持ち良くトライを取らせたくない』という気持ちがあった。そのおかげで、最後までタックルに行けたと思います」

トライを取られても、追いかけ続けた。だが、60分間の背走の中で、体力は確実に削られていく。

「最後まで全力で走り切ることはできませんでした。もっと体力をつけて、技術も向上させたいです」

2年目に向け、誓いをたてた。

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5人の3年生が引退すれば、部員数は15人を下回る山形中央。

昨年の新人戦は助っ人を招集し、何とか単独チームで出場したが、東北新人大会では直前で試合をキャンセルする事態となった。

「いろんなチームに迷惑をかけてしまった」との反省から、今年は「無理をしない」と決断。同じく選手数が15人に満たない山形南と合同チームを組み、新人戦に臨むことにした。

雪国。県外流出。そもそもの中学生のラグビー人口の少なさ。

厳しい現実を前にしながらも、想いで乗り越えようと、歩みを止めない山形県のラグビー関係者たち。

また来年も。それぞれの学校の名で、グラウンドに立てますように。

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